社員が陰で語る「上司に言われた迷言トップ10」

はじめに：工場現場で生まれる“迷言”のインパクト

現場の最前線で日々奮闘する製造業の社員たち。彼らが何気なく口にする言葉の裏には、深い業界慣習や時代遅れの価値観が根強く根付いています。

特に、昭和から続くアナログ文化の中で、上司から部下へ伝えられる“迷言”の数々は、時に現場の士気を大きく左右します。

本記事では、私自身が20年以上の現場経験で実際に耳にした、または同僚や部下から“陰で語られる”「上司に言われた迷言トップ10」を紹介します。

なぜこうした迷言が生まれるのか、その背景にある業界の現実や風土も分析。

さらには、現場力を鍛え、昭和から令和へと変革を迫られる製造業界で今後何が本当に必要か、ラテラルシンキングで深堀りします。

現場に立つ皆さん、また、バイヤーを志す方・サプライヤーとしてバイヤー心理を知りたい方へ、リアルな現場視点からのヒントとなれば幸いです。

第1位：「昔はもっと厳しかった」

なぜ繰り返されるのか

長年製造現場で働く中で、必ずといっていいほど聞こえてくる上司の“定番”迷言です。
この言葉には、「自分たちが若かった頃は理不尽なほど厳しい中を生き抜いてきたのに、今どきの若手は甘い・根性が足りない」という、昭和的精神論が色濃く映し出されています。

現場への影響

問題は、その「厳しさ」とやらが不合理の押し付けであったことも多く、現代の多様な価値観や働き方改革の流れとは逆行している点です。
この一言で新人や若手社員の意欲を削いでしまうことも珍しくありません。

第2位：「手間を惜しむな！現場は汗で覚えるものだ」

効率化の敵、“ムダの美徳”

手作業こそが現場力だ、といった価値観も今なお根強く存在します。
この迷言には、デジタル化や自動化・標準化をネガティブに捉える傾向すら見え隠れしています。

なぜ危険なのか

確かに基礎・応用を体得するには“身を以て覚える”ことも必要です。
しかし、度を越して「俺たちの時代は、道具なんか使わず手でやった」といった思想がまかり通ると、標準化や生産性向上に大きなブレーキとなります。

第3位：「そんなこと言った覚えはない」

自己保身が招く現場混乱

指示ミスや方針のブレをごまかす典型的なフレーズです。
現場では上司の指示に従って動いた結果、責任問題が生じたときにこの一言で切り捨てられることがあります。

教訓化と対策

現場力とは「信頼と検証」の積み重ねです。
互いが言った言わないの水掛け論にならぬよう、指示系統や議事メモの見える化・記録化、フェアな検証プロセスが重要です。

第4位：「自分で考えろ！」

自律性と放任を履き違える罠

自律と自立を重視する姿勢自体は現場の健全な成長に不可欠ですが、丸投げ・曖昧な上司の逃げ口上として使われてしまう場合も…。

求められる“伴走力”

本当に現場を強くする“考える現場”をつくるには、筋道や考え方のヒント、失敗を許容する土壌、振り返りの場を上司が用意して共に悩む“伴走力”が必要です。

第5位：「このぐらい分かるだろ？」

暗黙知（アンコンシャス・ノウレッジ）の罠

長年の経験で蓄積された現場のルールやノウハウ。
当たり前のように使われる言葉ですが、経験や暗黙の了解がない人間には通じません。

新人や配属変え、協力会社さんからの視点でみれば、わからないルールは山ほどあります。
「教わっていないことはできない」が基本であり、OJTやマニュアル化・見える化の継続が不可欠です。

第6位：「うちの取引先は昔からの付き合いだから」

変革拒否のキーワード？

特に調達購買の現場では、「古くからのサプライヤーだから」という理由で改善やコストダウン提案、生産性向上を諦めてはいませんか？

新たなサプライヤーとの比較や、既存取引先の競争意識喚起、パートナー協業推進のためにも、「昔から」ではなく「これから」の視点が求められます。

第7位：「いいからやっておけ」

現場で最も危険な“思考停止ワード”

安全衛生上のルールや工程改善、設備トラブル時などに、苦し紛れに出る言葉がこれです。
危険予知の無視や、現場判断力の形骸化につながるため、最新のリスクアセスメント、手順遵守の文化が不可欠です。

第8位：「そんなことして利益が出るわけがない」

チャレンジ精神封殺の迷言

新設備導入・DX、工程自動化、新規事業など、「やったことがない＝利益が見えにくい」からと消極的になる伝統的思考も根強いです。
現場発のチャレンジやイノベーションの芽を摘まぬよう、「小さく始めて大きく育てる」文化が求められます。

第9位：「現場を分かっていないからそんなことを言う」

内向き論理と“よそ者阻害”

他部署やバイヤー、新卒・若手、女性・外国人メンバーなど、“外から来た人間”を弾く言い回しです。
多様性や外部目線を排除することで変革機会を失い、結果的に有能な人材流出を招くリスクも孕みます。

第10位：「前例がないからできない」

挑戦潰しの最強ワード

“守りの現場力”が強い日本の製造業。
しかし、世界市場やサプライチェーン変革が加速する今、前例なき施策や改善の壁となる迷言です。

ここを突破する「なぜできないか」ではなく「どうやればできるか？」に思考を転換するラテラルシンキングが重要です。

迷言が生まれる業界背景とラテラルシンキングのすすめ

保守的な“業界文化”の根底にあるもの

なぜここまで現場迷言が根強いのか。
最大の要因は、製造業界に長らく染みついた「安全志向」「失敗への極度の恐怖」「保身文化」「縦割り組織」があります。
業績責任が大きい中で、現場の最適解を都度“個人のノウハウ”で切り抜けてきた歴史。
それが組織的な発想転換や業務標準化、チャレンジの阻害になっているケースが多いのです。