投稿日:2025年8月24日

小ロットOEMを成立させる部材共通化と在庫連携のコツ

はじめに―小ロットOEM時代の調達購買に求められる視点

現代の製造業は、消費者ニーズの多様化や市場サイクルの高速化により「多品種少量生産」へと大きく舵を切っています。

新規参入がしやすくなった反面、在庫リスクやサプライチェーンの複雑化といった新たな課題も浮上しています。

なかでも、小ロットOEM(少量生産型受託製造)に取り組む現場では、「部材の共通化」と「在庫の最適連携」が、事業成立のカギを握る重要テーマとなっています。

実際の工場現場で20年以上奮闘してきた実体験をもとに、成功する小ロットOEMのための知恵と手法を具体的に解説します。

小ロットOEMにおける主要な課題とは

ロット最小化が引き起こす調達リスク

小ロットOEMを志すとき、多くの現場で直面するのは「小回りの効く生産体制」と「サプライヤーのロット条件」とのギャップです。

部材単位でみると、下記のような問題が生じやすくなります。

– 最低発注数量(MOQ)を下回る注文ができない
– 品番や部材が多品種多様になることで在庫管理が煩雑化する
– 部品納期が長期化し、受注から製品化までのリードタイムが伸びる
– 小ロットゆえ単価が高止まりし利益を圧迫する

昭和から続く、伝票・電話・FAX文化が根強い業界では、アナログ的な発注・在庫管理体制がデジタル化の足を引っ張っている現状も珍しくありません。

これらの課題を「共通化」と「在庫連携」でどのように解決するかが、競争力を左右します。

部材共通化の第一歩―徹底したBOM(部品表)分析

なぜ共通化が必要なのか

部材共通化とは、「異なる製品でも同じ部品・材料を用いる」設計思想です。

これにより、

– サプライヤーへの一括発注で単価交渉が有利になる
– 在庫点数・在庫額を削減できる
– 品質保証や検査フローが共通化しやすい

といった導入メリットがあります。

BOM分析で洗い出すべき共通ポイント

実際にBOM(部品表)を精査すると、下記のような着眼点が重要になります。

– 材質(樹脂、金属、紙などの素材)でまとめられる部品はないか
– サイズ規格、形状を統一できる部品はないか(例えばネジやパッキン)
– 表面処理や仕上げ仕様で統一可能な部分はないか
– 機能区分(安全部品、装飾部品、構造部品など)ごとに共通化できないか

こうした視点で、製品Aと製品B、あるいは今後計画されている製品群の仕様を横断的に比較し、共通部品・類似部品のグルーピングを行います。

小ロットだからこそ、最初から「共通化」を前提に設計を進めることが肝要です。

現場で効果をあげる部材標準化手法

典型的な共通化のアプローチ

1. 汎用品への置き換え
業種・業界を問わず流通する「標準品」「カタログ品」を採用することで、小ロット調達でも安定供給・コストダウンを狙えます。

例としては、JIS規格のボルト・ナット、JIS配線部品、標準モーター、各種パッキン(Oリング・Uパッキン)などです。

2. モジュール設計の採用
複数のバリエーションを抱えるOEM品の場合、「プラットフォーム」となる基幹部品を先に標準化し、外観や一部の機能だけを個別化する方法が有効です。

たとえば、電機機器業界ではPCB基板や筐体設計を共通モジュールと見立て、搭載部品だけを変えるパターンがあります。

3. サプライヤーとの共同企画
部品点数の整理・共通化のアイディア出しは、サプライヤーの現場担当者と直接コミュニケーションをとることで生まれることが多いです。

現場に足を運び、試作段階からサプライヤーと共創姿勢で臨めば、「類似部品のまとめ買い」「仕様振替」にも柔軟に対応できます。

在庫連携のコツ―アナログ現場でもできる実践手法

手書き・伝票文化を活かした在庫管理の再構築

デジタル化が進まない現場では、「エクセル管理すらない」「台帳・目視管理に頼っている」ことが珍しくありません。

こうした場合も、「物の流れ」を可視化するだけで大きな改善が可能です。

具体策として有効なものを挙げます。

– 物品ごとに現品票・バーコード札(手書き可)を作成し、移動のたびに記録
– 発注伝票に在庫残数欄を設け、受け払いを担当者がサインする形で運用
– サプライヤーと「定期棚卸し」の時間を強制的に設け、在庫実態を双方で確認

また、小ロットOEMの場合、部材を余剰に用意すると倉庫の死蔵在庫になるリスクが大きい為、細かいロット管理(パーシャル入庫、仕掛り品管理など)がポイントとなります。

小さなデジタルからの導入-在庫連携のファーストステップ

アナログ現場で突然ERP・WMSの導入は現実的ではありませんが、下記のような“ミニマムデジタル”手法は多くの現場で成功例が出ています。

– スマートフォンのカメラとLINE等を使い、在庫棚・材料箱の写真を毎日送信
– Googleスプレッドシートを使った簡易な共有在庫台帳
– 在庫少量警告や発注点アラートだけメール自動送信で通知

これらは従来の慣習や現場作業を極力変えず、最小労力で始められる在庫連携のステップです。

バイヤーとサプライヤーの「信頼醸成」が結節点

ただのコスト交渉から一歩先へ

小ロットOEM時代、部材共通化や在庫連携の最適化が進めば進むほど、バイヤーとサプライヤーは従来以上に「パートナーシップ」を求められます。

真に強い調達現場は、下記のような「心の壁を壊す働きかけ」が根付いているものです。

– サプライヤーの困りごと(生産負荷、在庫処分、余剰資材等)を一緒に考える
– 双方の余剰部材や使い残しを情報共有し、流用・相互融通を定例化する
– 製造原価だけでなく、全体最適化での利益シェアやWin-Winの循環を意識する

「いざ納期危機!」というとき、共通化部材や残余在庫の流用を、サプライヤー側で自主的に提案してくれる関係こそ、現代製造業の理想像です。

小ロット時代に求められる“現場ハック”の重要性

現場力の本質は仕組み「+人間関係」

昭和から続くアナログ業界、デジタル新興企業、海外調達先…。

どんな現場・事業規模であっても、「現場は想像以上に一人ひとりの工夫」でもっています。

たとえば、現場作業員が

– 「在庫が怪しい部品を付箋でマーキングして棚に貼る」
– 「次回ロットに同じ部材を回すため、きちんと端数を記録」
– 「部品不足時は直属ではない調達担当に声かけだけはしておく」

こうした地道な“現場ハック”が、結局は小ロットOEMの成立可否を分けることが何度もあります。

技術も仕組みも、最後は「小さな気付きから始まる現場文化の醸成」が重要だと現場経験から断言できます。

まとめ―“すべてはお客様に選ばれるために”

小ロットOEM時代において「部材共通化」と「在庫連携」は、単なるコストダウンや管理効率化にとどまらず、「お客様ごとに最適なものを、最速・最小リスクで届ける」ための最重要武器です。

そのためには、バイヤーやサプライヤー、現場作業者までが一体となり、「小ロット=負担増」ではなく、「小ロット=迅速な対応力」と捉え直す組織変革が不可欠です。

本記事のポイントを現場ごとにカスタマイズし、一歩ずつ実践していくことで、あなたの現場でも新たな成功事例が生まれることを願っています。

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