投稿日:2025年11月29日

OEMアウターでのトレンド素材分析――2025年以降の方向性

はじめに――OEMアウター製造の最前線から

OEMアウター――いわゆる他社ブランドの製品を請け負って生産する形態は、従来から多くの日本の製造業で重要なビジネスモデルです。

国内外のアパレルブランドが求める高品質かつ付加価値の高いアウター製品を安定供給するためには、材料選定、調達力、生産管理、品質管理など多角的なノウハウが求められます。

一方、巨大なアパレル業界の潮流はここ数年で劇的に変化しています。

SDGsやエコ素材、サステナビリティ、DX(デジタル・トランスフォーメーション)、アジア諸国をはじめとした新興国の台頭……。

こうした新たなトレンドが、OEMアウター分野にも確実に波及してきました。

この記事では、2025年以降を見据えたOEMアウターのトレンド素材について、昭和から続くアナログな慣習が根強く残る業界の現場経験を交えながら、最新の業界動向とともに掘り下げて解説します。

バイヤーとして、またはサプライヤーとして知っておきたい「これからの素材選定」の現場感覚にもご期待ください。

OEMアウター市場の現状と課題

国内OEMの強みとアナログの壁

日本国内のOEM工場は、寸分の違いを許さない精度、徹底管理された品質保証、納期遵守といった信頼性の高さから大手アパレルブランド各社から重宝されています。

しかし、その一方で慢性的な人手不足と高齢化、IT・自動化へのシフトの遅れ、属人的・アナログな工程の多さという課題を抱えています。

特に素材選定の現場では、「以前から使ってきたから」「営業担当が勧めるから」といった慣習に依存してしまう場面がまだまだ目立ちます。

現場では“安心・定番”志向が根強いことも、トレンド変化への即応性やコスト競争力の障壁になりかねません。

海外競合の追い上げと顧客ニーズの変化

中国、ベトナム、バングラデシュといった新興国製造拠点の台頭により、アウター製造のグローバル競争は激化しています。

また、アパレルバイヤー側からは「エコ素材」「リサイクル繊維」「生分解性樹脂」など環境に配慮した素材への要望、予測に基づいた柔軟なサプライチェーン管理や画像データによる素早い意思決定といった新たな要求も高まっています。

こうした課題と変化を背景に、OEMアウターの素材選定も大きな転換点を迎えています。

2025年以降のOEMアウタートレンド素材:現場目線の最新分析

1. サステナブル素材の本格普及

サステナブル(持続可能)な素材選定は今や「トレンドだから」ではなく、ステークホルダーからの強い社会的要請です。

中でも特に注目度が高いのがリサイクルポリエステルやリサイクルナイロンです。

PETボトルや使い古しの漁網などから再生された繊維は、従来素材に比べて品質・風合い共に進化を遂げており、高いコストパフォーマンスも魅力です。

再生繊維の調達ルートや原料トレーサビリティを工場側がしっかり確保できるかどうかが大きな分岐点となります。

また、バイオマス系の樹脂繊維(例:トウモロコシ由来ポリ乳酸繊維)やオーガニックコットンも、各メーカーが自社製品へ採用拡大を急いでいます。

ここで現場感覚として重要なのは、こうした新素材は「従来素材と同じ感覚で使えない」場合が多いことです。

例えば、リサイクルポリエステルは染色ムラが出やすいため、量産前に必ず社内でテストを繰り返し、工程管理表に落とし込む必要があります。

トライ&エラーを積極的に許容する風土づくりこそが、変化への適応力を高めます。

2. ハイブリッド素材への期待と実装

2020年代後半に入り、2種以上の繊維素材をブレンドするハイブリッド素材が急速に拡大しています。

代表例は外側に防風・撥水性の合成繊維、中層に断熱性の高いウール、さらには内側に吸湿発熱・抗菌機能を持つ機能糸を組み合せる多層構造のアウター用複合素材です。

これまでアナログ工程が多かったOEM現場では、「異素材ジョイントに弱い」「縫製条件が読みづらい」などの懸念が根強くありましたが、近年はCAD設計・シミュレーション技術の活用や、自動縫製ロボットの導入が進むことでこの課題が解消されつつあります。

新素材導入に不安がある場合も、まずはプロトタイプを製作し、縫製、洗濯、耐久などあらゆる角度から評価し、その結果を工程基準書に反映させることが現場での定着のカギになります。

3. 機能性素材の革新――「着るスペック」を極める

近年のOEMアウターにおける最大の差別化ポイントは、見た目だけではなく“着るスペック”の進化にあります。

柔軟性と強度を両立したナイロン66ベースのストレッチ素材、防水性と透湿性をバランスよく持つ高機能ラミネート、温度調整素材、抗ウイルス加工など、多機能性を重視した要望が確実に増えています。

市場では低コスト化と高機能化が矛盾なく求められますが、この両立のカギはサプライヤー側の知見や提案力です。

たとえば、「この素材はこの用途で強みを発揮する」と予見的に選定し、ブランド側バイヤーを納得させる根拠を準備することで単なる“受注生産屋”から“一歩先行くパートナー”へと脱皮できます。

また、最新の機能素材は一見して判別しづらいことも多いため、現場での「サンプル製作→実験データ→レポート化」というプロセスは省略できません。

工程ごとの品質記録や試作データは、バイヤーとの信頼構築の面でも強力な武器になります。

4. デジタル化・自動化が生む新しい素材管理体制

素材調達の現場でも、従来のFAX・電話による受発注からITを使った在庫・ロット管理や、AIによる需要予測が主流となりつつあります。

2025年以降の競争優位を築くには、現場の作業員・工場長・購買担当までがデジタルツールを日常的に用い、“情報の見える化”を徹底することが不可欠です。

タブレット上での資材管理や、生産進捗状況のリアルタイム共有、調達データのクラウド管理など、従来のアナログ運用からの転換を現場目線で進めることで、素材トレンドの変化にも迅速かつ柔軟に追随できる基盤となります。

現場からの“肌感覚”のフィードバックをデータとして集積し、供給先への説明や提案材料にすることも、高度化したOEMアウター製造には欠かせません。

OEMアウターで強く生き残るための素材調達戦略

長期的な原料調達ルートの構築

サステナブル素材の採用には「安定供給・価格競争力・トレーサビリティ」のすべてが不可欠です。

特に海外サプライヤーとの提携では、円安・原油価格変動・港湾混雑などで化繊原料の納期や価格が乱高下します。

現場では複数調達ルートの確保、ローカル市場でのバックアップサプライヤーとの関係構築、緊急時には類似素材での代替対応フロー策定が必須です。

また、原材料の出自や製造履歴(トレーサビリティ)を明確にしたサプライヤーを選定し、バイヤーからの監査・要請にも自信を持って応えられる体制こそが生き残りのカギです。

付加価値提案型バイヤーの時代へ

OEMアウターのバイヤーは今後、「安く・早く仕入れる」だけではなく、「ブランド価値を高め、顧客ファンを獲得・継続する」ための素材選定、提案、そのための知見の共有が求められます。

現場の製造業サイドも、ただ指示されたものを作るのではなく、「この商品コンセプトならば、この新素材を使えば訴求力が強化できる」と能動的に提案する能力がより重要になります。

2025年を超えて生き残っていくには、現場からトレンドをつかみ、積極的に社外に発信し続け、提案と改善サイクルを回していくマインドが必須です。

まとめ――ラテラルシンキングでOEMアウター素材の地平線を切り開く

2025年以降のOEMアウター素材トレンドは、「サステナブル&高機能」「デジタル&アナログの融合」「バイヤーと現場の共創」という三本柱で進化していきます。

一見すると最新技術やグローバル競争が主導するように思えますが、実は昭和から続く現場力、職人の技と知恵、顔の見える信頼関係が今も確実に根幹を支えています。

製造業の現場目線での素材選定、調達、提案、そしてデータドリブンによる品質管理やCS(顧客満足)の徹底――。

この両輪をうまく活用しラテラルシンキング(既成概念を飛び越えて考える力)で自社独自の価値を築くことこそ、これからのOEMアウター製造業・バイヤーに求められる新たな地平線といえるでしょう。

今、アナログからデジタルへ、旧来から未来へ――変革の波に乗り遅れず“現場の知恵”を活かして、ぜひ一歩踏み出してみてください。

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