投稿日:2025年12月6日

IoT化してもデータが多すぎて活用できない現場のリアル

はじめに:IoT化の本質と現場に起きている真実

IoT(Internet of Things)の導入が製造業の現場で進んでいます。
「生産性向上」「品質改善」「ダウンタイム削減」といった大きな期待値の下、機械や設備をネットワーク化し、リアルタイムデータを集めるのが当たり前になりつつあります。

しかし、「データが多すぎて、結局現場でどう使えばいいのかわからない」という声は、実際に多くの現場で上がっています。
最新技術の導入が“成果”に結びつかない、そんな苦い現実が、昭和からのアナログ文化が色濃く残る工場ほど顕在化しています。

本記事では、IoT化の波に乗ってデータ収集を進めたものの「そこからどう活用すれば現場の力になるのか」に悩んでいる製造業従事者や、調達・購買、サプライヤーの現場目線から、この課題を多角的に深掘りします。
「データの海」に溺れないための本質的な狙いと、リアルなギャップ、その突破のヒントまで詳しく解説します。

IoT導入で現場にもたらされるデータの洪水

IoT導入現場の「期待」と「実情」

経営層や管理部門は、IoT化によって「隠れたムダの可視化」「トラブルの予兆検知」「サプライチェーンの一元管理」といったメリットを夢見ます。
事実、センサーデータを中心に、温度、稼働状況、部品交換サイクル、不良品トラッキングなど、多種多様な情報が簡単に集められるようになりました。

しかし、実際に現場が受け取るのは「膨大な数値のログ」「表示だけで現場を止めてしまうような大量の“アラート”」です。
それらはタブレットやPC上にグラフや数字となって表示されますが、「それを見て、具体的に何をすればいいのか」が曖昧なままになってしまいがちです。

データは「多ければ多いほど良い」のか?

多くの現場で陥りがちなのは、「とりあえず何でも測る」「とりあえず全てログを残す」アプローチです。
本来、現場の改善や意思決定に直結するためには「どのデータが何のために必要なのか」をクリアにしなければ有効活用にはつながりません。
「多すぎて処理できない」「通知をオフにしてしまった」「具体的なアクションにつながらない」――これではIoT化の恩恵は受けられません。

現場で本当に起きている“データ活用の壁”

1. 旧来の現場力との乖離

昭和時代から続く日本の多くの現場では、ベテランの肌感覚や経験知によって不良・トラブルを未然に防止してきました。
IoT化によりそのノウハウが数値化・可視化される一方で、「この異常値、本当に現場の作業者にとって意味があるのか?」という懸念が根強いです。

また、熟練工のカンやコツが数値として端的に表現できるケースばかりではありません。
IoTの“数値責任”が現場の心理的負担となり、「数値は警告を出してるけど、今までは問題なかったんだから大丈夫」という“見て見ぬふり”に繋がることもあります。

2. ITリテラシーとツール浸透の壁

現場作業者・管理職・バイヤー層では、「データ分析スキル」や「BIツールの知見」にバラつきがあります。
Excelや手書き日報で十分と考える人、紙の指示書が絶対という人もまだ多く現役です。
そこに突然、ビッグデータやAI分析、ダッシュボードが持ち込まれても「見方がわからない」「操作が面倒で、結局使われない」など「無関心・拒絶感」が生まれるのは避けられません。

3. “現場が知りたいデータ”と“経営が見たいデータ”のズレ

工場現場が本当に知りたいのは、目の前の設備が「いつどんな不具合を起こしそうか」「何が本当のボトルネックなのか」に直結する、粒度・視点が細かいデータです。
一方、経営層は月次の生産実績や、全社横断のKPI管理、サプライチェーン全体の最適化など、マクロ視点を強く求めます。

この“データニーズのすれ違い”が県庁クラスの企業でもよく見られ、IoTデータがどちらの目的にも使いづらい“宙ぶらりん”な存在になってしまうケースが後を絶ちません。

なぜデータを集めても「使えない現実」が起きるのか?

費用対効果に陥る罠

IoT導入機器・システムは現場ごと、設備ごとに最適な設計やチューニングが必要です。
しかし、「率先して予算確保せよ」という声が強く、現場の本音としては「まずは全ラインにセンサーをつけろ」と無理な全方位導入を強要されます。
その結果、「高い投資をしたのに、現場としては面倒が増えただけ」という負の感情が生まれます。

情報過多による実行力の低下

毎朝、現場責任者・工場長のタブレットには膨大なアラートやグラフが並びます。
「これだけアラートが鳴っても、心底ヤバいのは一体どれだ?」という浸透機に陥りやすく、結局“正常稼働”に見える設備はなにも変わらないままです。
PDCAのアクションまで辿り着かず、せっかく集めたデータも「生かしきれない死にデータ」となりやすいのが現実です。

「属人的ノウハウ」から抜け出せない

データ活用を推進したい経営陣の一方で、実際の現場には「Aさんがいないと分からない設備調整」「Bさんしか聞いたことがない現場のクセ」など、“ブラックボックス”が多くあります。
IoT導入は、これを可視化・標準化する手段のはずですが、データの解釈や現場判断は“ベテラン依存”が強く残ります。
そのため、せっかくのIoTシステムも「現場指示者の一存で運用されるデータ取得ツール」に留まってしまいがちです。

これからの「現場データ活用」とは 〜昭和アナログ脱却のアプローチ〜

本当に必要な「目的」を現場が組み立てる

IoT化導入はゴールではなく“手段”と再認識すべきです。
「どの現場で、どんな異常・改善ポイントを見つけ出し、どうやって不良率や生産性を上げるのか」その目的を現場自ら言語化し、最小限のデータ取得・分析設計から始めることが本質的な解決になります。

やみくもにセンサーを増やしてアラートを乱立させるのではなく、「本当に現場として知りたい数値」「日々の変化に直結するデータ」だけを“現場目線”で決めることが欠かせません。

データ活用リーダー=「現場の翻訳者」を置く

IoT導入と並行して重要なのは、“データ活用リーダー”となる役割が現場に居ることです。
技術部やIT推進部ではなく「現場経験を持ち、コミュニケーションを介してデータと人をつなげる人財」が不可欠です。
例えば「毎日の生産レポート」「設備保全記録」といった既存業務の延長で、小さな“データ活用成果”を積み上げていくアプローチです。

この「地に足の着いた巻き込み役」の存在が、現場と経営の“翻訳機能”となり、大きなムダや混乱を回避します。

徐々に現場のノウハウを「データ言語化」する戦略

アナログ現場から一気にAIやビッグデータに飛びつくのは逆効果です。
まずは「どこが悪い?」「現場の変化点は何か?」を現場の訓練・気づきレベルで紙やExcelからデジタルフォーマットへ。
次に、それを現場の「いつもの指示書」「チェックシート」と並行して管理し、少しずつ“主”をデータに移行させていくプロセスが肝要です。

属人化・経験知が“死んだ情報”にならないよう、定性的な現場語録もデータ的に残す運用を提案します。

サプライヤー・バイヤー視点でIoT活用に乗り遅れないために

サプライヤーこそ「現場データ力」の時代

IoTによる情報共有が発展するほど、調達側のバイヤーは「工場のリアルな生産能力・トラブル傾向・改善サイクル」をデータで可視化できるサプライヤーを強く求めます。
言い換えれば、現場IoTのデータ活用スキルは、価格交渉や供給リスク管理でも“武器”になります。

例えば「月次リードタイム短縮につながる設備稼働実績」「ロス率のトレーサビリティデータ」を提出できると、「データで語れるサプライヤー」としてバイヤーからの信頼が跳ね上がります。

バイヤーは「現場のキーパラメータ」を理解せよ

バイヤー志望者や若手バイヤーがIoT現場と付き合う際は、「どのデータが現場成果の根拠になるか」を自分の目で確かめる視点が必要です。
納入先の工場視察や、定期MTGの際に「その稼働データは誰が、どこで使っているのか?」「現場の成果につながったエピソードは?」を一歩踏み込んでヒアリングすると、サプライヤーの真の実力や改善意欲が見えてきます。

まとめ:IoT時代の「現場力」は“使いこなす知恵”にあり

IoT化は、現場に新たな視点と改善機会をもたらします。
しかし、膨大なデータも“現場で使いこなせる仕組み”がなければ、単なる情報の海に溺れる危険が高まります。

現場が主役となって目的と指標を絞り込み、データと現場ノウハウを橋渡しできる“人”と“仕組み”を作る——それが昭和から続くアナログ文化の“進化系”と言えるでしょう。

サプライヤーもバイヤーも、IoT時代の本質は「技術そのもの」より「現場の困りごとを“見える化し、使いこなす”力」。
この力を磨き、情報を強みに変換できる企業や個人こそ、今後の製造業をリードしていくはずです。

御社現場ならではの“見える化したい本音”、ぜひ一歩深堀してみてはいかがでしょうか。

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