- お役立ち記事
- 製造業の安全対策を進めるほど現場ルールが増える弊害
製造業の安全対策を進めるほど現場ルールが増える弊害

目次
はじめに:安全対策とルールの増加は表裏一体
製造業において「安全第一」はよく知られた合い言葉です。
社内での事故を未然に防ぎ、生産ラインを円滑に稼働させるためには安全の確保が欠かせません。
そのため、多くの現場ではさまざまな安全対策が施され、それに伴い現場ルールも日々増加しています。
しかし、「安全対策を推進すればするほど、現場ルールが複雑化し、作業効率や現場力が低下するのではないか」と感じる方も多いのではないでしょうか。
現場で実際に働く従業員や、現場マネジメントを担う方々の悩みの種となっているのが、こうした『ルール疲れ』や『ルール過多』です。
今回は、現場での具体的な事例や、長年製造業に携わった私の経験をもとに、安全対策強化がもたらすルール増加の弊害、そしてその打開策を深掘りしていきます。
製造業に携わるすべての方、バイヤーやサプライヤーを目指す方にも役立つ現場視点の記事です。
現場ルールが増える背景とは
1. 事故やヒヤリハット事例ごとの個別対策
製造業の現場では、過去の事故やヒヤリハット(ヒヤリとしたり、ハッとしたりする場面)の発生を受けて、都度現場独自の対策ルールが生まれます。
たとえば、「作業前の指差し呼称の徹底」、「保護具着用の二重チェック」といった、具体的なアクションがルールとして追加されていきます。
その結果、安全対策が進むと、その分ルールがどんどん増え、現場ごとに細かく異なる規則や役割分担が定められる傾向が強まります。
2. 過剰コンプライアンスと責任回避の意識
昨今、労働安全衛生法や各種ISO認証の取得を背景に、企業は「万が一」を極端に恐れがちです。
「もし事故が起きたときに、管理側の責任が問われるのでは」という心理が働き、必要以上に細分化されたルールやチェック項目が現場で追加されていきます。
このような「責任回避型」の安全管理が、いつの間にか『現場ルールのインフレ』を招いているのです。
3. 昭和時代の名残もルール過多の要因に
製造業は、昭和時代からの改善文化(カイゼン活動)を積み上げてきた歴史を持っています。
過去の経験や職人気質が色濃く残る企業ほど、「昔からのルール」をそのまま温存しつつ、新しい対策を上塗りしてきました。
その結果、すでに役割を終えた古いルールと、新しいルールが入り交じり、現場担当者が理解しきれない状態になることもめずらしくありません。
ルール増加がもたらす4つの弊害
1. 作業効率の低下と現場の形骸化
ルールが単純に多くなりすぎると、ひとつひとつの手順やチェック作業が増え、日常の業務にかかる時間が大幅に長くなります。
たとえば、工具の貸出帳へ記入、使用前点検チェック、作業中の中間確認など、細かいルールが積み重なると、現場スタッフは「本来やるべき仕事」に集中できません。
その結果、重大なリスクに集中できず、ルールを守るための「作業」が目的化し、形だけの管理へ陥りやすくなります。
2. 属人化・マニュアル順守の形骸化
ルールが複雑になればなるほど、現場スタッフが「なぜこのルールが必要なのか」を理解できなくなります。
単に「上司から言われたから」「守らないと怒られるから」守るしかなくなり、現場の納得感や自発的な安全意識が薄れてしまうのです。
特に新規スタッフや派遣スタッフにとっては、「意味がよくわからない」「覚えることが多すぎる」と感じる機会も増え、マニュアルが形だけの存在となりやすくなります。
3. 改善活動が停滞しやすい
ルールが既に複雑に入り組んでいる現場では、カイゼン活動そのものが進みにくくなります。
「ルールを変更しよう」「現場に合った新しい進め方を導入しよう」といった提案が出ても、既存のルールとの衝突や、変更に関わる調整の手間が膨大になり、結果的に誰も手をつけなくなる、という状況に陥りがちです。
現場がどれほど「効率化したい」「無駄をやめたい」と考えても、「ルールの壁」が高く立ちはだかっているのが現状です。
4. バイヤー・サプライヤー間のミスコミュニケーション
製造業では、バイヤーやサプライヤーとのやり取りの際にもそれぞれ独自の現場ルールが絡みます。
業者ごとに対応すべきルールが異なることで、「なぜこの書類が必要なのか」「この手順がなぜ必須か?」といった疑問や不信感を招き、コミュニケーションロスやトラブルの元になることも少なくありません。
ルールを減らせない理由──誰のためのルールか?
多くの現場では「このルール、本当に必要なの?」という疑問が浮かびつつも、いざ減らそうとすると抵抗が生まれます。
なぜなら、不十分な安全対策が原因で事故が発生した場合、「誰が責任を取るのか?」という問題が必ず浮上するからです。
管理職や工場長は、「減らしたルールのせいで事故が起きた」と言われれば、自身の評価や立場に直結するため、不要なルールを簡単には撤廃できません。
また、ルールが少なくなる=安全意識が低い、という誤解を社内・社外から持たれることを恐れる声も多いです。
特に大手企業ほど「トラブル回避」の姿勢が強く、この傾向が色濃くなりがちです。
現場に根付くルール文化と、“突破口”の模索
現場主導のルール見直しプロセスの重要性
「ルールが増えすぎて現場が疲弊している」と感じたとき、まず必要なのは現場スタッフ自身がルール再点検の主導権を持つことです。
現場で起きている作業停滞やムダを洗い出し、それぞれのルールについて「どうして必要か」「どうカイゼンできるか」を日々のミーティングで率直に意見交換する機会を創出しましょう。
現場で働く人が自分自身で「要・不要」を見極めることが、ルールの“生きた運用”へとつながります。
現場ルールの「棚卸し」のすすめ
具体的な手法としては、「現場ルールの棚卸し」が効果的です。
たとえば、全てのルールを書き出し、①法令・ISOなどで義務付けられているもの、②事故防止の為に現状不可欠なもの、③形骸化しており無駄・冗長になっているもの、に分類します。
この作業を半年や一年に一度定期的に実施することで、不要なルールの自然淘汰や、必要なルールを現実的な範囲に絞り込むことができます。
IT化・デジタル化も“ルール簡素化”の突破口
多くのアナログ現場で問題となるのは、「帳票」「紙の記録」「手書きチェックリスト」の煩雑さです。
こうした業務はうまくIoTやRPA、デジタルツールに置き換えることで、「人的なチェック負担」や「ルール維持コスト」を劇的に削減できる場合があります。
作業記録の自動化や、アラート通知のIT化といったデジタルアプローチは、現場ルールの根本的“断捨離”の突破口になります。
まとめ:ルールは「現場を守るため」にアップデートを
製造業の現場で安全対策が進めば進むほど、ルールは増殖・複雑化する傾向にあります。
ですが、ルールが現場作業の本質を曇らせ、働く人の“安全意識”自体を低下させるようでは意味がありません。
大切なのは、「何のためのルールか?」を現場ごとに見極め、時代や現場環境の変化に合わせてつねに“アップデート”し続けることです。
現場で実際に手を動かす人、管理職、バイヤー、それぞれが同じ目線で「安全」と「効率」のバランスを考え直すことが、これからの日本の製造業を強くします。
ルールを守ることが目的なのではなく、「現場の安全と成長」を守ることこそ、私たち製造業に携わる全ての人の本当の使命だと強く実感しています。
ノウハウ集ダウンロード
製造業の課題解決に役立つ、充実した資料集を今すぐダウンロード!
実用的なガイドや、製造業に特化した最新のノウハウを豊富にご用意しています。
あなたのビジネスを次のステージへ引き上げるための情報がここにあります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが重要だと分かっていても、
「何から手を付けるべきか分からない」「現場で止まってしまう」
そんな声を多く伺います。
貴社の調達・受発注・原価構造を整理し、
どこに改善余地があるのか、どこから着手すべきかを
一緒に整理するご相談を承っています。
まずは現状のお悩みをお聞かせください。