投稿日:2025年9月9日

製造業のSDGs推進に向けた経営者のリーダーシップの重要性

はじめに:製造業とSDGsが交わる現場のリアル

製造業は日本の基幹産業であり、長く日本経済を支えてきました。

しかし今、世界では脱炭素や環境配慮、持続可能な開発目標(SDGs)への対応が強く求められています。

SDGsというと「大企業向けの大がかりな活動」「CSR部門の単発イベント」という印象をお持ちの方も少なくありません。

特に昭和時代から営まれている日本のものづくり現場では、「現場のコストや納期が優先」「正直、SDGsには馴染みが薄い」といった声が根強く聞かれます。

しかし、国際市場に通用する企業に成長するためには、「リーダーシップを発揮し、現場にSDGsという目的軸を根付かせる経営者」の存在が不可欠です。

本記事では、製造業で実際に工場運営・調達購買・生産管理・品質保証のあらゆる現場を経験した筆者が、経営者のリーダーシップによってSDGs推進がいかに変わるかを、実践的・現場的観点から深掘りします。

なぜ今、製造業でSDGsが求められるのか?

サプライチェーン全体への要請が激化

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2030年までに達成すべき17の国際的目標です。

トヨタやパナソニックのようなトップメーカーを筆頭に、大手企業がSDGs推進を本格化させる中、サプライチェーン全体に「取引の前提条件」としてSDGs対応が求められるようになりました。

欧州を中心に「グリーン購入」や「ESG投資」が進む中、日本のバイヤーもサプライヤー選定の際、環境負荷低減・人権配慮・企業ガバナンス強化などSDGs視点での取り組みを重視しています。

つまりSDGsは、一部大企業の自主的な試みではなく、取引継続や新規参入の“必須要件”に変わりつつあります。

国内外の労働力不足と工場の持続可能性

もう一つの背景は、製造現場の「人」の確保です。

労働人口減少、高齢化、技能伝承の難しさなどにより、今の現場は“人手がいるのに採れない・続かない”深刻な課題に直面しています。

SDGsの人権・福祉・ダイバーシティ視点で職場環境を改善しなければ、人も技術も維持できません。

将来的な魅力ある産業であり続けるには、SDGsの考え方が不可欠なのです。

従来型スタイルでは立ち行かなくなる現実

従来の製造業は「効率・スピード優先」「コスト至上主義」の論理で動いてきました。

しかしグローバル市場では、環境・社会・企業統治への配慮が取引参加の“標準”になりつつあり、古き良きアナログ的経営感覚だけでは立ち行かなくなっています。

SDGs推進は「仕方なくやるもの」ではなく、「企業の生存戦略」と言えます。

経営者がリーダーシップを発揮すべき理由

現場任せ・担当者任せでは機能しないSDGs

「SDGsへの取組み、うちも始めてみよう」と考える企業は増えています。

しかしその多くが、広報部門など一部の担当者に“丸投げ”状態。

例えば「温室効果ガスを減らしましょう」「人権デューデリジェンスやりましょう」と通達して終わり、というケースが典型です。

製造現場は、毎日納期やコストと闘い、「それより実作業が優先」「追加の仕事は負担」となりがちです。

ここに経営者自らが動かなければ、SDGsは「現場に根付かない・まったく推進力をもたない」まま形骸化します。

旗振り役は「見える化」と「共感の形成」がカギ

経営者は、単に「具体的な数値目標を設定する」「実施状況を管理する」だけでなく、SDGsの活動目的や意義も現場に“腑に落ちる形”で伝えていく必要があります。

バイヤーや海外の顧客がなぜSDGsに敏感になっているのか、どこにリスクやチャンスがあるのかを、現場の目線でかみ砕いたコミュニケーションが鍵です。

意思決定のスピードと現場への裁量移譲

SDGs推進を進める際は、「今までどおり」が通用しない施策やコストが生まれることも多いです。

トップとして「将来性重視の判断」「新たな設備投資への覚悟」、そして「現場独自の創意工夫への裁量委譲」が不可欠です。

そのためには、トップダウンとボトムアップの両輪を巧みに回すリーダーシップが求められます。

現場から考える製造業のSDGs推進:具体例と課題

1. 廃棄物削減・再資源化の現場主導型改革

ある自動車部品工場では、「端材は埋め立て廃棄が“常識”」という風土が根強く残っていました。

しかし経営層主導で「再生材活用・循環型の取り組み」を推進。

調達部門がサプライヤーと再資源化スキームを再構築、現場が新たな端材収集方法やリサイクル工程を考案することで、「売上増+廃棄物削減+取引継続」という三方良しを実現しました。

2. エネルギー効率改善と自動化投資

工場の電力使用量やCO2排出量を“見える化”し、省エネ設備・自動制御システムを導入した例も増えています。

このとき、経営者が「この投資でSDGs対応やコスト効果が見込める」と全社に示し、現場主導でAI制御やIoTモニタリングの創意工夫を奨励することで“やらされ感”を払拭します。

結果的に「現場の経験+最先端技術=省エネ成功」となり、従来の働き方も大きく改善されています。

3. 人的資本とサプライチェーン管理の高度化

サプライヤー選定においても「安さ優先」から「コンプライアンス+人権配慮重視」へ転換する企業が増加中です。

調達部門と現場が一体となり、協力会社とも透明性あるパートナーシップを築くことで、リスク回避だけでなく、新しい取引や信用力強化、現場の技能伝承にも好影響が生まれます。

SDGs推進を現場に定着させるためのラテラル思考的アプローチ

意外な“現場の知恵”を拾い上げる発想転換

SDGs活動は“上から与えられるもの”という発想から、現場自身が“コストダウンや品質向上への一手”として活用できる知恵に着目してみましょう。

例えば、自動車部品の洗浄工程で「排水回収・再利用」を現場主体で考案し、結果的に製品の品質安定にも寄与したという事例もあります。

経営者は、現場からの「困りごと」「現実的な工夫」を正当に評価し、それを全社へ横展開できる仕組みを意識的に作る必要があります。

「見える化」「オープンな評価制度」で行動変容を促す

SDGsの活動内容や達成度をわかりやすく“見える化”し、良い取り組みには明確なインセンティブを与えることで、現場にも納得感とモチベーションが生まれます。

たとえば月次ミーティングで「CO2削減」「リサイクル率」などの‘スコア’を競う、あるいは“推進リーダー表彰”を設ける、といった工夫が考えられます。

「SDGs推進=現場力アップ」という実感づくり

SDGsを形だけのノルマにせず、「顧客やバイヤーの信頼を獲得」「現場の知恵で効率UP」「自分たちの働きやすさが向上」と結びつけていくことで、“経営の柱”に変えることが可能です。

製造業現場の知恵が、グローバル標準に変わるチャンスは、実は身近に転がっています。

昭和から抜け出せない業界動向と経営者が直面する壁

アナログな現場が抱える“変化への抵抗感”

多くの製造業、特に中小企業では、長く続く「やり方」「製造プロセス」があり、デジタル化やSDGs対応へ向けた摩擦・抵抗が根深いのが実情です。

また、「ISO認証や監査対応だけを義務的にこなす」だけで実質現場改善につながっていないケースも散見されます。

「今すぐ成果を出せ」と求める短絡主義の落とし穴

一方で、経営者にとっては「SDGsに投資して本当に将来リターンがあるのか」「しばらく“我慢”の時期が続いたらどうする」という取り越し苦労も大きいといえます。

しかし、今動かなければ「取引停止」や「人材の枯渇」といったリスクがジワジワ顕在化しかねません。

トップ自ら「変革」の生きた実践者に

経営者が率先して“SDGs活動の現場に足を運ぶ・意見を聞く”姿勢を見せることで、社員や現場も次第に「やる意味」「自分ごと」と認識を変えていきます。

「やらされ仕事」から「自ら挑む現場改革」へのマインドチェンジは、リーダーシップの本質です。

まとめ:製造業SDGs推進は「人×現場力×志」が鍵

これからの製造業は、「SDGsの旗振り役」としての経営者のリーダーシップが企業運命の分かれ道を握ると言っても過言ではありません。

トップが明確な意志とビジョンを示し、現場と真正面から向き合うことで、“昔ながらのやり方”から脱却し、持続可能な成長ステージへ踏み出すことができます。

国内外のバイヤーやサプライヤー、そしてこれからバイヤーを目指す皆様にとっても、「SDGs推進の本質」と「製造業の変革現場」にリアルな目を向けることが、自社・自分の差別化に直結します。

たとえ小さな一歩でも、経営者の覚悟が現場を変え、やがて業界全体の進化へつながる――。

製造業の皆様、ぜひ現場発のSDGs推進に積極的に携わり、次世代に残せる「強いものづくり日本」を一緒に創っていきましょう。

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