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投稿日:2025年12月19日

地方企業で役割分担が進まない本当の理由

はじめに:地方企業の役割分担問題を考える

地方企業において、役割分担がなかなか進まない——この悩みは多くの現場で共通している課題です。
大手企業や都心部のグローバル企業と比べ、地方の現場では1人の担当者が複数の役割を同時に抱え、業務の線引きが曖昧になりがちです。
なぜこのような状況が生まれるのか。
本記事では、製造業現場で20年以上を過ごしてきた筆者の経験をもとに、表層的な理由だけでなく、昭和の企業文化や構造的な問題にも言及しながら、本当の原因と解決のための糸口を掘り下げていきます。

見過ごされがちな「役割分担」の本質

役割分担が進むと、各自の責任が明確になり、業務の効率化や生産性の向上が期待できます。
生産管理と品質管理、調達購買、現場オペレーションといった専門業務がきちんと分担されていれば、問題発生時の対応も迅速かつ的確です。
しかし、地方企業では「みんなでやる」「助け合いが重要」といった雰囲気がいまだに強く残っています。
このような体制は一見協力的ですが、実際には責任の所在が曖昧になり、無駄な残業や品質不良の温床にもなります。

地方企業で役割分担が進まない5つの根本原因

1. 昭和型ピラミッド組織の名残

昭和時代の製造業は、トップダウン型の強いピラミッド組織が主流でした。
この構造では現場の裁量が少なく、「上司の言うことは絶対」の文化が根強く残ります。
役割定義よりも従来からの担当者に「全部やってもらう」ことに依存し、業務分担の細分化が進みません。

2. 人手不足・後継者問題

地方では一定規模以上の人材を確保しにくく、現場が慢性的に人手不足に陥っています。
大量採用できないため、人材配置の最適化よりも「とりあえずできる人が全部やる」という運用が定着してしまっています。
しかも後継者不足で、ベテランが複数の業務を抱えたまま定年を迎える悪循環が起きやすいです。

3. 独自文化・阿吽の呼吸の重視

「阿吽の呼吸で察する」「周囲に頼みづらい」など、地方ならではの独自文化が障壁となっています。
役割を明確にすると「人間関係がギクシャクするのでは」という忖度も働き、タスクの線引きに消極的になりがちです。

4. ITリテラシー不足とアナログ運用の根強さ

2020年代に入っても「紙ベース」「エクセル連携」など、アナログ手法が色濃く残っています。
RPAやAIなどの最新ツールを活用した業務分解・自動化にはついていけていません。
このため、自然発生的に個人の裁量に頼るアナログな業務分担が続いています。

5. 役割分担を「悪」とみなす心理

仕事を分担し、責任を明確にすることが「自分の仕事が減る」「仲間を追い詰めることになる」と感じる人が多くいます。
「なんでもできる」ことが重宝される職人気質から脱却しきれていない側面も見逃せません。

役割分担不足が生み出す現場のリスク

現場での役割分担の混在は、単なる効率低下だけでは済みません。
実は企業経営や働く人の幸福、サプライチェーン全体に深刻な悪影響を及ぼしています。
以下そのリスクを列挙します。

・属人化の蔓延によるノウハウ流出

ひとりが複数業務をブラックボックス化させて担当しているため、退職・異動時にノウハウごとごっそり抜けてしまいます。

・トレーサビリティ/品質保証の弱体化

誰がどの業務にどこまで責任を持ったかが曖昧なため、万一不良発生時の追跡、顧客や当局への説明責任が果たせません。

・計画生産/原価管理の精度低下

業務担当が曖昧なため、正確な予実管理、生産計画の立案ができず、ムダやミスが発生しやすくなります。

・“人”に依存した脆弱な組織体質

一部のベテランやキーパーソンの力量・経験に頼りすぎているため、組織が成長しません。

変革のために必要な突破口と現実的アプローチ

地方企業の役割分担問題を根本から改善するには、表面的なIT導入や権限委譲だけでなく、昭和マインドをアップデートしていく必要があります。

1. 自社の「非効率」を見える化する

具体的な業務フロー図やRACIチャート(Responsible, Accountable, Consulted, Informed)を作成し、誰がどの役割を担っているかを整理します。
現場の“見える化”により、非効率の原因や属人化している業務が一目瞭然になります。

2. 小さな分野から「役割明確化実験」を始める

最初は製造現場の一工程、または調達購買の一部といった限定的な範囲で構いません。
定量的なKPIを設けて、役割分担前後の効果測定を行うことで、現場の納得感を得やすくなります。

3. 役割明確化を“能力承認”とセットで行う

分担を「負担の切り分け」と受け取られないよう、「適材適所」「あなたの強みを生かす」姿勢で実施します。
職能・職責をきちんと称え、評価制度に反映させることで安心感を醸成しましょう。

4. IT・自動化の階段を“アシスト係”付きで一歩ずつ

最新の基幹システムやRPA、バーコード活用の自動化などの導入時には、「IT苦手」のベテラン社員を手厚くサポートするアシスト係を設けましょう。
いきなり全自動化を狙うのではなく、紙の伝票をバーコード化するといった小さな成功体験の積み重ねが重要です。

サプライヤー・バイヤー目線で考える“役割分担”の攻防

近年、取引先から「責任の所在を明確に」と要求される場面が増えています。
とくにグローバル展開している自動車・電機メーカー界隈では、調達・品質保証の体制が曖昧な企業は選ばれなくなっています。

サプライヤー側としては「役割分担を明記し、誰がどこまでフォローするか」を仕入先説明資料や、サプライヤー監査時のエビデンスとして整備する必要があります。
逆にバイヤーとしては、サプライヤーの担当者に「どこまで責任を持っていますか?」「バックアップ体制はどうなっていますか?」と質問することで、役割分担ができているかの見極めが可能です。

ラテラルシンキングで突破する、これからの地方企業

最後に、“昭和からの脱却”と“役割分担”を推進するうえで最も重要なのは、「外からの視点」と「現場ファーストの発想」を持ち続けることです。
過去の成功体験や慣例をいったん脇に置き、「本当にこのままで良いか?」と問い直す勇気が求められます。

また役割分担において「完璧なシステム」を目指しすぎないことも大切です。
多少雑でも、まずは“始めてみて、修正しながら進める”ことが、現場を動かすための実践的アプローチです。

役割分担は、現場の効率化や利益向上という直接的な成果だけでなく、働く人同士の信頼感や、新たなチャレンジの土台を築きます。
この変革を「新たな地平線」と位置づけ、地方企業で働くひとり一人が主役となり、「自分らしい現場づくり」に挑んでいくことが、これからの日本の製造業を強くすると確信しています。

まとめ

地方企業で役割分担が進まない原因は、単なる人材・予算不足にとどまりません。
昭和時代から続く組織風土や人間関係、マインドセット、ITリテラシー、責任意識の曖昧さなど、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。
今こそ現場目線で「変革の突破口」を見出し、小さな一歩から役割分担を推進することが不可欠です。

この記事が、現場担当者・管理職・サプライヤー・バイヤーそれぞれの立場で「現実的な気づき」となり、地方企業の“進化”につながるヒントになれば幸いです。

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