投稿日:2025年11月26日

OEMアウターにおける海外生産と国内生産のコスト差の現実

はじめに:グローバル時代におけるOEMアウター生産の最適解とは

製造業、とくにアウターウェアを中心に扱うアパレルのOEM(受託生産)は、ここ数十年で大きく様変わりしました。

かつては国内の縫製工場が主流だったものが、グローバル化の波に乗り、今や中国、ベトナム、バングラデシュといったアジア諸国が主戦場となっています。

この「海外生産」と、依然として根強い「国内生産」のどちらが本当に得策なのか。

コスト以外の視点も交えて、そのリアルな現実に迫ります。

OEMアウターにおける海外生産と国内生産の基本構造

一口に生産地を比較する、と言っても、単に「労務コスト」の違いで片づけられるものではありません。

現場目線で分解すると、以下の要素が大きな判断材料となります。

1. 人件費の差

海外生産の最大の魅力は、各国の低い労働賃金です。

例えば中国やベトナムは、日本と比べて数分の一程度の人件費。

1着あたりの縫製コストは圧倒的な違いとなって現れます。

一方で、近年は中国の人件費上昇や東南アジアのインフレ進行もあり「絶対的な安さ」が揺らぎつつあるのも事実です。

2. 生産ロットとスピード

海外工場は大ロット・大量生産に強みがあります。

一方、日本国内の工場は小ロット・短納期に柔軟対応しやすい。

たとえば、トレンド変化に素早く応じる必要があるシーズン商品や、EC限定商品などは日本生産のメリットが活きる場面も増えています。

3. 品質・安全性・トレーサビリティ

品質標準の厳しさ、法令遵守、消費者クレーム対応などは日本国内が圧倒的に有利。

アウターウェアは防寒・防水などの機能的要件が高いジャンルゆえ、安さだけを追い求めるとクレームコストや返品損失が跳ね返ってくるリスクも高まります。

コスト構造を掘り下げる―表に現れない「見えないコスト」に注目

「海外なら安い」「国内は高い」——この単純な等式では測れない現実があります。

以下、私が現場で痛感してきた“見えないコスト”について解説します。

物流コストとリードタイム

海外生産の場合、海上/航空輸送費、港湾作業料、輸送中の在庫金利、為替リスクなどが発生します。

コロナ禍以降は、世界的なコンテナ不足や遅延、運賃高騰も相まって「想定外のコスト増」に苦しむケースが頻発しています。

特にシーズンものは納期遅延による売り逃しリスクが深刻です。

結果として、値下げ販売・廃棄コストも増えてしまうことがあります。

品質管理コストとクレーム対応

海外工場では、サンプル時点と量産品とで品質差が生まれがちです。

また、検品基準・意思疎通の違いから「想定と異なる仕上がり」が発生しやすい。

これを防ぐために商社や第三者検品会社を挟む分、追加コストが膨らみます。

仮にクレームが発生すると、返品・再納品の物流費、場合によっては現地への緊急出張費まで発生します。

モノづくりの柔軟性と間接コスト

流行や市場の反応に合わせて「仕様変更」「追加発注」「急な数量変更」にすぐ対応できるのは国内工場の強みです。

海外生産では現地との打合せやアナログ的なコミュニケーション、意思決定の遅さが障壁となります。

意思決定や承認のための社内稟議、現地法人・仲介業者との調整なども“見えない間接コスト”として存在します。

最新時流とアナログ業界の課題:昭和型購買の壁をどう越えるか

日本の製造業は「一生のお付き合い」「お互い様精神」といった昭和文化が根付いています。

しかし、海外委託の加速やグローバルサプライチェーンの多様化で、今や現場もバイヤーも新しい視野を求められています。

過度なコストダウン主義の落とし穴

「単価が1円でも安いところを叩く」という発想は、もはやリスクです。

とくにアウターのような季節性が高く、かつブランドイメージが重要な商材では、「短納期・高品質・低コスト」のバランスをどう取るかが重要な経営課題となります。

h3>サステナビリティ対応の肝

生産地の労働環境や環境基準、サプライチェーン上のエシカル配慮も、今や多くの消費者・取引先から厳しく問われます。

日本国内での生産や、透明性の高い現地パートナーとの協働は、その対応策として企業価値向上にもつながります。

数字で見る:実際のコスト差事例(想定ケーススタディ)

ここで、実践でよくあるOEMアウターの事例をシミュレーションしてみます。

ケース1:中国生産VS国内生産(ダウンジャケット1000着)

1着あたりの製造コスト(概算)

– 中国生産:2,200円
– 国内生産:3,400円

一見「1,200円/着」の圧倒的な差が出ます。

しかし、以下の追加コストを加味するとどうでしょうか。

追加コスト項目例

– 輸入通関・国際輸送費:300円
– 検品費用(現地&日本):100円
– 為替変動リスク:±100円
– 納期遅延による値下げ補填:200円
– クレーム対応経費:想定100円

総計すると、中国生産の実質コストは2,900〜3,000円/着に。

国内生産との差額はわずか400〜500円となり、柔軟対応やスピード・品質という“見えない価値”を重視するなら、「コスト優位性は思ったより小さい」ことが分かります。

バイヤーとサプライヤーが知っておくべき視点

私が現場~購買の担当/工場長として数多く経験した実務からの「知恵」をいくつか共有します。

海外生産成功のためのポイント

・取引先との信頼構築と現地管理体制の強化
・現地パートナーの選定においては、価格だけでなく、品質リーダーや日本語対応スタッフの有無も要検討
・細かい仕様・検品基準は必ず「現地語+写真」で明文化
・トラブル発生時の対応ルールを事前にすり合わせておくこと

国内生産で差別化を図るために

・短納期対応、小ロット生産、カスタムオーダーへの柔軟力をアピール
・最新機器(自動裁断・自動縫製など)やDXを導入して“昭和的非効率”から脱却
・販社・ブランド側へのクイックフィードバック体制構築

まとめ:OEMアウター生産地選択の最適解は一つではない

結論として「アウターのOEMは海外生産が正解」と単純化するのではなく、トータルコスト、リスク、対応力、ブランド価値などを包括的に勘案する時代です。

国内と海外、両方の特徴を理解したうえで、商材・ターゲット・時流に合った生産戦略を選ぶこと。

バイヤーは「1円でも安く」ではなく「売れる商品を安定して供給する体制」とそのサプライヤーの総合力を正しく見極めることが、今後の勝ちパターンとなります。

昭和型のお付き合いも否定せず活かしつつ、新時代の“グローバルマインド”を持った柔軟な発想と、現場目線の機動力がOEMアウター競争の分水嶺になるでしょう。

将来を見据えたOEM戦略のために

これからの製造業・OEM現場を担う皆様には、数字だけ、マニュアルだけではない「見えないコスト」「現場の知恵」「バイヤーとサプライヤー双方の本音」をぜひ意識していただきたいと思います。

国内・海外を問わず、価値創造型のパートナーシップを築いていきましょう。

そして、製造業だからこそできる現場力と、日本企業ならではの「モノづくりへの誇り」を形にしていくことが、今後の大きな差別化につながると私は信じています。

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