投稿日:2024年8月26日

工具鋼の種類と製造業での利用方法

工具鋼とは

工具鋼は、工具や機械部品の製造に使われる特殊な合金鋼の一種です。
その主要な特性には、高硬度、高耐摩耗性、優れた靭性、そして高い熱処理性が含まれます。
これらの特性から、工具鋼は特に高負荷の作業環境や高温環境での使用に適しています。

工具鋼の主要な種類

工具鋼には主に以下の種類があります。

炭素工具鋼(Carbon Tool Steel)

炭素工具鋼は、最も一般的な工具鋼の一つです。
この鋼の主成分は鉄と炭素で、比較的低価格で容易に扱えるため広く利用されています。
特に硬度が高く、切削工具や手工具、型鋼などに用いられます。
しかし、耐熱性には限界があり、高温環境での使用には向いていません。

合金工具鋼(Alloy Tool Steel)

合金工具鋼は、炭素工具鋼にクロム、モリブデン、バナジウムなどの元素を添加したものです。
これにより、硬度や耐摩耗性、耐熱性が向上します。
特に高温環境でも使用可能なため、切削工具やダイス、パンチといった作業に適しています。

高速工具鋼(High Speed Steel, HSS)

高速工具鋼は、特に高硬度と高耐摩耗性を持ち、高温でも優れた性能を維持するため、名前の通り「高速」での加工が可能です。
そのため、ドリル、エンドミル、リーマ、およびタップなどの切削工具に頻繁に利用されます。

耐熱工具鋼(Hot Work Tool Steel)

耐熱工具鋼は、高温環境下での作業が可能であり、特に熱処理や鍛造工具、ダイカスト金型に適しています。
これらの鋼は、熱に対する高い耐性を持ち、長時間の高温作業でも変形や硬度の低下が少ないです。

耐衝撃工具鋼(Shock Resisting Tool Steel)

耐衝撃工具鋼は、特に衝撃に対する耐性が高いです。
そのため、ハンマーやチゼル、パンチなどの衝撃を受ける工具として利用されます。

工具鋼の利用方法

工具鋼は、さまざまな産業での用途に利用されています。
以下に代表的な利用方法を示します。

切削工具

ドリル、タップ、エンドミル、リーマなどの切削工具は、高速工具鋼や合金工具鋼から製造されます。
これらの工具は、高い硬度と耐摩耗性を持ち、特に精度が要求される加工に最適です。

プレスおよび鍛造工具

プレス機や鍛造機の工具、ダイスなどは、耐熱工具鋼や耐衝撃工具鋼から作られます。
高温や高圧の環境下でも使用可能であり、耐久性が求められる場面で重宝します。

金型およびダイカスト

プラスチック成形用金型やダイカスト用金型は、合金工具鋼や耐熱工具鋼が使われます。
高温、高圧の環境でも形状を維持し、公差の厳しい製品を作ることが可能です。

手工具およびその他の特殊工具

ハンマー、チゼル、パンチ、スクリュードライバーなどの手工具は、主に炭素工具鋼や耐衝撃工具鋼で製造されます。
これらの工具は、日常的な使用や衝撃を伴う作業に耐えられる設計です。

最新の技術動向

今後、工具鋼の分野では材料科学や加工技術の進歩により、新たな展開が期待されます。

合金成分の最適化

各種合金成分の最適化が進んでおり、特定の環境や用途に最適化された新たな工具鋼が開発されています。
例えば、耐腐食性を強化した工具鋼や、より長寿命化を実現した材料が登場しています。

高精度な製造技術

新しい製造技術、例えば3Dプリント技術や高度なCNC(コンピュータ数値制御)技術の導入が進んでいます。
これにより、非常に高精度で複雑な形状の工具が製作可能となってきています。

表面処理技術

工具の性能を向上させるためには、表面処理も重要です。
最新のコーティング技術により、工具の耐久性や摩擦係数を大幅に改善することができるようになっています。
例えば、PVD(物理蒸着)コーティングやCVD(化学気相成長)コーティングが代表的です。

まとめ

工具鋼は製造業において欠かせない重要な材料です。
その多様な種類と高性能な特性により、さまざまな用途で利用されています。
また、最新の技術動向を取り入れることで、さらにその性能を高め、製造現場での効率や製品品質の向上につなげることが可能です。
製造業の現場で働く皆様にとって、この工具鋼の知識が日々の業務に役立つことを願っています。

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