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投稿日:2026年1月12日

製造業の会社に就職する学生たちに事前に知っておいてほしい業界の本音にある現場と事務の温度差

はじめに:製造業に就職する前に知っておきたいリアルな現場

製造業は日本のモノづくりを支える基盤産業です。
大学や専門学校から就職活動をする際、多くの学生が「しっかりした会社」「安定した業界」「日本の高度な技術に携わりたい」と期待を持ってエントリーします。
ですが、実際に入社してみると、思い描いていたイメージとのギャップに少なからず戸惑うことも少なくありません。

特に、現場(工場の生産ラインや物流・保全・品質管理など実際にモノづくりに携わる部門)と、事務(調達購買や営業、企画、総務、人事などホワイトカラー部門)との間には、根深い“温度差”が存在します。
この温度差を知らずに入社すると、思わぬストレスやミスマッチが生じる原因にもなりかねません。

本記事では、私が20年以上製造業で現場から管理職まで経験してきた立場から、新入社員や入社を目指す学生の皆さんに知っておいてほしい、製造業の「本音」に迫ります。
また、この温度差を乗り越えるためのヒントや、今後求められる人材像についても詳しく解説します。

現場と事務、その役割の根本的な違い

現場:モノづくりの最前線、時間と品質に追われる日々

現場はまさにモノづくりの最先端です。
日々、生産計画に従い、決められた数量・納期・品質を守り続けなければなりません。

特に大手メーカーになるほど、取引先・顧客からの品質要求は極めて厳しく、納期遅延や不良が発生すれば多大な損害を会社にもたらします。
現場の管理職や作業者は、ものすごいプレッシャーと向き合いながら、毎日を過ごしています。

また、製造現場は未だに「昭和の文化」が根強く残っています。
例えば、朝礼・終業時のミーティング、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)活動、紙の日報・チェックリスト、管理表など、アナログなルールが継承されています。
昨今はデジタル化や自動化も進んでいますが、まだまだ人海戦術や属人的な勘や経験が重視される現場が多いのも事実です。

事務:現場を影から支える、調整と論理の世界

一方、調達購買や営業、品質保証、企画などの事務系部署は、「現場が円滑に仕事できるようにサポートする」「会社の戦略や利益を最大化する」という役割があります。
ノートパソコンやシステムを駆使し、社内外との調整やデータ入力、資料の作成などが主な業務です。

取引先やグループ会社との交渉、見積もり作成、コスト削減プロジェクトの推進といった仕事の内容は多岐にわたります。
このような部門は、一見すると「現場よりも楽そう」「デスクワーク中心でスマート」と思われがちですが、実際は社内外の板挟みになって精神的ストレスが大きいことも珍しくありません。

現場と事務の“温度差”が起こる原因とは

目標・価値観の違いが生む摩擦

温度差の一番の原因は、「目標」と「評価指標」の違いです。

現場は「品質・納期・安全・現場改善(カイゼン)」を最優先に動きます。
そのため、データや数値よりも、「ちゃんと正しいモノができているか」「お客様に迷惑がかからないか」という“現物・現場・現実(3現主義)”の徹底が評価につながります。

一方、事務系は「コスト」「計画」「利益最大化」など、全体最適の達成が評価指標となります。
ですから、ときに現場の都合よりも「数字」「理屈」が優先され、「なんで現場はこうしないんだ」「非効率な現場は改善すべきだ」という立場をとりがちです。

この価値観の相違から、現場は「また無茶な注文だ」「現状をわかっていない」と感じ、事務側は「現場は融通が効かない」「何度言っても変わらない」など、お互いにフラストレーションが募ります。

コミュニケーションギャップと属人化

もうひとつの大きな要因は、コミュニケーションギャップです。

現場では阿吽の呼吸や、現場独特の略語・用語が飛び交います。
一方、本社や管理系の若手社員は現場経験がなく、書類・データ中心のやりとりに慣れていて、現場の苦労やリアルな悩みに鈍感になりやすい傾向があります。

加えて、現場作業は長年勤めているベテラン社員が中心で、いわゆる“属人化”が進んでいます。
事情を知らない若手や異動者が現場のやり方に合理化・効率化を持ち込みすぎると、摩擦が生じやすくなります。

実際、多くの現場でこうした温度差が人間関係の悪化や離職理由になっています。

現場と事務、それぞれの“本音”

現場の本音:「もっと現場を体験して理解してほしい」

現場で感じる最も大きな不満は、「自分たちの苦労をわかっていない」「現場を知らずに現実離れした提案や指示がくる」というものです。
特に新しいITツールや管理システムの導入、コスト削減目標など、現場の実情に合わない要求が上から下りてくると、さらに温度差は深まります。

また、現場は事務方からの“情報”ではなく“現場に来て現物を見る”ことを求めています。
現場を体験すれば、自分たちがなぜこのやり方を守っているのか、属人的なノウハウや段取りの重要性、ちょっとした工夫や改善の積み重ねで積み上げた歴史が伝わります。

事務の本音:「現場も会社の大きな目標を理解してほしい」

一方で、事務部門には「現場が全体最適を理解せず、自分たちのやり方に固執しがち」という不満があります。
たとえばコスト削減のために材料の見直しや生産方法の変更を進めたいのに、現場からは変化を嫌う反対意見が根強く、プロジェクトが進まないことも珍しくありません。

また、納期が厳しい状況下で現場リソースのやりくりや再調整を依頼しても、スムーズに協力が得づらいと感じることもあります。
事務としては「現場の立場も汲みつつ、会社としての成長や利益も守っていかなければならない」という難しさと孤独感を味わっているのです。

昭和から抜けきれない業界構造と、デジタル化のジレンマ

なぜ“昭和的”文化から脱却できないのか

製造業はもともと、日本の高度経済成長期を土台に成長してきた業界です。
そのため、5Sや現場主義、年功序列や終身雇用など、昭和時代に生まれた組織風土・企業文化が今なお残っています。

デジタル化・自動化の波は確実に押し寄せていますが、実際の現場では「あの人の経験・勘がなければラインが止まる」「いざという時は紙と鉛筆が最速」など、アナログなやり方が根強く生き続けています。

また、サプライチェーン全体が保守的な業界なのも、変革を阻害する要因です。
自社だけ変わっても、相手先(サプライヤーや協力会社、バイヤー)が対応できなければ変革は頓挫します。
こうして業界全体がなかなか“昭和”から抜け出せない状況が続いています。

デジタル化のジレンマとその影響

昨今のDX(デジタルトランスフォーメーション)ブームにより、大企業を中心にITシステム導入やIoT活用が進みつつあります。
しかし、現場への浸透・定着には多くの障壁があります。

たとえば新システム導入による現場の作業負担増や、現場ノウハウのデータ化・標準化に伴うベテラン社員の反発。
また、パソコン操作に不慣れな人も多く、「このままで本当に大丈夫か?」という不安の声も広がっています。

実際は、現場と事務の“ギャップ”や“根強い昭和的文化”が最大のボトルネックであり、「人の意識と現場の習慣」が最後まで改革の障害になってしまうのです。

現場と事務の温度差を埋めるために、今求められる人材像

ラテラルシンキングで“橋渡し役”になる

この温度差を乗り越えるために、今、製造業の現場では「言われたことだけをやる人」ではなく、「現場と事務、両方の考えや立場を理解し、橋渡しできる人材」が必要とされます。

具体的には、ラテラルシンキング(水平思考)を実践し、
・現場で得たリアルな経験をもとに、事務部門や経営層へ現場の“声なき声”を届ける
・事務部門で得た経営視点や長期戦略を現場に反映し、説得力ある説明や伴走支援を行う
といった“通訳”のような立ち位置が求められています。

このような人材は、現場経験→事務・企画職へキャリアチェンジ、あるいは逆に事務系から現場へのローテーションを経る中で育ちやすくなります。
若手のうちから両方の現場を体験しておくことが、これからのキャリアには大きなアドバンテージとなるでしょう。

自分の強みを活かし、対話を恐れないこと

さらに重要なのは、「自分は現場派」「自分は事務派」と自分で枠を狭めないことです。
現場に配属されたら、積極的に事務部門の先輩やバイヤー、取引先と会話してみる。
逆に事務に配属されたら、迷わず現場見学に行き、現場の人と雑談し、空気を肌で感じる。

この小さな一歩の積み重ねが、結果として「現場と事務の温度差」を埋める最大の鍵となります。

まとめ:製造業で自分らしく活躍するために

製造業は、これまでの常識が通用しなくなりつつある大転換期を迎えています。
その中で、“現場”と“事務”の温度差や摩擦は、決して避けて通れません。
むしろ、そのギャップをうまく乗りこなせる人が、今後ますます価値を持つ時代がやってきます。

若い方、これから製造業を目指す方には、
・現場と事務、両方の視点を必ず持つこと
・現場主義と全体最適、どちらも大切にできる柔軟性
・そして変化を恐れず、対話し続ける姿勢
この3つを意識してほしいと強く願います。

製造業の現場は、時に泥臭く、効率化されていない場面も多いですが、志ある皆さんの力で「次の令和時代のモノづくり」を切り拓くことができます。
どうか温度差を恐れず、双方の良さを持ち寄って、新しい製造業像を築き上げていきましょう。

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