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海外が軽視しがちな日本の“安全規格”の深刻さ

目次
はじめに:見逃されがちな日本の安全規格の重要性
製造業において「安全規格」という言葉は、現場で働くほとんどの従業員や管理職にとってなじみ深いものです。
しかし、グローバル化が進む中で、日本独自の安全規格やガイドラインが海外サプライヤーやバイヤーから軽視されがちである現状があります。
これは単なる書類や数値のやり取りを超え、日本の企業が“守り続けてきた現場の安全”という文化や哲学との断絶にもつながりかねません。
本記事では、海外サプライヤーや現地バイヤーが見落としがちな日本の安全規格の本質、およびその積み重ねがもたらした現場改善の背景、そしてなぜ今この課題を改めて見つめ直すべきなのかを、20年以上の製造現場での知見をもとに深掘りします。
日本の安全規格の成り立ちと現場主義
昭和から受け継ぐ“未然防止”の精神
日本の安全規格の多くは、ただルールを設けているだけではありません。
その根底には「未然防止」すなわち“事故が発生する前に芽を摘む”現場主義の精神があります。
昭和時代、高度経済成長の裏側では痛ましい現場事故や労災が相次ぎました。
その教訓から、多くの企業が独自の安全基準を作り出し、日々の点検・声掛け・見回り・情報共有といった地道な取り組みを繰り返すことになったのです。
法規制と現場改善活動の二本柱
厚生労働省が管轄する労働安全衛生法、JIS(日本産業規格)、各業界団体が定めるガイドライン。
これらの制度的な枠組みは、日本では欧米諸国に比べても“自主的な安全活動”と強くリンクしています。
単に法律を守るだけでなく、現場の知恵や工夫を取り入れて企業文化として定着している点が特徴です。
例えば、毎日のヒヤリ・ハット(小さなミスや危険の兆候を記録・共有する活動)や、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)活動は、日本の現場改善を象徴するものであり、こうした積み重ねが世界トップクラスの安全性を生み出しているのです。
海外サプライヤーが陥りがちな“安全規格”の誤解
「自国の基準で十分」は大きな落とし穴
近年、コスト競争やグローバル調達の進展により、多くの部品や原材料が海外から調達されるようになりました。
その際、各国で異なる安全規格や工程基準が存在しますが、しばしば「自国の安全基準は十分に高い」「国際規格があれば十分」と誤解されがちです。
実際には、国際規格(ISOなど)は共通の最低基準である一方、日本の現場で求められる“きめ細かな運用”や“現場の即応性”にまでは踏み込めていません。
抜け落ちる“現場の肌感覚”
たとえば、装置の非常停止ボタン一つ取ってみても、日本の製造現場では「作業者の目線で本当に使いやすい位置か」「チリやホコリの蓄積で誤作動しやすくなっていないか」といった、きわめて具体的な観点で設計・設置がなされます。
単に「付いていればいい」という話ではないのです。
現場の作業員が異変を即座に察知し、躊躇なく操作できるかどうか——現実的な事故防止のノウハウが、長年にわたる改善・失敗の積み重ねから生まれています。
海外サプライヤーの現場訪問でこうした観点を伝えても、「そこまでやる必要はない」「特別なカスタマイズはコストオーバーにつながる」といった意見も根強いのが実情です。
この認識の違いこそが、重大事故や納品時トラブルの温床となりうるのです。
なぜ今、日本の安全規格を再評価すべきか
“責任の所在”を明確にするために
サプライチェーンのグローバル化が進んだ今、自社製品に何か問題があった場合、「どこで何が不十分だったのか」をトレーサビリティ(追跡可能性)をもって説明しなければなりません。
とりわけ日本企業は、製品の品質や安全に対する期待値が高く、少しのトラブルでもメディアや消費者から厳しく追及されがちです。
リスク管理の観点からも、設計段階から日本の安全規格を織り込むことは、重大事故やその後の損失を未然に防ぐ“先行投資”となります。
“ヒヤリ・ハット”のデータに裏打ちされた実効力
欧米の現場では実際に事故が起きてから対策を検討する「リアクティブ」なアプローチが一般的なのに対し、日本は“ヒヤリ・ハット”データを徹底して蓄積・分析する「プロアクティブ(予防型)」な文化が根付いています。
この違いが、生産現場における重大なダウンタイムや労災リスクを根本から低減させています。
企業としての持続的な成長を考えるのであれば、日本の安全規格や現場活動を単なるコストアップ要因とみなすのではなく、世界市場で勝ち抜くための競争力の源泉と捉える視点が不可欠です。
バイヤー目線で考える“安全規格”の交渉術
現場コミュニケーションと“見える化”の重要性
バイヤーとしてサプライヤーとやりとりする際、仕様書や図面のやり取りだけでは現場のリアルなリスクを正しく伝えきれません。
そこで現場見学やWeb会議を通じて、実際の作業プロセスや安全対策がどう実装されているかを“見える化”することが肝心です。
ヒューマンエラーの予防措置や設備更新履歴、事故未然防止の改善活動について定量的な情報を交換することで、相互理解と信頼関係が強まります。
事故事例の共有と“なぜなぜ分析”の徹底
過去のトラブルや事故原因をサプライヤーと共有し、5回は「なぜ?」を問う(なぜなぜ分析)手法を一緒に活用するのもお勧めです。
日本型安全文化の核心である根本原因分析を共有することで、海外サプライヤー自身も新たな改善視点を持つようになり、両者にとってWin-Winの関係になりやすくなります。
サプライヤーとして日本バイヤーに選ばれる条件
“日本は特別”という発想から抜け出す
いまだに「日本向け納品だけ特別対応すればいい」といった発想が海外サプライヤーの間には根強く、単発的なカスタマイズにとどまりがちです。
しかし本質的には、日本企業が求める“高い安全と品質”の本質を自社の標準化・仕組み作りに取り入れ、全社的な競争力の底上げを図ることこそ長期的には最大のメリットとなります。
現場・現物・現実(3現主義)を取り入れる
日本企業が重視する3現主義(現場を見て、現物を確認し、現実を把握する)は、単なる指示待ちやペーパーワークだけでは実現できない“目利き力”や“判断力”の基礎です。
同じ不具合や事故が起きない、あるいは被害を最小限に食い止めるためには、こうした現場介入型のアプローチが不可欠です。
まとめ:安全規格こそが日本製造業の競争力
日本のモノづくりは、“細部に宿る神”とも呼ばれる徹底した現場主義、一貫した安全へのこだわりに支えられています。
海外では形骸化しがちな安全基準も、日本では現場改善サイクルに根差し、続けることで初めて“守り”から“攻め”の経営資源へと進化してきました。
今後もグローバル市場で日本企業が高評価を維持するために、海外サプライヤーやバイヤーには「なぜ日本だけ特別なのか?」を具体的な現場目線で理解してもらう啓発が必要です。
安全規格を守ることは単なるコスト負担ではなく、製品品質やブランド信頼を支える最強の武器です。
すべての製造業関係者に、この視点の大切さを今一度、現場発で伝えていきたいと思います。
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