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調達条件を守るほど営業がやりにくくなる矛盾

目次
はじめに:製造業が抱える調達条件のジレンマ
現代の製造業は、調達部門と営業部門の間で絶えず緊張関係が漂っています。
とりわけ、「調達条件」という形で明文化されたルールが、現場においては必ずしも理想的に機能していないことが少なくありません。
調達購買の世界で20年以上、工場長や現場の管理職としてもさまざまな案件に関わった経験から言うと、調達条件が厳格になればなるほど、営業の現場では動きづらさ、融通の効かなさが目立つものです。
今回は、「調達条件を守るほど営業がやりにくくなる矛盾」をテーマに、現場感覚をふんだんに盛り込みながら紐解いていきます。
調達条件の本来の目的と現場の実情
調達条件とは何か?
調達条件とは、サプライヤーや仕入先と当社との間で交わされる、納期・価格・品質・取引ルールなどの一連の取り決めのことです。
これにより、安定した調達やリスク低減、コンプライアンス遵守が図られる反面、調達購買部門や営業現場にはさまざまな制約が生じます。
そもそも、なぜ厳格な調達条件が求められるのか
組織の規模が拡大し、調達先がグローバル化する中で、属人的な取引から公平・公正な基準で運営する必要性が高まりました。
その結果、調達条件を明文化し、ガイドラインや標準化を徹底する流れが進んだのです。
特に「昭和型」のアナログな取り引きの中では、長年の信頼関係と現場判断に依存する面が多かったため、新しい調達条件が導入されるたびに現場と本社の間に“温度差”が生まれやすくなりました。
現場が直面する課題
現場レベルでの大きな悩みは、調達条件に縛られるあまり、柔軟な対応やサプライヤーとの深い信頼関係の構築が難しくなっていることです。
たとえば納期厳守、価格交渉不可、品質基準の一律化といった条項が細部にわたり設定されている場合、臨機応変な取引や、現場目線のコスト最適化、アイデア提案に繋がる提案力が失われがちです。
営業現場における「調達条件」の弊害――何がやりにくくなるのか
バイヤーの本音:交渉の余地がないフラストレーション
バイヤーとしては、「調達条件を遵守せよ」と言われれば、それが“絶対”の鉄則のように感じてしまいます。
そのため、従来なら現場裁量で調整できた問題――たとえば納期短縮やイレギュラー時のレスキュー対応等――も、「規定違反になるから動けない」というジレンマにつながります。
サプライヤー視点:堅い取引が信頼構築を妨げる
サプライヤーの立場で見れば「少しぐらい歩み寄れないの?」と思う場面でも、バイヤー側がマニュアル通りにしか応じられないことで、不信感が生まれます。
これが長く続くと、サプライヤー側も創意工夫やコスト提案、材料の先出し・融通といった“現場ならではの協力”をためらうようになるのです。
新規案件・取引開拓の減速
調達購買の現場では、既存ルールの中でしか取引ができないため、新規提案や異業種とのコラボレーションが極端に減ることさえあります。
これは、営業冥利につきる「あそこと一緒に新しいものを作ろう」という気概や、社内外のネットワークを生かして課題解決に導くチャンスの喪失にもなります。
どうすれば矛盾を乗り越えられるのか?
調達条件の「意図」と「現場」のギャップを意識する
形式化・標準化は大切ですが、一番重要なのは「現場で何が起きているのか?」を正しく把握することです。
調達条件がなぜ必要なのか、その背景や会社の方針を現場と共有しつつ、現場のリアルな課題・制約もフィードバックする仕組みが必要です。
バイヤーや営業担当が「ただ守る」から「目的を理解して活用する」に意識をシフトすることが、最初の一歩です。
「フレキシブルな運用」への転換
ルールや条件は守るべきですが、例外規定や現場裁量の余地(現場長や部門長の承認でイレギュラー対応ができる等)を設けることで、現場と本部が“一体”となり動くことができます。
たとえば、緊急時にはサプライヤーとバイヤーが直接調整できるフローを取り入れたり、条件変更のプロセスを簡素化したり、期間限定でパイロット的な運用の試みが可能です。
調達条件を進化させる「現場発」の提案力
現場目線で調達条件の見直しを提案する文化が根付けば、会社全体の競争力強化につながります。
「現場ヒアリングの場を作る」「調達部門と他部門との合同ワークショップを開催する」など、実際に体験談・課題感・アイデアを集約する場があると、調達条件のブラッシュアップに役立ちます。
昭和からの脱却:アナログ文化が教えてくれること
アナログ時代の“現場力”の良さ
今でこそ、デジタル化・標準化が進んでいますが、昭和時代の「現場力」も無視できません。
顔の見える関係、現場の裁量重視、即断即決の日々は、数々の危機を救ってきました。
そのため、全てをマニュアルで押さえつけるのではなく、アナログ的な“気配り”や“共感”、現場管理者の判断スキルを活かせる体制が必要です。
そのままでは通用しないが、組み合わせの妙が活きる
IT化・自動化によって効率は上がりますが、それだけでは現場の納得感や取引先の信頼は得られません。
現代の調達ルールにアナログ時代の“現場力”を掛け合わせることが、真の競争優位を生みます。
現場感覚、ベテランの眼、そしてITのスピードを併せ持つバイヤーや営業担当が新しい製造業のあり方を切り拓いていくのです。
これからのバイヤー・サプライヤー像を考える
本質的な「価値創造」へ
バイヤーもサプライヤーも、単に条件を守るだけでなく、一緒に最適解を探す“価値創造パートナー”としての立場が求められています。
たとえばVE(Value Engineering)やコストダウンプロジェクト、協調的なサステナビリティ施策など、“攻め”の取り組みこそが、将来の成長エンジンになるのです。
サプライヤーはバイヤーの“舞台裏”を知ることで有利になる
サプライヤーも、バイヤーがどんな調達条件の枠に縛られており、その背景にどんな課題やKPIがあるのかを理解できれば、より効果的なアプローチや提案が可能になります。
現場の本音や制約条件を調べ、バイヤー視点で逆算して動くサプライヤーは、今後も強い信頼を勝ち取れるでしょう。
まとめ:調達条件を“武器”に変える思考法
調達条件の厳守は、一見現場力を削り、関係を硬直化させるように見えます。
しかし、その「矛盾」を前向きにとらえ、現場の知恵と柔軟さを調達条件の進化に生かすことで、営業や購買も“自分たち発”の提案型バイヤー・営業マンへと脱皮できます。
調達条件の裏にある「なぜ?」を問い直し、失われたアナログパワーの良さを組み合わせ、現場発の新たな業界ベストプラクティスを作り上げる。
これが、これからの製造業バイヤー・サプライヤーの新しい生き方であり、営業がもっと「楽しく」「やりがいをもって」活躍できる道なのではないでしょうか。
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