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危険品クラス別のUN番号と梱包指示PIに準拠するドキュメント作成のコツ

目次
はじめに:危険品ドキュメント作成の重要性
危険品を取り扱う現場では、UN番号(国連番号)や梱包指示書(Packing Instruction:PI)など、国際基準に基づいた正確なドキュメント作成が求められます。
とくに、航空・海上・陸上輸送に用いる際には、国境を越えた厳格な規制に準拠しなければなりません。
このドキュメントの品質一つで、輸送トラブルのリスクや法規制違反による罰則が発生し、ひいては企業ブランドの毀損や取引停止に至る事例も珍しくありません。
現場で直接対応した経験にもとづき、今回は危険品クラス別のUN番号とPI(Packing Instruction)を的確に運用し、現場目線で使えるドキュメント作成のコツを解説します。
「昭和のやり方」と「デジタル化の波」の狭間で業務を行う方々に向け、業界の最新動向を交えて現場実務に落とし込むヒントをお届けします。
危険品クラスとUN番号―まずは仕組みの理解から
危険品クラスの基礎知識
危険品(Hazardous Materials)は、国際連合(UN)が分類した危険物規制に基づくクラスと、その識別子であるUN番号で管理されています。
主なクラスは以下の通りです。
- クラス1:爆発物
- クラス2:ガス
- クラス3:引火性液体
- クラス4:可燃性固体・自己反応性物質など
- クラス5:酸化性物質/有機過酸化物
- クラス6:毒性物質/感染性物質
- クラス7:放射性物質
- クラス8:腐食性物質
- クラス9:その他の危険物
この分類の意味は、単なる「分け方」ではありません。
ドキュメントやラベル、必要な検査・保管方法、交通手段ごとの規制内容まで、全工程の根本ルールになります。
UN番号と梱包指示
UN番号(United Nations Number)は、個々の危険品に指定される4桁の数字です。
たとえば、ガソリンにはUN1203、硫酸にはUN1830が与えられています。
梱包方法や最大量、ラベル標記などはこの番号ごとに梱包指示書(Packing Instruction:PI)で定められています。
これらを参照することで、はじめて適切な書類作成や現場対応が実現します。
海外調達やグローバルサプライチェーンを担う現場担当者は、この仕組みを体で覚えておくことが、取返しのつかないオペレーショントラブルの発生防止につながります。
昭和から脱却できないアナログ現場の課題
形だけのコピペが生む危険
多くの製造現場では、長年の「これまで通り」文化が強く、「前の伝票を流用」してしまうケースをしばしば見かけます。
パターン化された書式の誤用は、手間を省くつもりが危険物リストの更新・法改正対応漏れにつながりやすいです。
現場ベテランが「昔取った杵柄」でドキュメントを作成した結果、UN番号や梱包指示PIが現行法規に適合しておらず、出荷停止になる例もあります。
なぜアップデートしづらいのか
こうした状況の背景には、「ISOやIATA規則は難解でとっつきにくい」「現場担当者が英語に苦手意識を持っている」「そもそも更新する時間や人手が足りない」など、人的リソース・教育投資不足の問題があります。
また、製造業特有の「現場優先」文化では、コンプライアンスや社内情報のデジタル化がどうしても後回しになりがちです。
ここに、紙文化が根強い日本の製造・物流現場のアナログ体質も拍車をかけています。
現場で使えるドキュメント作成の実践的なコツ
1. 最新データベースを活用する
UN番号やPIの情報は、IATA(国際航空運送協会)、IMDG(国際海上危険物規定)、ADR(欧州陸上危険物規定)など年次でアップデートされます。
出荷都度、公式なオンラインデータベースや最新版マニュアルで対象品目の最新UN番号とPIを必ず確認しましょう。
過去の「慣例」でなく、公式ソースで常に参照する仕組みづくりが現場の品質を左右します。
たとえば、自社のEDBや社内WikiでUN番号一覧表を定期更新し、誰でも参照できるようにしましょう。
2. 英語原文を見ながら二重チェック
危険品梱包・輸送の公式ドキュメントは英語で規定されています。
和訳の解釈や翻訳品質に頼り切らず、必要に応じて英語原文も確認するクセをつけましょう。
作業の際には、英語が得意なメンバーと「チェックペア」を組み、和訳と原文を二重チェックすることで、誤読や誤記のリスクが下がります。
3. 品目ごとに「ドキュメントテンプレート」を用意する
実際の現場では、都度一からドキュメントを作るよりも、主要品目の「標準パターン」テンプレートを作成して活用するのが効率的です。
但し、そのテンプレートには必ず「最終確認リスト(例:UN番号、PI、数量、分類、ラベル表示)」をつけて、更新漏れを防止しましょう。
各テンプレートは、法改正ごとにアップデート履歴が残る体制(ファイルサーバー上での管理や、承認プロセス付きのエクセルフォーム等)とするのがベストです。
4. サプライヤー・バイヤー間の事前合意でトラブル防止
サプライヤー(出荷側)とバイヤー(受取側)の認識ズレがドキュメント漏洩・誤記の主因となることもしばしばあります。
出荷条件、必要書類、不足時のフローなどを、発注時の早い段階で事前確認し、双方が「どのPIで、どんなラベルで、どのMSDSを用意すべきか」を必ずすり合わせておきましょう。
日本国内でこそ「言わなくても伝わる」暗黙知が多い現場ですが、国際取引ではこの一手間が命取りになる現実を意識してください。
5. 教育プロセスの「現場巻き込み」
最良のルールや仕組みは、守られなければ無価値です。
月次や半期ごとの社内教育機会、または実際の出荷トラブル事例をケーススタディとして共有するなど、現場スタッフの「自分ごと」意識を高める工夫が大事です。
昭和的な座学研修だけでなく、スマホで見られる動画マニュアルや現場AR、eラーニング活用など、ラテラルシンキングで業務プロセス自体を革新していきましょう。
バイヤー・サプライヤーの立場で考える書類管理のポイント
バイヤー視点:安全・安定調達へ
バイヤー側としては、サプライヤーが法規制を順守した上で正確なドキュメントを提出できるか、その体制の信頼性が購買判断の大きな分岐点となります。
PIやUN番号ミスが「一罰百戒」の国際物流現場では、1件のミスが大きな取引停止やブランドリスクに直結します。
バイヤーは、<1回きりの現物確認>のみならず、サプライヤーのドキュメント管理体制(新版法規への追従性、エビデンスの有無、教育プログラム)まで審査項目に加え、定期的にコミュニケーションを取ることが安心につながります。
サプライヤー視点:競争力と信頼の源泉
一方、サプライヤーとしては、「ドキュメント不備を起こさない高品質オペレーション」の仕組みが差別化の鍵となります。
バイヤーが真に求めているのは「安さ」だけでなく、「正確で法的に安全な書類」と「トラブル発生時の機動的対応力」です。
自社だけでなく、下請先メーカーや物流倉庫にまで正しいUN番号運用とPI手順書を周知徹底させてこそ、本当の意味でのビジネスパートナーになれます。
業界のデジタル化最新動向―アナログ構造からの脱却
ペーパーレス化と電子ドキュメント管理
2020年代に入り、危険品ドキュメントもデジタル化が本格化しています。
IATAやIMDGのガイドラインも「電子申告(e-DG)」対応を拡充中です。
電子署名、クラウド型ドキュメント管理、AIを活用した自動チェックシステム等により、現場の「人為的コピペ」や「見落とし」リスクは劇的に下がっています。
日本の大手メーカーでも、危険品UN番号情報やPI変更履歴を一元管理し、出荷前にAI自動アラートを出すしくみづくりが進みつつあります。
AI・データ分析によるリスク検知
さらに最新の潮流として、AI予測による「危険品ラベル・輸送指示ミスの早期発見」や、BigDataを使った「トラブル多発品目の分析・改善」も実用化段階に来ています。
現場のベテラン勘と最新技術のハイブリッド運用が、「誰でも・どこでも・いつでも」適切な危険品ドキュメントを作れる時代を現実のものとしています。
まとめ:時代に即したドキュメント力が現場の強みになる
危険品のUN番号やPIに準拠した書類作成は、「ただの事務作業」ではありません。
法令順守と安全確保、そして安定したサプライチェーン構築のすべての基盤です。
昭和流の惰性やアナログ主義から脱却し、デジタルツールも取り入れた現場主導の継続的改善こそが、これからの製造業の競争力となります。
現場で培ったノウハウと最先端の情報リテラシーを組み合わせ、バイヤー・サプライヤーともに「信頼でつながるサプライチェーン」を築きあげていきましょう。
この一歩が、業界全体の安全と発展に必ずつながります。
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