投稿日:2025年12月1日

組み付け工程の問題が設計不良として返ってくる切ない誤解

はじめに:設計と現場の「すれ違い」問題

製造業の現場ではしばしば、「組み付け工程で生じた問題が、設計不良として上流に返される」といった切ない誤解が起こります。

担当者としては仕様や図面通りに作業したはずが、「設計が悪い」と指摘されることもあれば、設計サイドからは「なぜ現場が守れないのか」と悩まれることも少なくありません。

こうしたギャップは、製造業界全体に深く根付いたアナログ的な構造や、昭和的な「現場まかせ」の文化にも起因するものです。

本記事では、20年以上の工場経験を持つ筆者が、組み付け工程でよくある「誤解の構造」を解き明かしつつ、設計と現場がお互いを理解し、本質的な問題解決へと向かうための視点や具体策をお伝えしていきます。

組み付け工程の特徴と現場のリアル

組み付け工程とは何か

組み付け工程とは、様々な部品やサブユニットを最終的な製品として組み立てるプロセスのことを指します。

具体的には、自動車や家電、産業用機械など、あらゆる製品において不可欠な工程です。

この工程では、部品同士のフィッティングやトルク管理、センシング、確認手順など、膨大なノウハウと繊細な作業が要求されます。

現場が感じる「違和感」とプレッシャー

組み付け作業の現場では、図面通りに部品が入らない、ボルトが合わない、指定トルクで締めると割れたり変形したりする、といったトラブルが日常的に発生します。

現場担当者は、こうした違和感を「うまく現場で吸収できるか」「一時的な対応で済むのか」など、経験と勘で判断することが多いのが現実です。

しかし、これを繰り返すことで、知らず知らずのうちに現場特有のアレンジや“裏技”が常態化。こうした現象が「現場に頼る文化」「アナログ的な解決」として根付いていくのです。

当然ながら一定のノウハウの伝承にはなりますが、一方で本質的な問題のフィードバックが設計に正しく伝わらず、やがて大きな品質不良やライン停止にまで発展するリスクを孕んでいます。

なぜ設計不良になるのか?その本当の構造

問題の“誤帰属”が生まれる理由

本来、組み付け工程で発生したフィッティングの問題が、なぜ設計不良へと「帰属」されてしまうのでしょうか。

第一の理由は、「現場の声が直接設計に届きにくい」という伝達経路の問題です。

現場で感じられた微細な違和感や問題は、作業リーダー・管理職・技術課・設計課…と複数レイヤーを経て設計者に伝わります。

この過程で、現場が問題をローカルで都度解決してしまい、本質的な寸法公差や工程順、治具の指定方法など“設計現場間のグレーゾーン”が未解決のまま残されることが多くなります。

二番目の理由は、「設計側と現場側の情報非対称性」です。

設計者は、図面や3Dモデル上では明確になっている寸法通りに作れば組み合わさる、と考えがちですが、現場では材料ロット差、累積公差、治具摩耗、周囲温度など“現場合成”の要素が実に多いのです。

図面には記載のない「現場事情」は、そのままでは理解されません。

三番目の理由は、「責任の所在」を曖昧にしがちな業界文化です。

現場で吸収できそうな軽微な問題は「まあなんとかやっておいて」と指示され、設計者も「内示範囲内だろう」と楽観視する。

結果、被害が顕在化した時点では「設計不良」の一言で済まされてしまうのです。

設計不良の真の要因分析

実際の設計不良には、大きく分けて3つ要因があります。

1つ目は、設計そのもののミスです。

図面、指示、採寸、タレントの不在、設計基準の曖昧さ――人為的なエラーです。

2つ目は、現場側での手順や治具、条件の認識違いによる“作り方の問題”です。

3つ目は、そのいずれとも言えない「グレーゾーン問題」。

たとえば、許容差が厳しいものについて現場で「無理矢理合わせる」工程が増えれば、いずれ品質不良が表に出ますが、これを単純に設計のせいにしていいのか、現場の運用ルールの曖昧さなのか、議論になります。

現場経験者として言えることは、設計と現場、どちらか一方だけを責めて本質的な解決はありえません。

アナログ業界の悪しき伝統と時代の変化

「現場まかせ」が根付く背景

昭和から続く製造業では、「現場の知恵」と呼ばれるアナログな文化が称賛されてきました。

不良品を出さないために、現場担当者が工夫して工程を回すことに価値を置いてきたのです。

部分最適の工夫や職人技は、確かに短期的なQCD(品質・コスト・納期)の向上には効果的です。

しかし、時代が進みサプライヤーの多国籍化や自動化が進展する中で、「現場ごとの独自解釈」が大きな混乱を生み、バイヤーや発注側からの信用も問題視されるようになっています。

グローバルサプライチェーン時代の新潮流

いまやサプライチェーンは国内外をまたがり、ITと自動化技術の進歩によって、工程・設計・品質のリアルタイムな見える化が求められるようになりました。

従来のように「現場で何とかなっているもの」を美徳とする時代から、すべてのフィードバックが設計や開発、管理の上流にタイムリーかつ正確に伝えられる仕組みにシフトしています。

国際的な品質基準(ISO・IATFなど)もこの流れを後押ししています。

現場と設計のギャップを放置すれば、サプライヤーとしての地位低下や最悪、“打ち切り”リスクさえある現状です。

これからの「組み付け工程改革」と業界の未来

フィードバックループの再設計がカギ

組み付け工程の問題を設計不良の一言で片付けるのではなく、「問題発見と原因分析→現場フィードバック→設計見直し→再実装→現場再評価」のフィードバックループを高速で、かつロスなく回していく必要があります。

これは生産管理や調達購買、品質管理といった各部門横断の課題です。

そのためには、工程内の不具合や異常、違和感の「見える化」(例:エスカレーションシステム、速報掲示板、電子カルテ化)、現場と設計を結ぶリアルタイムコミュニケーションツール、プロセスFMEA(潜在的故障モード解析)の活用が有効です。

現場主導の「問題定義力」向上

現場で感じた違和感やトラブルを、単なる「対処ノウハウ」に仕立てるのではなく、設計や購買、品質部門に「本当の問題」として発信できる力が求められます。

例えば、「部品Bの挿入時にX番治具で0.2mmのズレが発生しやすい」といった具体的な事実、それがなぜ起きたかの仮説、ロット差や材料起因の有無などをロジカルに記録し、共有する習慣が不可欠です。

教育や現場KY(危険予知)活動、QCサークルなどで、「なぜ?」を繰り返し問い続ける文化を醸成しましょう。

設計部門・調達/バイヤーへの提案力強化

部品を供給するサプライヤーの立ち位置にある場合、納入先バイヤーがどのような観点で問題評価をしているかを知っておくことは死活的に重要です。

納期・コスト・品質(いわゆる三現主義)だけでなく、設計段階から現場事情を踏まえた「つくりやすさ提案」「冗長性提案」「変更可能性の幅」などを提示できるサプライヤーは評価されやすくなります。

納入側も「全部現場で吸収できる」と甘く見ず、積極的に図面レビューや初期検討に参加し、バイヤー側目線で困りごとを先回りして解消する姿勢が信頼につながります。

まとめ:昭和的誤解からの脱却が未来を創る

組み付け工程で起きた問題が設計不良として返される背景には、現場・設計双方の思い込みや、伝統的な業界文化、正しい情報伝達経路の構築不足があります。

これから製造業に関わる方、よりよい購買やバイヤー活動を目指す方、納入側(サプライヤー)としてバイヤーの本音を知りたい方は、こうした課題を自分ごととして捉え、現場・設計・調達・品質の枠を超えた「課題共有と議論の場」づくりを推進してみてください。

時代は着実に進化しています。

アナログ的な裏技や現場まかせから、データ駆動型・本質力で協働する新しい製造業への脱皮が、今こそ求められています。

自分たちの現場で、今日から何ができるか――。

この記事がその第一歩となることを心から願っています。

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