OEM生産で拡大するペットおやつ市場のトレンドと戦略

はじめに：ペットおやつ市場の成長とOEM生産の重要性

ペット市場は近年、著しい拡大を続けています。
その中でも「ペット用おやつ」は特に高い成長率を示し、多くの消費者の関心を集め続けています。
その背景には、ペットを家族の一員として捉える価値観の変化や、SNSなどでのペット投稿の普及による“映え需要”の影響も少なくありません。

こうした成長市場のプレイヤーとして、OEM（相手先ブランド製造）による生産が脚光を浴びています。
この記事では、20年以上の製造業経験を活かし、OEM生産の視点からペットおやつ市場のトレンドと実践的な戦略、そして現場で実際に起きていることを詳しく掘り下げていきます。

OEM生産の現場視点：なぜペットおやつでOEMが主流なのか

ペットおやつのOEM生産が広がっている背景には、次のような事情があります。

多品種少量生産のニーズ増加

ペットおやつ市場は商品サイクルが非常に速いです。
流行に合わせて新たなフレーバーや素材、形状の変化を迅速に反映させるため、自社工場を持つよりもアウトソースが効率的になります。
OEMは多品種少量生産への柔軟な対応力が問われる分野であり、このニーズと合致しています。

品質・安全性重視の声の高まり

ペットフードにおける安全性と衛生管理レベルへの要求は非常に高まっています。
そのため、工場ではHACCPやISO22000等の国際規格への対応が進み、品質管理体制の高度化が不可欠です。
OEM企業は専門性を活かし、これらの基準をクリアした“安心・安全”な商品供給ができます。

設備投資リスクの最小化

ペットおやつの需要は季節やトレンドによって変動しやすく、自社で工場を持つと過剰投資や遊休設備のリスクが高まります。
そのためバイヤー側はOEMを戦略的に活用し、生産リソースを柔軟に確保しています。

ペットおやつ市場の最新トレンド

OEM生産に関わるすべての関係者が知っておくべき、ペットおやつ市場の最新動向を紹介します。

天然素材・無添加志向

ペットオーナーは“ヒューマングレード（人間が食べられる品質）”を求める傾向が強まっています。
保存料・着色料などの添加物を極力排除し、できるだけシンプルな原材料を使ったおやつが好まれるトレンドです。
OEMメーカーも原材料調達から製造過程まで、厳格な管理が求められます。

機能性おやつの台頭

近年は「健康・長寿」をテーマに、プロバイオティクスやオメガ3脂肪酸、関節サポート成分配合など付加価値の高い商品が増えています。
OEMメーカーは、これら機能性素材の安定調達や処方開発、製造時の均質化にノウハウが必要です。

高級志向・プレミアム化

いわゆる「ご褒美需要」に応えるため、ブランド力のあるプレミアムおやつが多く登場しています。
少量パッケージや限定フレーバー、ユニークなパッケージデザイン等、他社と差別化する工夫も求められるため、OEM側もデザインや包装のバリエーション提案が重要になります。

飼い主の体験価値向上

ペットと飼い主が一緒に楽しめる“コミュニケーションおやつ”や、“手作り感”が演出できるキット商品なども市場を伸ばしています。
OEMには単なる製造だけでなく、こうした“体験”を意識したプランニング能力も期待されています。

OEM生産における戦略的アプローチ

昭和的なアナログ体質が根強く残る製造業界においても、もはや“待ち”の営業では通用しません。
ペットおやつ市場で確かな成功を収めるための戦略的視点を紹介します。

サプライヤーの立場で考える：バイヤーの心理とニーズ分析

多くのバイヤーは「新しい市場ニーズに素早く応えたい」「自社のブランディングを強化したい」という意識を持っています。
このときサプライヤー（OEM生産者）に求めるのは、単なる製品提供ではなく、課題解決型の提案力です。

バイヤーが考えているのは例えば次のような内容です。

機能性成分や素材調達の難しさを解決できるか
自社ブランドの世界観に合ったデザインや包装提案ができるか
生産キャパやリードタイム、ロット数に柔軟に対応できるか
徹底したトレーサビリティや品質保証体制があるか

こうした要素を、受け身ではなく“積極的な提案”として具現化することが、継続的な取引やロイヤリティ向上に繋がります。

自社の強みを活かす差別化ポイントの明確化

OEM企業ごとに強みは異なります。
例を挙げます。

特定素材・調味料の調達ノウハウがある
工程設計において高い歩留まり・安定品質を実現している
ラベル、パッケージ込みの一貫対応ができる
検査体制や品質データの開示レベルが高い

バイヤーも、サプライヤーを「並べて比較」しています。
「うちは何ができるか」「他社との違いは何か」を社内で改めて棚卸しし、即座に説明できる体制を整えておくことが肝心です。

業界特有の“昭和的習慣”とうまく付き合う

製造業の現場は、まだまだFAXや電話一本でのやり取り、判子文化が残っています。
一見すると非効率に思えるこうした“昭和的なアナログ文化”にも、良い面があります。
それは「現場の信頼関係」「長期取引の安心感」の基盤です。
デジタル化を進めつつも、現場訪問や勉強会、定期的なコミュニケーションを絶やさないことが重要です。

また、品質トラブル時の初期対応や、イレギュラー対応時などは現場・現物・現実（3現主義）が今も強く求められます。
昔ながらの現場力の継承と、最新のテクノロジー活用をバランスよく両立する考え方が成果を分けます。