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OEMから自社ブランドを立ち上げる際の商標登録と知財戦略のポイント

目次
はじめに
製造業界は長きにわたり、OEM(Original Equipment Manufacturer)を軸としたビジネスモデルが主流となってきました。
しかし、近年の価格競争激化や取引先依存のリスクを背景に、自社ブランドを立ち上げて新たな付加価値を生み出そうという動きが広がっています。
この流れは、従来の「作るだけの現場」から、「価値を創る現場」へと大きくシフトしていることの表れともいえるでしょう。
自社ブランドを持つということは、設計・開発・製造までの垂直統合だけでなく、市場開拓やブランド戦略、知的財産管理まで担うということです。
特に商標登録や知財戦略は、ブランドを守り、長期的な競争力を確保する上で避けて通れない課題です。
本記事では、OEMから自社ブランドを立ち上げる際の商標登録と知財戦略のポイントについて、現場目線の実践的な視点を織り交ぜながら詳しく解説します。
OEMと自社ブランドの違いとは
OEMビジネスの特徴
OEMとは、他社ブランドの製品を自社で設計・製造し、相手先ブランドで販売されるという形態です。
OEMは生産管理や品質管理といった現場力を発揮でき、安定的な受注が確保しやすい反面、自社ブランド力が蓄積されないというデメリットがあります。
また、価格競争に巻き込まれやすく、供給先が切り替われば一気に売上がゼロになるリスクも抱えます。
自社ブランドの展開とは
一方、自社ブランドの立ち上げは、企画・開発から販売まで自社主導でコントロールできるため、強固なブランド構築が可能です。
その反面、市場調査やマーケティング、流通開拓など、これまでOEMでは不要だった業務領域が増加します。
とりわけブランドを守るための「知的財産=知財」についての意識と対策が不可欠になります。
なぜ商標登録と知財戦略が重要なのか
ブランド保護の重要性
自社ブランドを立ち上げて販路を拡大した途端、模倣品や類似ブランドによる「ただ乗り被害」が急増するのが日本の製造業界の現実です。
特にアナログな業界の場合、知財への投資は「お金が掛かる」「面倒くさい」と軽視されがちです。
しかしブランド力が知財で守られていなければ、一朝一夕に競合に真似され、市場から淘汰されるリスクは非常に高くなります。
知財戦略がもたらす効果
商標登録に代表される知財戦略は
・自社製品の独自性のアピール
・模倣品や不正競争品への法的対抗
・企業価値の向上(M&Aや出資を受けやすい)
・海外展開時の武器
という複数の側面から、製造業ビジネスの根幹を支えます。
現場目線で見ると、自社ブランドのロゴや製品名、設計思想なども知財として保護し、その権利化の有無がビジネスの強さを決定づける時代に突入しています。
商標登録の基本と失敗しやすいポイント
商標登録の基礎知識
商標登録とは、商品やサービスに使う「名前」「ロゴ」「マーク」などを特許庁に申請し、他人に真似されない独占的な使用権を得ることです。
製造現場で多い失敗として、「とりあえず名前が決まったので社内で使いだす」「後から商標申請をする」というケースが多く見受けられます。
しかし、商標権は『先願主義』。
つまり早い者勝ちで、後から申請すると他社に先取りされているリスクがあります。
具体的な失敗事例
例えば、A社が「新製品X」のネーミングを考えて半年かけて開発し、展示会で大々的に発表。
ところが、競合がその商品名を商標として先に申請し、A社の商標申請は拒絶。
使い続けると侵害リスクとなり、やむを得ずブランド名変更を強いられたという例も枚挙に暇がありません。
現場起点で商標戦略を進める際は
・製品開発初期段階から商標チェックを行う
・利用予定のネーミングは早期に特許庁データベースで検索
・ダミーでも良いので先に申請だけ済ませておく
という基本動作がカギとなります。
業界特有の注意点
昭和的な「とりあえず使ってみて不都合があったら対処」の発想は、現代のビジネス環境では非常に危険です。
特に地方の伝統的な中小製造業や、旧態依然の業界では商標に対する感度が低く損害を被る例が後を絶ちません。
OEMから自社ブランドへ。知財戦略の3大ポイント
1. 事前調査とリスク把握
ブランド立ち上げプロジェクトをスタートする際は、まず商標登録の可否や類似ブランドの有無を徹底的に洗い出しましょう。
特許庁のデータベース検索はもちろん、インターネットでの類似使用例、ライバル企業の展開状況にも目を配ることが重要です。
現場感覚では「面倒でも転ばぬ先の杖」として、情報を集めすぎるほど集めておくと、後々のトラブル回避に役立ちます。
2. 権利取得のタイミングが命
特許や商標申請は「コストも手間もかかるし、後回しでよい」と考える現場責任者が多いですが、これは致命的な判断ミスです。
ブランドの立ち上げ時、あるいは開発プロジェクトの初動段階から「商標を取得する」ことをプロジェクトKPIとして組み込むのが、有効な運営ノウハウです。
3. OEM顧客と競合しない“アサインメント”の整備
OEMで実績がある企業が自社ブランドを展開し始めた場合、既存OEM顧客とのバッティング(競合)が起こることも珍しくありません。
製造委託契約の際、「知的財産の帰属」や「将来の権利行使」に関する条項は、必ず念入りにチェックしましょう。
とりわけ取引先とのパワーバランスがOEMビジネスの中心だった時代から、主導権を自社に移すうえでも「誰に何の知財が帰属するのか」の明確化が製造業の現場を守るカギとなります。
商標だけでは足りない。トータルな知財戦略の必要性
意匠権・特許権とのセット活用
商標登録はブランドネームやロゴの保護ですが、製品の形状や特徴的なデザインは「意匠権」、技術・機能部分は「特許権」でカバーできます。
実際のものづくり現場では、商標・意匠・特許・実用新案などを横断的に組み合わせて総合的に商品価値と独自性を守る“知財パッケージ戦略”が有効です。
現場(工場)での教育と啓蒙活動
昭和から令和に変わっても、現場のオペレーション優先、目先の納期やコスト優先の意識が根強く残っています。
自社ブランドをきちんと守るには、経営層~製造現場の各層に対して知財リテラシー教育を繰り返すことも大切です。
「商標や知財は総務部の仕事」ではなく、工程設計や生産工程の管理者も知財を“当たり前の業務”と捉えることが、真に強いブランド企業への第一歩となります。
海外展開における商標・知財戦略の最新動向
アジア諸国での知財トラブルの急増
自社ブランドでアジア各国に進出した企業が、一度も使っていないうちに現地企業に商標を先取りされてしまい、思わぬ損失・係争に発展する事例が年々増えています。
中国や韓国、東南アジアでは、「悪意ある先取り登録」「抜け穴をついた模倣」も日常茶飯事です。
日本国内での登録だけでは不十分で、将来展開が想定される国では、最初から並行して国際商標(マドリッド協定)など各種申請を準備しましょう。
輸出バイヤー/サプライヤー両面の視点
バイヤーの立場では、調達先(サプライヤー)の知財管理意識が甘いと、取引停止につながるリスクがあります。
供給側(サプライヤー)としても、「知財権侵害リスクをどう回避するか」という提案は大きな信頼獲得要素になります。
OEM時代よりもさらに一歩踏み込んだ、「ブランド・知財を守れるパートナー」たる企業像を目指しましょう。
まとめ
日本の製造業がOEM依存から脱却し、自社ブランドを軸に持続的な成長を目指す時代。
商標登録や知財戦略は単なる“法務の仕事”ではなく、「現場の武器」となっています。
現場の一人一人が商標や知財権の重要性を理解し、開発・生産から販売まで一気通貫で管理する体制づくりが今後の競争力を左右します。
自社ブランド立ち上げに取り組む全ての方が、知財戦略を“最前線の実務”として取り組むことをおすすめします。
未知の課題も多い知財実務ですが、一歩踏み出すことで製造業の未来は大きく切り拓けるのです。
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