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強度・耐久性向上に活かす熱応力の基礎と解析手法と活用のポイント

目次
はじめに
強度・耐久性の向上は、ものづくり現場で常に追求されてきた命題です。
その中でも「熱応力」は、意外と現場で軽視されがちな一方で、実は材料や製品の寿命・性能に大きく関わっています。
本記事では、現場の目線から熱応力の基礎とその解析手法、現実の工場や調達・品質管理部門でどのように活用できるのか、実践的なポイントを深掘りします。
昭和から続くアナログ的な現場の“肌感覚”とも結びつけ、新しい発想や時代にあった改善へのヒントも盛り込みます。
熱応力とは何か?製造現場の視点から
熱応力の基本的なメカニズム
熱応力とは、部材や構造物が温度変化によって膨張・収縮する際に内部に発生する応力のことです。
金属や樹脂など材料は、温度が上昇すると膨張し、低下すると収縮しますが、部品内部や構造の一部で温度勾配があると、膨張や収縮が均一に起きず、その“差”が応力として現れます。
特に、溶接部や鋳造などの工程、熱処理を行うとき、新旧材料を組み合わせる部分、厚みや形状が急変するポイントに集中しやすい現象です。
熱応力がもたらす問題・現象
製造業の現場でよくある“割れ”、“歪み”、“寸法不良”、“焼き付け”、“変形”などの不具合の多くは、熱応力が原因に関わっています。
たとえば、
– 鋳造品の引け割れ
– 溶接部のクラック
– 精密部品の精度不良
– 板金の波打ち
– 機械部品の早期破損
これらは十分な熱応力対策を怠ることで起こりやすくなります。
特にモノが大型化・複雑化する現代では、避けて通れない問題です。
また、強度・耐久性の向上をおざなりにすると、下流工程の手直しコスト増や、クレーム発生による取引先からの信頼低下につながります。
熱応力の解析手法~現場とデジタルの融合
昭和的”職人の勘”から定量的な解析へ
かつては、「ここは割れるぞ」「このタイミングで開放しろ」「冷やし方はこうだ」といった、ベテラン職人の経験則に頼る場面が多々ありました。
もちろん今も現場では“生きたノウハウ”として必要不可欠です。
しかし、設計・品質管理・調達部門からみて再現性や安定品質、さらなる効率改善を目指すなら、定量的な解析がカギとなります。
ここで近年活用が進むのが、以下のような手法です。
主な熱応力解析の手法
1. 理論計算(解析式の利用)
– 「熱膨張係数」や「ヤング率」「寸法変化」などの公式を使い、理論値から応力を算出
– 主にシンプルな形状や試作段階、材料選定時に有効
– 実際の工場現場ではザックリ感覚値に加え、まずこの理論値でリスク度合いを事前推定
2. CAE(Computer-Aided Engineering)によるシミュレーション
– 3D CAD・CAEを用いた熱伝導および応力解析
– 多層、複合材料、大型部品、溶接部、接合部など複雑なケースに対応可能
– 構造上の不具合リスクを“見える化”し、設計段階での手戻りを削減
3. 実験的手法(ゲージ・サーモカメラ等活用)
– ひずみゲージで熱応力の実データを取得
– サーモカメラにより熱分布・冷却速度を可視化
– 製造現場で“再現しにくい不具合”の原因特定に抜群の効果
4. AI・IoTによる異常検知
– 生産設備や材料の温度・応力データをリアルタイムでセンシングし、AI解析によって予兆管理
– 設備保全、クラウド連携による全社的な知識共有が進化
解析の導入で見えてくる「新たな課題」
最先端の解析技術ばかりに頼ると、実際の現場特有の“クセ”や“加工時の誤差”を見逃すこともあります。
現場検証とも両輪で進めるのが重要です。また、解析の「ブラックボックス化」による責任の所在不明化、時間やコスト面のバランス課題も根強く残ります。
従って、解析の結果を「現場の肌感覚」「実測データ」と突合し、PDCAを回せる体質づくりが不可欠です。
実務に活かす!熱応力マネジメントのポイント
設計・工程段階でのポイント
– 材料選定では、熱膨張係数差に着目し“適材適所”を徹底
– 接合・溶接時は、形状や冷却条件・治具設計も含めてシミュレーションする
– 大型構造、異素材接合、複雑形状の場合は必ずCAE・実験で事前検証
– 非破壊検査(UT、X線等)やひずみゲージなどデータも積極取得し、ナレッジ化
生産現場での管理・改善の実際
– 加熱or冷却時の速度をコントロールし、温度分布(勾配)をなだらかに
– 現場作業者への熱応力現象やリスクの教育、安全マニュアル徹底
– 設備や金型の老朽化による異常発生率にも注視
例えば、同じ寸法・条件でも、違う工場やラインで不良発生傾向が異なる中国・東南アジア拠点では、現地の温湿度や設備状態まで織り込むことが求められるようになっています。
調達・サプライヤー管理の観点
調達・購買部門が熱応力問題を軽視しがちなケースも散見されます。
サプライヤーにおける熱応力マネジメントレベルが低い場合、「品質不良品の混入」「納期遅延」「クレーム再発」等のリスクが跳ね上がります。
バイヤー視点では、以下3点を重視してください。
1. 材料選定時の熱応力要因分析(材料証明・基礎データの確認)
2. サプライヤー工程監査の徹底(設備温度、作業プロセス、計測データの管理状況)
3. 熱応力対策のナレッジ蓄積・共有(問題発生時のフィードバックループ)
特に、最近は現地調達やグローバルサプライチェーン化が加速するなか、「現地ローカルサプライヤーの管理レベル向上」「多言語での技術指導」も不可避なテーマになっています。
昭和的“現場”から抜け出すには?デジタル活用時代の考え方
デジタル化と現場知の融合によるブレイクスルー
「自動化すればなんでも解決!」というのは表面的な理解に過ぎません。
熱応力対策においても“現場の声”、実際の不良データ、製品設計思想を現場・技術・調達・経営層が一体となり共通言語化することが重要です。
– 失敗事例こそ企業資産と捉え、サプライヤー・顧客とも「透明で正直な情報共有」
– デジタル(CAE、IoT)と現場経験(熟練者の勘)を掛け合わせて“深堀り思考”
– “一時的な帳尻合わせ”ではなく、熱応力を「構造的」かつ「継続的」に低減する努力
このようなアプローチが、昭和的な職人任せから“チームで勝つ工場”への第一歩となります。
まとめ:熱応力を制する者は強度・耐久性を制す
熱応力は、目に見えにくい部分で構造の“弱点”となりがちな存在です。
これを正面から捉え、解析・経験・設備・人的ナレッジを融合し“現場で活きる改善”を続けることこそ、製品の強度・耐久性を高める最大のポイントです。
また、調達・サプライヤー・設計・生産現場の各部門が熱応力問題を“自分事”として扱い、それぞれの役割で危険予知・ノウハウ共有・自律的な改善を重ねていけば、全体最適なものづくりが実現可能です。
昭和のアナログ管理から抜け出し、デジタル時代のラテラルシンキング(横断的・統合的な思考)を製造業で実践していきましょう。
現場の方、バイヤー志望の方、サプライヤー側の方…熱応力の基礎から実践までを自社の成長エンジンにぜひ活かしてください。
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