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物流費を含めた着地コストで見積比較するトータル評価

目次
はじめに:製造業を揺るがす「物流費」の重要性
製造業の現場では、見積もりの比較や取引先の選定において「価格」のみを重視しがちです。
しかし、グローバル化とサプライチェーンの複雑化が進む現代では、製品コストを正しく把握するために「物流費」や「間接費」を含めた“着地コスト”によるトータル評価が、ますます重要になっています。
なぜ今、着地コストでの見積もり比較が求められるのか。
そして、その考え方を現場にどう根付かせ、より高いバリューを会社や顧客に還元できるのか。
この記事では、製造業を長く経験してきた目線から、実践的なノウハウとともに解説していきます。
着地コストとは何か?~価格の「見せかけ」にご注意~
着地コストとは、仕入れ先から自社の指定場所、たとえば工場や倉庫に品物が届くまでに実際にかかる全てのコストを合算したものです。
単純に「品物の本体価格」だけを比較して契約するのは、いわば氷山の一角にすぎません。
見積書の「本体価格」が安くても、以下のようなコストが積み上がって結果的に損をするケースも多々見られます。
- 輸送費・配送費(国内外の運賃、荷役料、通関料など)
- 梱包費・再荷造り費用
- 検品費・納入検査費用
- リードタイム増による管理コスト・在庫費用
- 品質問題発生時の対応コストやリスクプレミアム
バイヤー(調達担当者)には、価格という“表面”に惑わされず、本当のコスト構造を丁寧に読み解くスキルと責任が求められます。
着地コストによる見積比較の実践ステップ
1. コスト構造の可視化
まずは自社の調達業務の流れとコスト発生のポイントを棚卸しします。
昭和時代からの長い慣習で「発注部門に引き渡して終わり」という風土が根強い会社では、現場の物流担当としっかり連携しないと、抜け漏れが発生しやすいです。
たとえば、下記のようなテンプレートを活用し、コスト項目を分解・棚卸ししましょう。
・仕入単価 ・輸送費 ・輸入関税 ・通関手数料 ・梱包料 ・保管料 ・欠品時の特別輸送費 ・保険費用 (その他付帯コスト)
自社ルールや現場意見も盛り込み、“全体を見渡す目”を持つことが重要です。
2. サプライヤーごとの見積取得と明細分析
単純に見積書を価額のみで横並び比較しているようでは、昭和から抜け出せません。
それぞれのサプライヤーから「物流項目も明記した」明細で見積書をもらう癖をつけましょう。
特に海外調達や間接資材の取引は注意が必要です。
・EXW、FOB、CIF…など貿易条件の違いに応じてコストを足し戻す
・最終納入地点まで誰がどの費用を負担するのかを明確にする
物流費用はサプライヤー側が一括請求する場合もありますが、「弊社指定運送業者利用」「混載便かチャーターか」など見積もり条件が異なると、比較が非常に困難になります。
事前に「見積取得ルール」を社内で統一するのがおすすめです。
3. 間接コストやリスクも含めた評価軸を設ける
工場現場からよくある声として「納期は守ってくれているが、度重なる小口納入で受け入れ業務が煩雑だ」「入荷ごとに数量確認や書類処理の手間が想定以上にかかる」という評価があります。
物流費だけでなく、隠れた“間接コスト”や、品質面・リードタイム遅延などに起因するリスクコストも、トータル輸入コストに加味しましょう。
着地コストの「可視化」が生む、現場と経営のギャップ解消
調達部門がサプライヤーを価格だけで選定してしまい、「安かろう悪かろう」取引になりがちな企業では、見えにくいコストが後から経営を圧迫します。
現場では、
「事務負担が増えて本来の業務に手が回らない」
「トラブル対応で休日出勤が増えた」
「結果的に追加コストがかさみ、安さの意味がなくなっている」
という苦しい状況になりがちです。
一方、着地コストまでしっかり見せられれば、現場の不満共有や、経営層への的確な説明がしやすくなります。
「このサプライヤーは見積単価こそ安いが、物流や間接コストを含めると総額は高くついている」など、根拠ある判断材料を経営へ提供できるのです。
導入事例:昭和型工場からの脱却例
ある大手製造現場では、中国調達を推進する中でバイヤーが着地コストを十分に意識せず、運賃や通関費用、現地でのトラブル対応コストが膨らんでしまい、結果として国内仕入よりも高額になりました。
その反省から、物流費やイレギュラー対応費、場合によっては返品コストまで可視化し、「トータルコスト」指標で毎月レビューするよう運用を改めました。
現場管理者・バイヤー・物流担当が一丸となって“見える化”を進めた結果、全体コストが年間15%削減し、工程間の無駄な負荷も減っています。
これからの時代に求められる「ラテラルシンキング」
物流やサプライチェーンの環境は日々変化しています。
昭和のやり方を続けていては、AIやグローバル企業との競争に勝てません。
着地コスト管理をより高度化させるには、調達や現場部門に「横断的思考(ラテラルシンキング)」が必須です。
部分最適に陥らず、全体最適を常に意識することが求められます。
サプライヤー側であれば、「バイヤーが物流費を重視し始めた=物流品質で差別化できる」、
運送担当であれば、「ムリなく効率化でき、全体納期も短縮できる」…。
現実に即した多角的な視点が、会社の競争力を生むのです。
サプライヤー側の戦略:着地コストでバイヤーに選ばれる
サプライヤーは、バイヤーの着地コスト重視の流れにどう対応すればよいでしょうか。
「価格で勝てないから…」とあきらめていると、取引の継続が危ぶまれます。
実は、物流や納入面の“工夫”が他社との差別化ポイントとなります。
物流費最適化の提案例
- 混載便や複数納入場所を活用しトータル物流費を圧縮する
- バイヤー側負担となっていた荷役作業や二次梱包作業を請け負う
- 納期短縮や緊急対応の物流体制をアピールし、総コスト低減を提案
「サプライヤーは“品物を売るだけ”」という昭和的発想を脱し、“物流コストマネジメント”まで視野を広げることで、選ばれる企業になれるのです。
まとめ:着地コスト評価で見える新たな地平線
これからの製造業は、見積価格の安さだけでなく、「トータルで合理的か」「会社全体にとって最善か」を問われる時代です。
物流費まで含めた着地コストの考えを徹底することで、現場のムリ・ムダ・ムラを可視化し、社内全体の生産性と競争力向上につながります。
買う側(バイヤー)の方は、部分最適に流されず一歩引いた目で、全コストを冷静に見る習慣を。
売る側(サプライヤー)は、物流や納入サービスで“全体価値”を高め、顧客のパートナーを目指す視点を大切にしてください。
着地コスト評価を起点に、“価格競争の昭和型調達”から、“本質的な価値競争の製造業”へ――。
ぜひ明日から自部門で、現場仲間と共にチャレンジしてみてください。
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