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不具合解析が“証拠不足”で迷宮入りする現場の実情

目次
不具合解析が“証拠不足”で迷宮入りする現場の実情
はじめに
製造業の現場で「不具合解析」は品質管理の要です。
ところが、実際には原因の特定ができないまま案件が棚上げになる、いわゆる“迷宮入り”ケースも少なくありません。
その多くは、十分な証拠が集まらない——いわば“証拠不足”が原因です。
本記事では、昭和から続くアナログな慣習が色濃く残る製造現場で、なぜ証拠が不足しがちになるのか、また、どのような点を改善していけば不具合解析の突破口を開けるのか、現場経験をもとに深く掘り下げて解説します。
現場でよくある不具合解析“迷宮入り”エピソード
初動の甘さが致命傷に
トラブルが発生した際、まず大切なのが“現場保存”です。
しかし、実際は生産ラインを止めずに流してしまったり、「一旦掃除してから報告しよう」と誰もが良かれと思って証拠を消してしまったりする場面が多々あります。
結果、肝心の異物や不具合パーツの回収漏れが起こります。
その段階ですでに「なぜ?」「何が起こった?」の検証材料が大きく減っているのです。
記録・記憶の曖昧さ
日報や作業記録が既存のフォーマットに従って簡素にまとめられているだけ、記憶だけを頼りにヒアリングを進めている、という現場も多いです。
そして「AさんもBさんも見ていません」「気がついたらこうなっていました」となると、それ以上先に進めません。
“証拠不足”はこうして発生します。
責任回避や報告遅れによる情報ロス
ミスやトラブルが起きても、「自分が原因ではない」と思い込む心理、「報告したら叱られるかも」などの理由で現場から情報がすぐに上がらないこともよくあります。
初期段階でしか分からない重要な“物証”や“状況証拠”が、時間の経過とともに消失してしまいがちです。
なぜ証拠が不足しやすいのか?
昭和的アナログ体質の影響
いまだ紙の日報や口頭伝承の文化が根強い現場も多く、異常の発生時にその記録がデジタルデータになっていません。
データ化されていれば即座に全体で状況を共有できるのに、記録が個人ノートや紙の伝票に閉じていると、情報が消えるリスクが高まります。
突発対応優先、原因究明は後回し
生産現場にとって最優先はライン稼働率の維持です。
不具合が発生しても、すぐ“現品の置き換え”や“応急修理”といった処置が優先され、「なぜ?」を考える作業は後回しになります。
「今は忙しいから」と現場作業員が詳細な状況メモを残さずに済ませてしまうことも、証拠不足に直結します。
個人の経験値に依存した現場
ベテラン作業員の「なんとなく変だった」という勘が頼りにされがちですが、勘や経験も記録されねば他者に継承できません。
新人や他部署の人には伝わらないため、属人的なノウハウは対策や再発防止に活かしづらいのです。
現場で実践すべき“証拠集め”の具体策
初動マニュアル徹底と教育の重要性
不具合発生時の“現状維持”をルール化し、記録だけでなく「異物をどう保管するか」「写真をどう残すか」なども決めておくことが重要です。
また、「トラブル報告は悪いことではない」という職場風土を醸成し、現場担当者が安心して情報共有できるようにしておきましょう。
デジタル化による情報の可視化
デジカメやスマートフォンでの現場撮影、IoTセンサーやMES(製造実行システム)による稼働状況の自動記録など、証拠集めを仕組み化することが有効です。
全員が同じデータを参照できれば、個人の経験値や記憶力に依存するリスクが減ります。
“なぜなぜ分析”の際のチェックシート化
「5Why」などの不具合解析手法を標準化し、チェックシートやツールとして活用しましょう。
証拠となる現物やデータの確認、関係者からのヒアリング項目などを事前に洗い出しておくことで、必要な情報を“取りこぼさない”仕組みになります。
バイヤー・調達部門の視点で見る証拠集めの重要性
サプライヤーとの信頼構築でも“証拠”がカギ
発注者と納入元のいずれによる不具合か、または両社の接点部分なのかを科学的に切り分けるためにも、証拠の収集・保存が大切です。
サプライヤー側は「証拠がないから御社の責任です」と言われないよう、納入時の現物・検査データや、作業記録をしっかり整備しておく必要があります。
調達・購買における証拠の標準化
不具合対応時、原因追及のためにどのレベルの証拠や資料を要求するかをあらかじめ明示しておくことも大切です。
よくある発注書や納品書だけでなく、検査成績表や出荷時写真、出荷前トレーサビリティレポートなど、証拠提出のルール化が望まれます。
“証拠不足”の現場から抜け出すための文化改革
自社で進めるDXと現場の抵抗
AIやIoTの導入などDXが現場に迫りますが、「便利そうだけど、使い方がわからない」「従来通りのやり方が一番安心」という抵抗感が障壁となることが多いです。
現場作業者の使い勝手や心理的な壁を配慮し、機器導入時には“なぜそれが必要か”“どんなメリットがあるか”を一つ一つ丁寧に説明・教育することが大切です。
組織全体で情報共有の意識を高める
設備トラブルやヒヤリハットの記録を組織全体で“オープン”にできる環境づくりは、再発防止・全体最適へとつながります。
単に現場の人間だけでなく、開発、営業、調達、品質保証など“部門をまたいだコミュニケーション”で証拠を共有していく仕組みを作るべきです。
まとめ:証拠不足“迷宮入り”を防ぐには
不具合の迷宮入りは、製造現場の証拠不足から生まれます。
迅速な現場保存、証拠の体系的収集、デジタル化推進、ルール化・教育、部門をまたいだ連携——これら総合的な取り組みが突破口となります。
昭和的なやり方に固執せず、新しい目線やテクノロジーをうまく活用することで、不具合原因の早期究明、再発防止、強いものづくり体質の実現に近づけるでしょう。
製造業に携わる皆さん一人ひとりが“証拠”の重要性に気付き、明日から小さな改革を始めてみてはいかがでしょうか。
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