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投稿日:2026年1月23日

AI化を進めるほど属人化が目立つ生産現場の矛盾

はじめに:AI化の波と製造現場の現実

近年、製造業ではAIやIoTの導入が急速に進展しています。

自動化によるコストダウンや省力化、品質の安定化といったメリットが次々と報告されています。

しかし、その一方で、私が現場を歩いていて実感するのは、「AI化が進むほどに、逆に一部スタッフへの属人化が深刻化している」という現象です。

この矛盾は、古き良き職人技が息づく昭和のアナログ文化と、最新デジタル技術が混在する日本のものづくり現場だからこそうまれるもの。

この記事では、現場歴20年以上の私が実体験に基づき、AI化と属人化のギャップがなぜ生じるのか、そして今後工場運営側やバイヤー、サプライヤーがどう向き合うべきか、具体的な視点から深掘りします。

AI化で求められる新たな人材像

「自動化」=「属人化の解消」は幻想か

AIを導入すれば、すべてが自動化できる、属人化から解放される──そんな期待を多くの経営層や管理職は抱きます。

実際、表面上の単純作業やデータ処理は自動化できます。

しかし、導入するAIシステムそのものの運用設計や、現場での微調整、例外対応は高度な知識や現場感覚を持った人材に依存するケースが多いです。

結局「AIシステムの調教師」や「トラブル時の出動要員」に、ベテラン技術者や一部のIT人材が固定化。

これまで以上に特定個人への「属人化」が強まるのです。

現場の声:AI運用者“だけ”が知っているノウハウ

たとえば、生産管理システムをリプレースしたA工場の話。

AIが材料の手配や工程管理を自律的に最適化する仕組みを入れたものの、現場ごとに材料ロスの発生や不良品の傾向が異なるため、細かな調整が毎日発生。

結局、システム担当者が深夜残業を繰り返し、「この人がいないとAIが回らなくなる」という本末転倒な状況に陥りました。

現場では「AIが何やってるのか分からない」「結局は人に頼るしかない」という声も…。

AI化には、導入後の“属人性”にも注意すべきなのです。

昭和の知恵と最新テクノロジーの“狭間”にあるギャップ

帳票文化・現場判断が根強く残る理由

なぜAI化を進めても現場目線ではアナログな帳票文化や“勘と経験”が残るのでしょうか。

最大の要因は、「データに現れない何か」を現場のオペレーターやリーダーたちが現実に体感しているからです。

帳票へのちょっとしたメモ、作業員同士の引き継ぎの一言、微妙な温度・湿度変動への調整…。

こうした“暗黙知”や感覚値は、いまだにAIが拾いきれないケースが多いのです。

現場を知る多くの工場長やリーダーは「本当に機械だけに任せて大丈夫か?」と直感的に警戒しています。

属人化の“よさ”と“リスク”、どうバランスをとるか

熟練者がその場その瞬間で判断し、現場を守ってきた歴史は製造業の強みでもあります。

しかし、それでは新たな人材や他部門・他拠点との連携が進みません。

属人化のよさ──現場力・即応力・暗黙知の伝承──を継承しつつ、いかにそのノウハウを形式化し、AIやデジタル技術とどう融合するか。

この“ハイブリッド思考”が、これからのものづくり現場の成否を分けるカギとなります。

バイヤーとサプライヤー目線:デジタル化交渉の新常識

透明性と信頼性の確保が最重要課題

バイヤー側から見ても、AIや自動化設備を導入しているメーカーは、一見「安定供給」「低コスト」「高品質」に見えます。

しかし、実際に現場を見学すると、不具合やトラブル時には“あの一人に聞かないと話が進まない”という状況も珍しくありません。

価格や納期の交渉においても、属人化されている領域では突然の変更・遅延・不安定化のリスクがあるため、慎重な見極めが必要です。

AI時代のバイヤーが見るべき「透明性指標」

バイヤーや調達担当者がこれから重視すべきは、次の3つの透明性です。

1.AI運用プロセス・ルールの見える化
2.属人化部分の“縮減”計画(マニュアル整備・教育体系など)
3.トラブル発生時のエスカレーション・復旧体制の透明化

「AI導入してるから安心」ではなく、「予期せぬ事態にも組織的に再現性ある対応ができるか」をフロントから突っ込んで聞く姿勢が大切です。

サプライヤー現場でも求められる「伝承力」と「外部連携力」

社内継承と多様化対応の両立

AI化で浮き彫りになる属人化の問題は「内部ノウハウのブラックボックス化」とも密接です。

現場のシステム担当、ライン長、調達担当──誰かひとりだけが情報・ノウハウを独占していないか、常にチェックと教育が必要です。

また、今求められるのは「見える化=情報の形式知化」と「外部技術や調達ネットワークとの連携力」です。

AIをうまく回すためには、プログラムや設備メーカーとの協力体制、複数拠点や協力会社を巻き込んだ現場力の底上げが不可欠です。

属人化“しない”サプライヤーとして評価されるには

今後バイヤーから高く評価されるサプライヤーとは

・AIやDX化の現状と将来像、課題をオープンに語れる
・現場リーダー・担当者の知識やスキルを“見える化”し、全社の底上げを進めている
・突然の人事異動や担当不在でも、サポート・バックアップ体制に遅れがない

こうした現場運営力こそが、「AI導入済み」よりも重視されていく時代です。

AI化が進むほど「人」が試される時代へ

AI・自動化時代に求められるのは、従来の“手作業スキル”や“現場感覚”だけでも、最先端デジタル知識だけでもありません。

両者の橋渡しができる「ミドルリーダー」、現場と本社、現場と外部サプライヤーを媒介できる「コミュニケーター」、そして“属人化しない”ためのノウハウ継承・見える化・教育を地道にやれる「伝承者」が不可欠です。

特に、DX化・AI化推進で現場力が落ちた、現場が混乱した、というケースは決して珍しくありません。

その矛盾と向き合い、現場を熟知するリーダーが真摯に課題を洗い出し、一歩一歩“人の強み”と“AIの強み”を融合させていく姿勢が、これからの製造業の競争力を支えます。

まとめ:AI化・DX化の本当のカギは「人×技術」の融合にある

昭和のアナログ文化が根強く残る製造業には、AIやDXが“現場の矛盾”を一気に解決できる万能薬にはなりません。

むしろ、属人化の“質”がAIによって変質し、新たなリスクを生み出しているのが現実です。

私たちが進むべき道は、現場で培った知恵とデジタル技術を、“矛盾”を恐れずに地道に融合・調整していくこと。

バイヤーやサプライヤーも、AI導入の有無だけでなく、人・プロセス・運営体制を多角的に見極める力が一層問われています。

現場で苦労してきた皆さんこそ、この時代の変化を“自分たちの答え”で塗り替える主役です。

今こそ、AI化の“本当の意味”を現場から問い直し、未来の競争力をともに築いていきましょう。

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