投稿日:2025年12月7日

改善活動が属人化して継続しない典型的な悪循環

はじめに:改善活動がなぜ属人化しやすいのか

改善活動は、製造現場において品質向上や生産性向上、安全性の担保、コスト削減などを実現するために不可欠な取り組みです。

しかし現場のリアルとして、せっかく始めた改善活動が「特定の人だけのもの」になってしまい、継続しなくなってしまうケースが後を絶ちません。

かくいう私も工場長時代に、何度もぶつかってきた壁です。

原因を掘り下げてみると、属人化する文化や“昭和型責任感”、組織風土、情報共有の在り方、自動化の遅れなど、アナログ体質に根差した構造的な問題が見えてきます。

本記事では、属人化の悪循環が生まれる典型パターンと、その要因、安全・安心して現場力を全員で最大化するための打開策まで、製造業現場に根差した実践知を交えて解説します。

属人化による悪循環の典型パターン

ベテラン個人頼みで形骸化する改善活動

多くの現場では、「あの人がいればなぁ」「Aリーダーなら何とかしてくれる…」と、知見や経験の豊かな“キーマン”に改善が依存しがちです。

たとえば、特定のベテラン社員が現場の問題点を的確に見抜き、独自のやり方で改善案をどんどん実行してしまうパターンです。

その場では効果が出ても、本人の異動や退職、体調不良などで現場が突然混乱したり、後任がノウハウを引き継げず元に戻ってしまう。

「どうせまた元通りだろ」と現場メンバーの意欲も削がれてしまい、新たな改善活動にも消極的になっていきます。

トップダウンの押し付け改善

逆に、経営層や管理職が「今月からこの改善テーマでやっていこう」とテーマを決め、現場に旗を振るものの、現場の肌感覚とズレている場合も属人化の温床になります。

現場の納得感や自発的な「なぜ?」の解が得られぬまま、「上が言うからやる」という消極的な動きになりやすく、その中心となる“推進担当者”一人だけが頑張る構図が出来上がります。

結果的に現場と温度差ができてしまい、せっかく取り組んだ改善活動の成果も短命に終わってしまうのです。

そもそも属人化が生まれる背景はどこにあるのか?

昭和型「名人芸」体質と暗黙知の壁

製造業では特に、熟練工の“経験則”=暗黙知によるノウハウ継承が色濃く残っています。

業務手順も、工程管理も「この工程は先輩の○○さんに聞けば大丈夫」という属人的なプロセスに頼りがちです。

さらに“改善とは現場の名人の腕の見せ所”という昭和的な価値観が根強く、標準化や組織的な仕組みづくりよりも、個人技能の発揮が評価されやすい傾向もあります。

これが改善活動における「属人的神話」となってしまうのです。

デジタル化・自動化投資の遅れ

一方、最新鋭のIoTや自動化技術を導入した工場であれば、作業データや改善の効果測定結果が可視化され、誰でもアクセスできる状態が一般的です。

しかし、特に中小の町工場や老舗企業では、「設備のデジタル化やデータ活用の遅れ」が顕著です。

結果、現場の状態や改善効果がデータで残らず、紙帳票・口伝え・手書きメモなどアナログな方法に頼る。

この状態では、どんな優れた改善をしても“記憶”や“経験”として本人の中だけに閉じてしまい、せっかくの活動が伝承されにくくなります。

「忙しさの罠」と目の前対処の連続

生産現場は“火消し型”の仕事が多く、納期順守やトラブル対応にどうしても追われがちです。

中長期の改善活動に本腰を入れる余裕がない。

つい“今日を回すことで精一杯”になり、改善が出来る一部の社員以外は「やらされ感」と「どうせ変わらない感」に支配されます。

「自分がやるより、あの人がやった方が…」となり、結局属人化の土壌を温存してしまうのです。

評価制度が改善の“組織的取り組み”を後押ししていない

人事評価で「生産数」や「納期遵守率」など数値目標のみが重視され、日々の“改善そのもの”や“仕組みづくり”へのプロセス評価がほとんどない組織も珍しくありません。

改善に挑戦する社員のモチベーションが続かず、熱心な一部の人だけが孤軍奮闘する構図が強化されていきます。

悪循環を断ち切る!現場主導・全員参加の改善文化構築法

では、どうすれば「属人化→形骸化→継続困難」という負のスパイラルを断ち切ることができるのでしょうか。

私が現場で実践してきた経験と共に、勘所を整理します。

1.暗黙知を仕組みで“見える化”する

改善活動の成果は個人技になりがちです。

だからこそ、「見える化」「形式知化」が最重要ポイントです。

具体的には
– 改善テーマ別の成果事例やノウハウをテンプレートで記録、誰でも閲覧できる場所に公開
– 作業手順や改善前・後の比較データを写真や動画で残す
– “短文日報”や“KPT(Keep/Problem/Try)”のようなシンプルな振り返りフォーマットを現場全員で使う

これらをルーチンとして組み込みます。

属人化の原因は、知識伝達の手段が口頭や現場の“空気”に頼っているからです。

情報を集約し、仕組みで全員のものにする。

それだけで、改善の“再現性”と“透明性”が大きく高まります。

2.「小さな成功体験」を全員でシェアして称える文化をつくる

大規模な改革よりも、まず「現場目線での小さな改善」を全員が共有できることが鍵になります。

たとえば
– 5分短縮できた段取り方法や、簡易治具の開発
– 整理整頓で減った手待ち時間
– ルールではないが試してよかった品質チェックの工夫

こうした些細な改善体験を朝礼や掲示板、チームmtgで発表し、皆で称える習慣を持ちます。

称賛による承認が「改善は自分事だ」と全員の主体性を生みます。

個人の手柄を「組織の知見」へ。

“ヒーローは現場みんな”のムードを根気強く育てることが大切です。

3.プロセス指標で継続的な評価とフィードバックを

改善活動の評価基準を「結果」だけでなく、「プロセス(取組み度合い)」にもシフトさせる。

たとえば
– 毎月1件以上の改善テーマをチームで議論したか
– 活動事例が形式知化され、次の工程に横展開できたか
– 改善PDCAサイクルが実施できているか

こういった“プロセス指標”を新設し、管理者やリーダー自身の評価もこれに組み込みます。

これで「忙しいからやらない」「属人化は仕方ない」という免罪符を排除し、現場全体での継続意識が高まります。

4.デジタル化・自動化を推進し、情報インフラをつくる

属人化や狭い情報共有の壁を破るには、まず“デジタル化”への投資が不可欠です。

– 改善事例やノウハウを溜める社内ポータルサイト
– 工場内のモニタリングシステム(IoT化)
– デジタル日報や進捗管理ツール
– スマートグラスや手順動画の活用

こうした“情報インフラ”なしでは、業務の標準化も、改善活動の継続も定着できません。

現場リーダー・管理者は「ツールを使いこなす人」になるより、「みんなの知恵を一つに束ねる仕組み・運用ルールの運用責任者」にならなければなりません。

昭和型業界が変わるために今こそ必要な“バイヤー視点”

国内多くのメーカー現場が「昭和から抜け出せない」と言われる大きな理由は、“バイヤー(購買)側”の期待と、工場(サプライヤー)現場の受け止めのズレにあります。

バイヤーが本当に求めているのは
– 継続的なコストダウン・品質向上
– 短納期・多品種・小ロットへの柔軟対応
– 異常時の迅速な是正、標準化されたPDCA
– 情報の透明性と改善努力の可視化

などです。

属人化した体制では「他工場やラインへの横展開がしにくい」「企業全体の改善力として評価されない」など、今後の購買方針から外されやすくなる危険性があります。

逆に、
– 【標準化】プロセスの見える化
– 【チーム参加型】継続的な活動の仕組み
– 【ノウハウ蓄積】データ化による横展開

この3点さえ抑えれば、バイヤーから「御社は現場改善の総合力が強い」と信頼され、持続的な受注にも直結します。

サプライヤーの立場でバイヤー心理を深く知り、現場を動かす意義を再認識しましょう。

まとめ:改善の最大資産は「全員による継続」、属人化の殻を破ろう

属人化した改善活動は、一見効率的でカッコよく思われがちですが、組織の持続的成長には大きなリスクです。

時代遅れの「名人頼み」から脱却し、「現場みんなで+継続的に+見える形で」力を合わせることこそ、真の現場力。

– 知見の形式知化=情報共有の仕組み化
– 小さな成功体験の全員称賛
– プロセス評価の導入
– デジタル化・自動化の推進

この4つの打ち手で、アナログ業界の悪循環も突破できます。

サプライヤー、バイヤー、その両方の目線を持ちながら、現場力の“次の地平”を切り拓きましょう。

あなたの職場も、必ず変われます。

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