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“やればできる”という精神論が開発計画を壊す最悪パターン

“やればできる”という精神論が開発計画を壊す最悪パターン
はじめに:精神論がもたらす誤った成功体験
製造業における新製品の開発や生産体制の構築には、数多くの失敗と成功が隣り合わせで存在します。
現場では、「やればできる」「気合いで何とか乗り切ろう」という精神論が根強く語り継がれています。
昭和の時代から続くこの”根性論”は、一見すると強い結束力やチームワークを生み出すように思えます。
しかし、実際には開発計画や現場の秩序を破壊し、時には会社全体の成長を大きく妨げるリスクがあります。
本記事では、精神論依存が製造現場や調達購買、生産管理にどのような弊害をもたらすのか、そして本質的な改善や改革のために必要な「仕組み」の重要性を、現場目線で解説します。
精神論がはびこる現場の実態
現場でよく見かける典型的なシーンはこうです。
新しい量産品の立ち上げ計画に遅れが見え始めると、「皆で一丸となって頑張ろう」「土日に出てきて作業しよう」という雰囲気が醸成されます。
管理職が「できることから始めろ」「とにかくやろう」と号令をかけ、現場の社員は疲弊しつつも残業や休日出勤を受け入れます。
表面上は”大きな障害を乗り越えた達成感”が生まれますが、実態は無理やりスケジュールを合わせただけ。
個人の犠牲の上で成立した危険なバランスです。
さらに問題なのは、この経験が「非常時には人海戦術と精神論で何とかなる」という歪んだ成功体験として組織全体に残りやすいことです。
やがて、計画や仕組みよりも”気合い”や”根性”が優先される文化が定着してしまいます。
昭和型アナログ業界の典型的な失敗パターン
1. タイトな納期に対し、現実的な工数・リソース分析を行わず、精神論で押し切ろうとする
2. 問題発生時、なぜ起きたかを考察せずに、その場凌ぎで対応(いわゆる”火消し対応”)
3. 仕組み化や再発防止よりも、失敗を個人の”努力不足”や”工夫不足”として処理する
4. 常に誰かが休日出勤や残業でカバーし続けることで、疲弊と属人化が加速する
こうした悪循環が続くと、現場の人材流出・労災リスクの増大・取引先への品質不良の波及といった深刻な問題に発展します。
なぜ精神論が根づくのか?構造的背景を読み解く
精神論がはびこる理由は複合的です。
まず、現場リーダーや管理職は「短期間で結果を出す」ことを強く求められます。
また、現場作業や調達交渉において緊急対応や突発案件が日常的に発生しやすいアナログ体質の業界では、場当たり的なリーダーシップが評価されやすくなります。
加えて、日本の製造業界には「みんなで苦労を分かち合う」「困難を協働して乗り越える」といった美徳が根づいています。
短期的にはうまく回ったとしても、本質的な改善や自動化への投資を怠ったツケは、確実に後々大きな負担となって現れます。
バイヤー・サプライヤー関係における“やればできる”の落とし穴
バイヤー(購買担当)が安易な納期設定やコストダウン要請をサプライヤー(供給者)に出す場面でも、“やればできる”発言はよく見受けられます。
「何とか短納期で対応してください」
「前例はありませんが、今度こそお願いします」など、無理が前提の依頼が横行します。
サプライヤー側では、顧客であるバイヤーの“無理難題”に応え続けるべきか大きな葛藤が生まれます。
どうしても断れない力関係の場合、受注側も自社の現場に過剰な負担を強いるしかありません。
その結果、リードタイム短縮のために在庫を過剰に積んだり、未熟な工程での生産を強行し、品質不良や納期遅延を引き起こすリスクが高まります。
プロのバイヤーこそ、“やればできる”ではなく“なぜそこまでできるのか、その仕組みやリスクをどこまで可視化・共有できているか”を徹底的に考える必要があります。
“やればできる”からの脱却:仕組み化・計画の本質的価値
これからの製造業、特に人手不足が深刻化する中小企業やグローバル展開を進める企業にとって、精神論ではなく「仕組み化」の重要性はますます増しています。
・工程ごとの標準作業設計と可視化
作業工程や購買プロセスを徹底的に棚卸しし、属人的なノウハウを仕組化・標準化することで、誰もが同じ品質・納期を守れる体制を構築します。
・成果の“再現性”を重視
一過性の努力や残業頼みではなく、「この仕組みを使えばどの現場でも安定的に成果が出せる」仕掛けを優先します。
トヨタ生産方式が世界で評価される理由は正にここにあります。
・システム導入やデジタル活用の徹底
生産管理、調達購買、品質管理など、デジタル化による情報共有・進捗管理の徹底も必須です。
失敗事例や成功事例を蓄積し、データをもとにした改善サイクルを現場レベルで回せる企業が生き残ります。
現場が変える!先進現場での取り組み事例
例えば、ある中堅の自動車部品メーカーでは、月末の生産計画遅延を「現場一丸の残業」で乗り切る風土が根づいていました。
しかし、慢性的な人員不足と若手の早期離職が多発し、ついに生産スケジュールの大幅な崩壊を経験しました。
その後、
・生産計画アサインの自動化
・在庫管理システムの導入
・誰でも作業が理解できる電子作業手順書の整備
・可動率・仕掛品ボトルネックの見える化
などに投資し、月末作業の残業時間を半年で7割削減。
社員から出たのは「精神論や気合い頼みから解放されて、本来の技術開発・改善活動に集中できるようになった」という声でした。
“やればできる”精神論が生きる場面―しかし…
すべての場面で”精神論が悪”というわけではありません。
突発的な災害時や有事、極めて短期間に創造性を発揮すべきプロジェクトでは「団結力」「自発的なやる気」が大きな推進力になることもあります。
しかし、それを「日常のオペレーション」や「継続的な企業価値創造」の手段として安易に使うことは絶対に避けるべきです。
組織リーダーや次世代現場リーダーがすべきことは、“根性”に頼らない業務の仕組みづくりと、その価値を社内外で徹底的に発信し、評価を変えることです。
まとめ:「やればできる」から「仕組みでできる」へ
“やればできる”精神論は短期的には成果を上げるかもしれません。
しかし、その場しのぎの考えが蔓延した現場からは、優秀な人材が去り、会社の成長も止まります。
製造業にたずさわる皆さん、購買・バイヤーを目指す方、サプライヤーの立場でバイヤーの思考を知りたい方――
「なぜそれができるのか、それは仕組みか、属人技・精神論か?」を常に問い直してください。
これからの製造現場・工場運営の成否は「仕組みに落とし込み、再現性を生み出せる」企業だけに与えられるものです。
精神論に頼らず、仕組みに投資し、真の現場力で日本の製造業をアップデートしていきましょう。
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