投稿日:2025年11月28日

OEMトレーナーの製造で知っておきたい“二本針縫製”の重要性

はじめに:OEMトレーナーの製造現場で求められるもの

OEM(Original Equipment Manufacturer)としてのトレーナー製造は、消費者の多様なニーズと、クライアントであるブランド企業の高まる品質要求の両立が求められる現場です。

特にアパレル分野でトレーナーを製造する際、表面的なデザインや素材選びだけでなく、縫製の技術力が製品の価値とブランド評価を大きく左右します。

現場で20年以上働いていると、「なぜあの工場だけ指名され続けるのか」「なぜ同じ設計図なのに仕上がりの印象が異なるのか」といった声を耳にします。

そのカギとなる工程のひとつが“二本針縫製”です。

今回は、製造現場を知り尽くした目線から、OEMトレーナーの製造工程における二本針縫製の重要性について深堀りします。

二本針縫製とは?~基本から現場ならではの工夫まで

二本針縫製の基礎知識

二本針縫製とは名前の通り、2本の針を使って同時に2本の平行なステッチを入れる縫製方法です。

本体部分とリブ(袖口や裾など)が重なる部分に多く採用されているため、「頑丈なトレーナー=二本針」と想像する方も多いでしょう。

この縫製方式は、布の張力をバランス良く分散できるだけでなく、伸縮性のある生地にも対応しやすく、洗濯や着用を繰り返しても型崩れしづらい特長があります。

またデザイン的な観点でも、二本の平行縫いが「きちんと感」や「スポーティな印象」をうまく演出します。

一本針縫製との違いと使い分け

一本針縫製ももちろん多くの場面で使われますが、強度や安定性の面では二本針縫製に軍配が上がります。

特にトレーナーのように厚手で重みのある素材、スウェット生地などの縫合には一本針では心もとない場合も多いです。

OEMメーカーとして差別化を図りたい場合や、ブランド側から「耐久性」と「着用時のフィット感」の両立を求められる場合、確実に二本針縫製の知見が活きてきます。

現実問題、コストやリードタイムの関係で「ここだけ一本針で…」と妥協する工場も少なくありませんが、長い目で見れば、リピート発注や評価向上に直結する工程だと断言できます。

なぜ今“二本針縫製”が重要なのか?業界動向から読み解く

「長寿命」「機能性」の追求が標準化

かつてはファストファッションに象徴されるような「消耗型アパレル」が全盛の時代もありました。

しかし近年はSDGsやサステナブル意識の浸透によって、「長持ちする」「買い替え頻度が低くて済む」ことが重要な付加価値になっています。

OEMメーカーの現場でも、「品質優先」「丈夫さ重視」の流れは顕著です。

二本針縫製は、まさにそうしたニーズと合致します。

リブ部分のほつれ防止や強度補強は、製品全体の“寿命”やブランド信頼に直結しますので、今こそ業界内で二本針縫製技術の重要性が再評価されています。

OEM発注側のバイヤー心理と選定基準

クライアントであるブランドサイド、特に購買担当者(バイヤー)は、安定供給と品質一貫性を最重要視します。

トレーナーという定番商品は、見た目以上に日に何回も着用され、日常の洗濯や摩耗に耐える必要があります。

発注先を選ぶバイヤーの多くは、製品サンプルを見る際に「二本針縫製かどうか」を第一にチェックしています。

経験上、二本針縫製で量産管理ができるかどうかが「信頼される工場」と「もう二度と頼まない工場」を分ける決め手になっています。

サプライヤー側も、「とりあえず指示通りやっておしまい」ではなく、なぜここに二本針が必要なのか、コストや工程を踏まえた上で技術提案ができると、バイヤーからの評価が格段に上がります。

現場目線で見る“二本針縫製”の課題と解決法

人手不足・技能継承というハードル

昭和的な現場では、「熟練工のカンとコツ」に依存してきた経緯が根強く残っています。

二本針縫製もやはり、高度な技能が必要です。

機械の段取り、糸張り、縫いズレ防止、異素材リブとの縫合など、ひとつ間違えば製品不良が多発します。

近年は縫製工場のベテラン従業員が次々と高齢退職し、若手への技術継承が課題となっています。

そこで現場では、以下のような取り組みが有効です。

1. 動画やマニュアルによる手順の標準化
2. デジタルカメラを活用した縫製工程の記録とフィードバック
3. IoT対応の縫製機器による自動補正やアラートシステム導入

現代的なアプローチで、技能やノウハウの属人化リスクを減らし、「誰でもできる、でも高品質」な二本針工程に進化させていく必要があります。

コスト・納期に与える影響とバイヤーとの折衝

二本針縫製は確かに手間がかかるため、一本針縫製よりもコストや納期が掛かりがちです。

ここをどう説明し、バイヤーの納得を得るかはサプライヤーの腕の見せどころです。

「単価を下げてほしい」という無理な要求にも、以下のような実証データや現場写真で説明すると、良識あるバイヤーほど品質重視へ考えをシフトします。

・洗濯耐久テストによるほつれ発生率の差
・実プロダクトによる引っ張り・摩耗テスト結果
・他社工場産との比較写真や動画による説得力アップ

「見栄え」や「ブランドイメージ」に加え、製品として「本当に長持ちしてファンが増える」工程として二本針縫製を提示し、発注側との協力的なコスト配分を模索することが現場の知恵です。

OEM製造の未来と二本針縫製の進化~ラテラルシンキング的考察

デジタル化×伝統技術の融合

AIやIoTの進歩が縫製工場にも押し寄せてきましたが、決して手作業の価値がゼロになるわけではありません。

むしろ、デジタル技術によって二本針縫製の「再現性」や「均一性」、「異常検知」が格段に向上します。

例えば、AI画像解析で縫製ミスやほつれをリアルタイム検知することで、不良率を大幅にカットできます。

また、静電糸センサーで適切な糸張りが保たれているかを自動でコントロールするといったシステムも普及し始めています。

伝統技術のエッセンスをICTで“横展開”することで、工場の生産性はもちろん、技術者不足という業界全体の課題にも対応できる土壌が少しずつ広がっています。

“ブランド価値”としての縫製技術がアピール材料に

これまでトレーナーのOEMは、「安く・早く・数多く」が主流でした。

しかし今後は、二本針縫製のような“見えない差別化”がブランド価値の一部になる時代です。

例えばタグや商品紹介ページで「この部分は二本針縫製です」と明記すれば、消費者にも価値が伝わりやすくなります。

こうした現場力をマーケティング材料として活用すると、生産現場と営業現場が一体化しやすくなり、OEMサプライヤーの立場強化にも繋がります。

日本国内外を問わず、トレーナーという日常着・定番品だからこそ、「縫製」の目に見えない価値を最大限活用していきたいものです。

おわりに:現場が誇れる“二本針縫製”の技術を次世代へ

OEMトレーナー製造における二本針縫製は、「頑丈・安心・長持ち」という三拍子を実現する、現場が誇るコア技術です。

技術者・バイヤー・サプライヤー、三者がそれぞれの立場を理解しつつ、現場力を磨けば、アナログな業界でも新たな付加価値を生み出すことができると確信しています。

現場目線の知恵と新しいテクノロジーを掛け算し、日本の製造業が世界へ“Made in Japanの丈夫さ”を再発信できる環境づくりを、これからも応援します。

中小企業も大手も、OEMであっても、自社の「縫製力」にもっと誇りを持ち、世代を超えた技術継承と時代適応に挑戦していきましょう。

あなたの現場が、「二本針縫製=品質の証」として信頼される存在となることを願っています。

You cannot copy content of this page