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古い設備が複数の“裏ワザ”で延命している現場の限界

目次
はじめに ~なぜ「古い設備」を延命し続けるのか~
長年、製造業の現場を見てきた方なら誰しも、「この機械、いったい何年稼働しているんだ?」と驚くような光景に出くわしたことがあるはずです。
新製品や最新鋭設備の導入がニュースとして取り上げられる一方で、実際の現場では、昭和時代に納入された設備が“裏ワザ”の数々で動き続けています。
この記事では、現場目線で見た「延命」の実際、業界の根深い背景、そしてその限界と未来を、ラテラルシンキングで深掘りします。
現在バイヤーをしている方も、これからバイヤーを目指す方も、サプライヤーとしてバイヤーの懐事情を知りたい方も必見です。
なぜ古い設備が使われ続けるのか?現場のリアル事情
投資は後回し。「まだ動く」「壊れるまで使う」の思想
多くの工場では、新しい設備導入にかかる投資コストや稟議手続きの煩雑さから、「まだ使える」「壊れるまで使おう」といったスタンスが強く根付いています。
「減価償却は終わったけど、まだ部品が入手できるし、職人の手にかかれば動く」
そんな現場の声は、今も全国の多くの製造ラインで聞こえてきます。
絶妙な“裏ワザ”メンテナンスの積み重ね
「このリレーは代用品をチョイ足しでOK」
「制御盤は一部だけPLCに置き換え済」
「古い派遣社員が配線図を頭に叩き込んでいる」
など、“裏ワザ”ともいえるメンテナンステクニックが現場ごとに伝承されています。
予備部品がもう製造中止なのに社内倉庫や、他工場と部品を貸し借りする裏ネットワークも珍しくありません。
ライン停止のリスクと「止められない生産現場」の現実
設備更新のタイミング=長期停止となれば、その間の生産損失、顧客納期遅れ、取引先への説明責任……。
これらを恐れるあまり、「少しでも現状維持で動かせないか?」が第一義となります。
ですが、その裏で「ある日突然止まる」ハイリスクが着実に積み上がっています。
古い設備を延命させる“裏ワザ”の種類とその実態
①社内職人技・現場アイデアの総動員
「テープでセンサーの角度を微調整」「異音防止に注油タイミングを増やす」など、小技の集合体です。
場合によっては正規の手順を逸脱し、「その人がいなければ誰も再現できない」ブラックボックス化が進んでしまいます。
このブラックボックス化こそ、ノウハウ承継断絶の元凶です。
②部品の“流用”と“転用”ワザ
メーカー純正パーツ入手困難なら、類似部品を流用したり、既存設備から取り外したパーツを転用したりする裏技です。
この工夫で一時的延命はできますが、正規対応ではないため事故や品質リスクも抱えます。
「自作基板」や「海外通販で取り寄せたパーツ」も現場の強力な延命ツールですが、不正修理というグレーゾーンに足を踏み入れてしまうこともあります。
③部分的な自動化・IoTによる見える化補強
閉ざされたレガシー装置でも、現場独自にモニタリングセンサをとりつけIoT化することが増えました。
「温度上昇をExcelで記録し、異常傾向を察知」「故障予兆を簡易アラームで検知」などは今や一般的。
しかしこれは本質的な改善というより、表面だけの“対症療法”に留まる場合がほとんどです。
“延命”を続けることのリスクと、その限界
属人化と技術伝承断絶が招く危機
延命が長期化すればするほど、現場の職人“だけ”しか分からない設備が増えます。
若手への引き継ぎがうまくいかず、「一人のベテランが辞めた途端、全ラインが止まる」ケースも現実に発生しています。
ここが最大のリスクポイントです。
品質トラブルと納期遅延リスクの増大
表向きは正常でも、徐々に動作誤差が増し、仕上がり品質がバラつき始めます。
また、ある日突然のダウンタイムが、サプライチェーンに大きな遅れをもたらすこともありえます。
部品の寿命や消耗具合が可視化できていないため、突発停止のリスクは年々高まります。
最先端生産技術への乗り遅れ
古い設備へのしがみつきは、最新の生産方式(スマートファクトリー、DX化)への入口を自ら閉ざします。
競合他社とのコスト競争や新規受注獲得への大きな足かせとなるのは間違いありません。
今後、EV化やカーボンニュートラル達成に伴う生産工程の入れ替えもできず、市場から取り残されるリスクも孕んでいます。
バイヤー・サプライヤー・現場技術者は何を考え、どう動くべきか
バイヤーの立場から考える老朽設備の「本当のコスト」
短期的には“延命”でコストダウンしているように見えますが、実は【突発故障】【停止リスク】【品質バラつき】【部品在庫維持や調達の特殊コスト】など、隠れたコストが増大しています。
バイヤーは調達単価だけでなく、TCO(Total Cost of Ownership=ライフサイクル全体のコスト)で判断する目が必要です。
特に老朽化設備がサプライヤーの納期・品質トラブルの元凶になりうることを理解し、「部品の安定供給」「計画的リプレイスの仕組みづくり」にも資金と意識を割くべき段階に来ています。
サプライヤーの立ち位置で考えるべきポイント
サプライヤーは、取引先の設備老朽化に伴うリスク(急な欠品や不良発生など)を“先読み”し、提案型営業や納期対応力の向上が求められます。
さらに、互いに複数工場協調で部品在庫ネットワークを作ることや、リフレッシュ・更新工事のパッケージ提案など、「単なる部品売り」からの脱却が差別化の鍵となります。
また、バイヤー同様、「属人化による突然死」の危機感を共有しておくことも信頼の土台となるでしょう。
現場技術者は“本質改善”への舵を切るべきタイミング
裏ワザの積み重ねも、現場目線の知恵として讃えるべきですが、「すべてを人頼み」にしていてよい時代は終わりつつあります。
しっかりドキュメント化し、ノウハウ承継を推進しつつ、「どこまで延命するか」「投資判断はどこで行うか」を冷静に経営層へ提案する役割が現場技術者には求められています。
IoT、簡単な改造・省力化設備で「延命+データ化」で次の投資計画につなげていく。
これこそ“未来を見据えた現場力”です。
“延命”は現場の知恵だが、今こそ次の一手が必要
今まで日本の製造業は、現場力=小さな改善の繰り返しで大きな強さを持ってきました。
しかし、グローバル競争や、人口減少・世代交代・脱炭素などの新たな波が押し寄せています。
裏ワザ延命はこれからも大事なヒストリーですが、限界の先に目を向け、「計画的な設備投資」「組織的な知見継承」「連携するサプライチェーンの構築」が必要不可欠です。
バイヤー・サプライヤー・現場技術者が新しい地平線を共同で切り開いていけるか、それが“日本のものづくり”の次の100年を決める要となります。
おわりに ~「古い設備」から学び、未来につなげる~
古い設備に頼る現場、それ自体が悪なのではなく、延命の工夫には日本の現場文化が詰まっています。
その知恵を活かしつつ「失われる技術」「突発死する工場」「進化を妨げる要因」へどう向き合っていくか、一人ひとりの役割と視点が求められます。
現場の声を経営に届け、現場力と戦略が一体となって次の一手を打っていけば、“延命”は単なる苦し紛れではなく、新たな進化の土台へと昇華できるはずです。
これからの製造業は、限界のさらに先へ。
ぜひこの記事の内容が、あなたの気づきとアクションのきっかけになれば幸いです。
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