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トラベル圧縮バッグOEMが荷物容量を30%増やす二重ジッパー開発

目次
はじめに:アナログからの脱却を求める製造業
製造業の現場では、長年にわたり昭和時代からのやり方が根強く残っています。
特に日本国内の製造現場では、長年の慣習や独自の帳票文化、アナログ管理が根底にあり、新しい発想やツールの導入が難しい面もあります。
しかし、グローバル競争が激化する現代社会においては、伝統的なやり方に固執しているだけでは大きな成長は望めません。
現場発想のイノベーションやバイヤーのニーズに耳を傾けたものづくりに挑戦することが、今後のものづくり企業の競争力強化のポイントとなります。
本記事では、私が長年経験してきた調達・購買、生産管理、工場自動化の視点を交えながら、旅の利便性を飛躍的に高める「トラベル圧縮バッグ」のOEM事例と、荷物容量を約30%増やす革新的な二重ジッパー構造の開発ストーリーを解説します。
OEM調達を検討するバイヤーや、バイヤーの考えを知りたいサプライヤーの皆さまにも参考になるよう、実践的な視点で深掘りしていきます。
トラベル圧縮バッグ市場の現状と課題
依然として根強いアナログ発想
トラベル圧縮バッグは、旅行ブームや出張需要の高まりとともに数年前から急速に普及した製品です。
多くの消費者が衣類や小物を効率的にパッキングできるアイテムとして認知しており、市場は拡大傾向にあります。
一方で、従来型製品の多くは昭和的な「ジップロック式」や、単純な押し込み圧縮によるアナログな設計のものが大半です。
消費者の「もう少し容量を増やしたい」「圧縮の手間を減らしたい」といった声や、実際に現地で再パッキングする際の不便さなどが散見されます。
製品設計も「とりあえずOEM先に丸投げ」「従来スペックの焼き直し」で済ませているケースが多く、革新性に欠けている現場が少なくありません。
OEM製品の【本質的な差別化】はどこにあるのか
OEM(相手先ブランド製造)の現場では、バイヤーが複数メーカーを比較検討し、価格競争のみならず「機能vs.コスト」や「ブランドイメージ」などさまざまな縦軸・横軸で判断します。
そんな中、トラベル圧縮バッグの実際の競争ポイントは
– 圧縮後の容量削減率
– 圧縮操作の手間やイージーさ
– ジッパーや縫製の耐久性
– 不要なコストアップを避けた適正価格
などですが、本質的な差別化が難しいのが現状です。
30%増量を実現した二重ジッパー開発の背景
現場の声と分析が生んだアイデア
私が関わったあるOEM現場では、「もっと圧縮して容量を増やせないか」というバイヤー(発注側)の強い要望が寄せられていました。
従来品では、1層ジッパーで圧縮しても限定的な容量増加しか得られず、現場の作業員や製造パートナーからも「余裕があるならあと1着は入りそうなのに」という実感値が挙がっていました。
調査や現場ヒアリングを重ね、「ジッパーを2重構造にすることでさらに圧縮領域を確保できるのでは」というアイデアにたどり着きました。
このラテラルシンキングこそが、成熟市場でのイノベーションを生み出す原動力です。
二重ジッパーの設計ステップ
【1】ジッパーの強度確認
二重にすることで負荷が集中する箇所を特定し、耐久性と滑らかな開閉性の両立を目指しました。
【2】生地の最適化
圧縮後のシワ・破れ防止のため、引き裂き強度と伸縮性のバランスを検証し、10種以上の素材をトライ。
【3】現場フィードバックの活用
製造オペレーターやテストユーザーによる「圧縮しやすさ」「再開封時の戻りやすさ」など実戦評価を重視しました。
【4】コストバランス
新構造による部品増加を吸収し、既存生産ラインでの対応・歩留まりの検証により適正価格に抑制しました。
二重ジッパー構造がもたらす“実質的な容量増”
30%増量達成への技術的ブレイクスルー
従来の1層ジッパー構造では、バッグに詰めた衣類を閉じる際に1回の圧縮が限界でした。
改良後は、
– 1層目を閉じる → 衣類を均等に詰めたまま圧縮
– 2層目を閉じる → さらに圧縮領域が広がりエア抜けしやすくなる
というプロセスになり、「もう入らない」と思っていた隙間に最大30%の容量増加を実現しました。
しかも、圧縮の手間は従来品とほぼ変わらず、旅先で短時間で再圧縮が可能となったのです。
消費者・バイヤーからの評価とOEM現場の反応
バイヤー視点では
– “他社品と並べても即わかる”機能的アドバンテージ
– 「荷物が増えがちな旅行/出張ユーザー向け製品」の新販路開拓
というメリットがあります。
実際、展示会や試作品レビューを通じて、「確実に入る量が増えた」「旅行帰りの洗濯物も圧縮したまま持ち帰れる」と高く評価されました。
OEM生産現場でも、「複雑化による不良品リスクが思ったほど増えなかった」「既存工程に最小限のアレンジで導入できた」など好意的な反応が多く、バイヤー・サプライヤー双方のメリットとなっています。
アナログ業界でも広がる新たなOEM開発の潮流
単なるスペック競争から、“シーン起点”の発想へ
これまでOEM供給では「サンプルを見てコピー」や「価格ありき」の交渉が主流でした。
しかし顧客価値が成熟し、市場が頭打ち傾向になっている現代では、
– “誰が・いつ・どう使うか”というシーン起点のものづくり
– 実際のユーザーボイスを反映した共創開発
が重要な潮流となっています。
トラベル圧縮バッグの二重ジッパー化例のように、
– 旅行・出張だけにとどまらず、アウトドア・防災・帰省など多用途の活用
– バイヤーの「現場目線の課題」を聞き出し、小さな改善を積み重ねる
– サプライヤー側も“ただ言われた通り”でなく、新技術・工程の提案力を持つ
という態度が、今後のOEM・ODMメーカーに求められる力です。
管理職・バイヤー・生産部門の“三位一体”が生む競争力
ものづくり現場が、アナログ思考から脱却して新領域を開拓するには
– 上意下達だけでなく、現場改善アイデアが通る“心理的安全性”
– バイヤーと現場が直接話し合える場の設定
– 長年の慣習にとらわれない多様な視点・バックグラウンド人材の登用
など、企業内のコミュニケーション改革も重要です。
今回の二重ジッパー構造開発も、サプライヤー・バイヤー・生産部門が定期的に意見交換しながら、試作・評価を繰り返した賜物だといえます。
まとめ:ものづくりの現場力と共創が市場を切り拓く
トラベル圧縮バッグの30%容量増加という革新は、一見「小さな工夫」に見えるかもしれません。
しかしその背景には、アナログ慣習を乗り越えた現場の気づきとバイヤー視点の洞察、サプライヤーによる自発的な提案力が結集しています。
成熟市場のOEM調達やサプライヤービジネスで今後不可欠なのは、「誰もが納得する当たり前」を疑い、現場から新しい価値を生み出せる“三位一体”の共創体制です。
ぜひ皆さんの現場・ビジネスでも、自社の枠を超えたラテラルシンキングを実践し、「工程・機能・使いやすさ」という三拍子そろったものづくりで新たな市場価値を創出してください。
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