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OEMアウターの縫製強度を上げるための糸選定と縫製ピッチの最適化

目次
はじめに:OEMアウターの品質向上の重要性
OEMアウター業界は高機能かつ多様な製品が求められる現場であり、それぞれのアパレルブランドの要望に的確に応えるスピーディーな生産体制が求められます。
一方で、「低価格」と「高品質」のバランスが難しく、時代にそぐわないアナログなやり方が根強く残っている現場は数多くあります。
この記事ではOEMに関わるバイヤーや、強みを発揮したいサプライヤー向けに、「縫製強度」を最大化するための糸選定と縫製ピッチ最適化について、現場目線で徹底解説します。
昭和型の慣習から一歩抜け出し、グローバルに評価される高品質なアウターを実現するヒントをお伝えします。
縫製強度の本質と製品価値との結びつき
なぜアウターに縫製強度が求められるのか
アウターはインナーウェアやカットソーと比較して、パーツ点数が多く、素材も厚手で強度が高いものが使われています。
加えて、「屋外」「ビジネス」「作業着」など、使用環境の幅も広いため、耐久性や形状維持は必須要件となっています。
縫製強度の不足は、「ほつれ」「縫い目からの裂け」「パーツの脱落」などの形で現れ、ブランド価値や信頼を大きく損なうリスクがあります。
品質トラブルはOEMビジネスでの大きな減点要素となり、クレームだけでなく、後続受注や信頼構築にも大きな影響を及ぼします。
縫製強度と見た目、コストのせめぎ合い
縫製強度を上げるための糸選定や縫製ピッチの最適化には、材料コストや作業効率との兼ね合いも重要です。
例えば、太い糸や狭いピッチを採用すれば、確かに強度は向上しますが、材料コスト増加や作業速度の低下、縫い代のゴワつき、美観低下などの弊害も生じます。
逆にコストカットを優先しすぎると、品質トラブル頻発や着用後すぐのクレーム発生につながりかねません。
ここが現場の知恵の絞りどころであり、まさにバイヤーとサプライヤーの意識レベルが試される部分です。
縫製強度向上のための糸選定術
目的別に考える糸の基本特性
糸選定の第一歩は「用途」と「素材の特性」を正確に把握することです。
代表的な糸には以下のような特性があります。
– ポリエステル糸:一般的なアウターの大半で使われる。耐久性・耐摩耗性に優れる
– ナイロン糸:緻密な繊維で柔軟性があり、強度も高い。スポーツウェアなどハードユース向け
– 綿糸:ナチュラルさや肌触りには優れるが、耐水性・耐摩耗性は低いためアウターには不向き
さらに番手(太さ)、撚り(捻り回数)、風合い(光沢・触感)、染色堅牢度などを検討して素材や用途に適合するものを選ぶことが肝要です。
現場で起きがちな「糸選定ミス」の例と対策
昭和型現場で頻発するのが「この服はずっとこの番手・この素材でやってきたから…」という属人化した選定です。
例えば、表地が進化しているのに昔ながらの比較的弱い綿糸を使い続けた結果、「新しい高強度生地と縫製糸のバランスが取れず、縫い目から裂ける」など、品質事故の原因となることが多々あります。
市場や素材の進化をキャッチアップし、製品単位で試験的なピッキングや縫製サンプルの引張強度テストを行い納得のいく番手を選定する意識を持つことがOEMビジネスの生命線です。
推奨される糸の選定フロー
1. 最終製品の使用環境・ターゲット特性を整理
2. 素材の厚みと伸縮特性(例:2WAYストレッチなど)を明確化
3. シームスリップ(縫い目割け)テスト値、耐摩擦・耐水性などを基準値化
4. 糸メーカー各社のデータシートを比較検討
5. 複数パターンで縫製サンプル制作後、厳密な強度・美貌・コストを検証
6. 顧客(バイヤー)、生地サプライヤーとも連携し最適施策を決定
これを「型にはめず」「思考停止せず」「現物を見て議論しきる」ことが差別化のポイントです。
縫製ピッチの最適化が生み出す強度と美観
ピッチ(縫い幅)が与える縫製強度への影響
縫製ピッチとは、ミシン1針ごとに刺す間隔(例:2.0mmピッチ、2.5mmピッチなど)を指します。
ピッチが狭いほど、針数が増え、縫い目が密になるため「ほつれ」や「引きつれ」のリスクが減ります。
しかし、やみくもにピッチを詰めれば強度が格段に上がる、というものでもありません。
ピッチが狭すぎると、布地へのダメージが蓄積しやすくなったり、糸切れのリスクが高まったり、素材によってはギャザーやシワの要因になります。
現場のベテランはここの「感覚」で微妙な調整をすることが多いですが、このあたりも可視化して標準工程化できると、再現性の高いOEM運営が可能です。
ピッチ最適化のテクニックと判断基準
最適なピッチ選定には、生地の種類・厚み・伸縮性・糸の番手・最終用途を総合的に勘案する必要があります。
たとえば、防寒アウター(表地:ナイロン×裏地:ポリエステル綿)の場合、標準は2.5〜3.0mmですが、ハードな運動を想定するスポーティーなタイプなら2.2mmにするなど環境に応じて提案します。
現場で多いのは「なんとなく2.5mmです」という慣習的な設定です。
これでは素材が変わった際に部分的な強度ムラが発生し、継続性のある量産体制が作れません。
テストピース(ミシンサンプル)を作り、縫製後のシームスリップテストをデータ化する意識を持つと、「この生地・糸・ピッチならこの基準」と明確な工程設計へと進化できます。
自動化と生産性への影響―現場で忘れがちな視点
近年は自動縫製機の導入と縫製のDX(デジタルトランスフォーメーション)も加速しています。
自動化設備ではピッチ・テンションほかパラメータ設定可だが、設備に合った最適ピッチを設計しないと、結局「人の勘に頼る」状態が続きがちです。
また、ピッチが細かすぎれば縫製ラインの生産性が落ち、直線以外のパーツでは不具合も出やすくなります。
ベストな強度をキープしつつ、ライン効率と安定化を両立するためにも設備目線での最適設計が求められます。
OEMバイヤー・サプライヤー間での対話ポイント
明確な基準と現場テストによるすりあわせ
OEMビジネスでは、「信頼関係」と「基準合意」が成功のカギです。
バイヤーはサプライヤーに「強度基準と糸・ピッチ設定理由の提出」を義務づけ、現場でイメージギャップが生じないよう、サンプルによる強度・外観チェックを徹底しましょう。
サプライヤー側も、「ただ指示を待つ」のではなく、「こんな糸・ピッチだとこのリスクがあります」「現場ではこの作業効率に影響します」と能動的に提案し、win-winの関係構築を目指すことが重要です。
最新の現場テクノロジー・分析手法を活用
ピッチや糸選定も、従来の「経験」とは別に、本格的な試験機器や画像解析、物性測定を用いた「見える化」が各所で進んでいます。
例えば、数値化された引張・摩耗テストデータは価格競争だけでなく、最終製品の差別化やブランドバリュー向上にもつながります。
OEMビジネスだからこそ、「ごまかしが効かない透明な仕組み」を現場と一緒になって作ることが、今後10年、20年の信頼を生むコアコンピタンスとなります。
まとめ:昭和流からの脱却と次世代アウター生産体制へ
OEMアウターの「縫製強度」向上は、糸とピッチという小さな部材・仕様の積み重ねで実現します。
変化を拒否し慣習に流され続ければ、いずれ必ず現場での地滑り的な信頼低下やクレームとなって跳ね返ります。
現場の知見・感覚を大事にしつつも、サプライヤー×バイヤーが協働し、見える化された強度技術と最適化された工程設計を追求することが、日本のアパレルOEM業界に求められています。
昭和になかった「現場データ」、令和でこそ選べる「最新素材・糸・ピッチ」、それらを一歩踏み込んで議論し、価値ある新しいものづくりに挑戦していきましょう。
それが真に強いアウターづくり、そして世界で選ばれるOEM企業に導く道です。
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