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パッケージ内の巻き硬さムラを防ぐトラバースプロファイル制御

目次
パッケージ内の巻き硬さムラを防ぐトラバースプロファイル制御
製造業の現場では、特にフィルムや紙、糸などをロール状に巻き取る工程において、「巻き硬さムラ」という問題が度々発生します。
このムラがあると、後工程でのトラブルや品質クレームにつながるため、現場担当者やバイヤーにとっては頭の痛い課題です。
巻き取り作業の肝とも言えるのが、「トラバースプロファイル制御」です。
本記事では、長年現場で培った知見をもとに、巻き硬さムラの本質的な原因や、デジタル化が進まない現場での実践的な改善ポイント、これからの技術動向までを深掘りします。
巻き硬さムラがパッケージ品質に与える本当の影響
巻き硬さムラとは何か
巻き上げ品の端から端までの硬さ、あるいは径方向や内外層での圧縮度合いにバラツキが生じる現象を巻き硬さムラと呼びます。
フィルムや紙の場合は、手で押すと柔らかい部分と硬い部分が混在していたり、サイドコアが楕円形になる場合もあります。
このムラが問題になるのは、使いやすさだけではありません。
印刷、ラミネート、スリッターなどの次工程で蛇行や巻きクセ、印刷不良などが起きるリスクがあるため、最終的な製品品質に直結します。
クレームやロスの要因に直結
パッケージ業界では、顧客からのクレームで最も多いのが「後工程で巻き戻し時に繋ぎ割れが発生した」「印刷時のテンションが安定しない」といった内容です。
これらの大半は、巻き硬さムラに起因しています。
品質規格を満たしていても、巻きムラの目視や手触りは現場作業者にも明確に伝わります。
「なんとなく不具合が起きやすいロット」という曖昧な評価が、実は巻き硬さムラと密接に関係しているのです。
なぜ巻き硬さムラが発生するのか
機械構造とアナログ文化の壁
昭和から続く日本の製造業の現場では、設備更新が進まず、20年前の巻き取り機が現役という工場も少なくありません。
古い機械の場合、メカトロ設計が不十分で、巻き取りテンションやトラバース幅も手動に頼ることが多いのが現実です。
また、作業者ごとの経験値や“勘とコツ”に頼る運用が主流のため、厳密な再現性が確保しにくい傾向もあります。
DXが叫ばれる現代でも、現場の多くは実はアナログのままで“なんとなく”運転しています。
マテリアルと環境要因の複雑性
原反素材のバラツキ、気温・湿度による伸縮、糊やコーティング剤の微妙な差など、巻き取りに関与する要素は無数にあります。
工程ごとにコンディションが異なり、「昨日は良かったのに今日はムラが出る」という事例もしばしば見受けられます。
品質部門や製造技術部門が、他の現場部門と連携できず情報共有が不足していると、同じ失敗を繰り返す原因となります。
巻き硬さムラ解消の鍵:トラバースプロファイル制御とは
トラバースの役割
トラバースとは、ノズルや巻取り部品が左右に移動しながら原反を整列して巻き上げる機能です。
この幅(トラバース幅)と巻取り速度の最適化によって、層と層の重なり具合や緊張のかかり方を調整できます。
つまり、単なる巻き速度制御だけでなく「どのタイミングで、どのくらい原反を横送りするか」で仕上がりが大きく変わるのです。
巻取のプロファイル制御がもたらすもの
近年、インバータやサーボモーター制御技術の向上により、段階的あるいは連続的に巻取条件(テンション、トルク、トラバース幅、押さえ力など)を変化させる「プロファイル制御」が普及しはじめています。
ロール径の増加やマテリアルの物性変化に応じて、パラメータをリアルタイムに最適化できれば、巻き硬さのバラツキが劇的に減少します。
従来の単純制御から一段上の品質安定化が期待できるのです。
現場で実践できる!巻き硬さムラ対策の最前線
現場ヒアリングの徹底と「体感」の数値化
最初に着手すべきは、現場作業者から「どの部分でムラを感じるか」「どんな時に巻きがうまくいかないか」を定性的に集めることです。
さらに、圧力計やテンサゲージなどを用いて数値データを取得し、“現場の肌感覚”とデータ分析をリンクさせましょう。
例えば、ロール端部と中央部で押圧値を比較したり、出荷前のロール抜き取りテスト時に記録用紙へ細かく状態を書き残すだけでも有益です。
PDCAサイクルの「アナログ回し」からの脱却
従来は、問題が起きてから作業指示書を修正し、不良品が出なくなるまで“現場任せ”に微調整を繰り返していました。
これをやめ、工程ごとに作業パラメータ・異常傾向・巻き取り結果を見える化し、「なぜその設定にしたのか」を必ず記録しましょう。
シフト日報だけでなく、グラフや写真も活用し、定期的にチームで原因分析会を実施することが重要です。
機械改良・後付装置の活用
大型投資ができない工場でも、後付可能なテンションコントローラやトラバーススキャナー、さらにはAI画像解析ベースの巻取り自動チェック装置など、低コスト機器が登場しています。
巻取り機を買い替えるのは難しい現場でも、まずは部分的な自動化や既存設備の改造から始めてみてください。
「できない理由」を並べるのではなく、「できる工夫」を共有し、全社で巻き取りムラとの戦いに挑むマインドが必要です。
サプライヤーとバイヤーの“視点ギャップ”を埋めるには
サプライヤーは何を意識すべきか
自社製品の「巻き取りやすさ」「後加工時のトラブルの起きにくさ」は、スペックシートに明記されることは殆どありません。
しかし、実際の現場ではそれこそが最重要です。
バイヤーが求めている本質は、「自分の工程で苦労しないこと」や「安定品質によるトラブル抑制」です。
巻き硬さムラの少ない製品を“体感値”でアピールするだけでなく、根拠となる工程データや巻き取りプロファイルの提示、現場立ち会いの積極提案など、“相手の工程に寄り添った提案力”が差別化を生みます。
バイヤー側の意識変革も重要
一方で、バイヤー側も「最安値・最短納期」にだけ目を奪われず、メーカー現場の巻き取り事情や、改善に前向きなサプライヤーの姿勢を評価する視点が求められます。
ロール品を実際に使ってみてトラブルが続いたら、単純な返品やクレームだけでなく、工程見学や現場担当者とのディスカッションの場を設けましょう。
購入前のサンプルチェックや、テストロット出荷前の巻取り条件共有会を行うことで、真に価値のあるサプライヤー選定が実現します。
巻き硬さムラ改善とIoT・デジタル化の未来
デジタル活用で高度なプロファイル制御へ
IoT技術やビッグデータ解析、AI画像認識を活用することで、従来“勘と経験”だった巻き取り条件を、科学的に可視化、最適化できる時代に突入しています。
例えば、ロール端部~中央部の巻硬さを自動モニタリングするセンサ、ラインデータを一元管理するクラウド型システム、AIによる異常予兆検知など、先進現場ではすでに実装が始まっています。
ただし、最新技術も「現場の課題」に根差していなければ絵に描いた餅です。
従業員教育や現場の抵抗感克服も含め、段階的なDX推進がカギとなります。
「昭和の現場」から「次世代の品質管理」へ
多くの製造業現場は今なお、「アナログな作業指示」「ベテラン任せの微調整」「設備投資の先送り」という昭和型体質から抜け出せていません。
しかし、グローバル競争や省人化要求が進み、品質トレーサビリティの重要度が増す今こそ、1段上の巻き取りプロファイル制御に踏み出すべきタイミングです。
巻き硬さムラの根本対策は、機械・人・データの全てを連携させ、「見える巻き取り品質」を築くことにあります。
まとめ:巻き硬さムラ対策は現場の進化の一歩
巻き硬さムラは単なる現場の“厄介ごと”ではなく、製造工程全体の品質向上やコストダウン、さらには顧客満足度に直結する重要課題です。
「トラバースプロファイル制御」というテクニカルなアプローチを軸に、アナログ現場でも可能な改善策、新たなデジタル化の潮流までを体系的に取り入れていきましょう。
バイヤーやサプライヤー、現場作業者みんなの目線を融合すれば、巻き取り工程が企業競争力の源泉へと変わります。
今ある現場力を活かしつつ、未来型の品質管理へと確かな第一歩を踏み出してください。
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