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商流に複数仲介が入ることで価格と責任が不透明になる課題

目次
はじめに
商流における複数仲介者の存在は、製造業にとって長年の悩みの種です。
材料や部品の調達経路に仲介業者が増えると、価格の透明性は著しく損なわれ、責任の所在も曖昧になります。
この問題は、昭和から続く「なあなあ」な商習慣の名残と、新興市場の複雑さが入り混じる、現代製造業の根本的かつ喫緊の課題です。
この記事では、現場でのリアルな経験に基づきながら、複数仲介によって生じる「見えにくさ」を紐解き、その中でどう立ち回るべきかを掘り下げていきます。
商流に複数仲介が生まれる背景
なぜ複数仲介が発生するのか
サプライチェーンは、安定供給やリスク分散、価格交渉力の確保など、企業の都合や課題解決のために複雑化してきました。
しかし、過去からの付き合いや紹介、系列会社との互恵関係が絡み、現場の実態として1つの部品に対して複数の仲介業者が介在するケースが珍しくありません。
とりわけ、日本の製造業では「情報は持っていても話さない」「つながりを簡単に手放さない」文化が色濃く残っており、未だに商流の単純化は進みきれていないのが現状です。
仲介者の価値とその変質
もともと仲介業者は、需給調整や信頼性担保、与信管理など、多様な価値を持っていました。
製品品質管理や納期調整のハブとなっていた時代もあります。
しかし、サプライチェーンの可視化や自動化が進む現代において、単なる中抜きや流通マージン目的で存在するケースも増え、存在価値が相対的に薄れてきました。
結果として、価格構造や責任分界が不透明になりがちなのです。
価格の不透明化がもたらす経営リスク
サプライヤーコストのブラックボックス化
仲介が増えると、どこでどれだけマージンが乗っているかが見えづらくなり、購買部門は本当に競争力のある価格で仕入れているのか判断が困難になります。
実際、ある部品製造を委託した際、仲介業者A→B→Cと3社入っていたことが後で分かり、20%以上余計なコストを払っていた事例も珍しくありません。
また、「お付き合いで…」と理由をつけて継続した結果、市場競争力を持つ新規サプライヤーの導入障壁が高くなり、自社のコスト構造見直しが進まなくなるリスクもあります。
本物の値上げか、“途中コスト”かの見極め困難
原材料価格が変動した場合、メーカーへの請求が合理的かどうか、複数の仲介が介在していると、その理由の真偽を突き止めることが極めて難しくなります。
現場としては、仲介業者が「メーカーが材料費の高騰を理由に値上げせざるを得ない」と主張すれば、反証の手段が乏しい状況なのです。
これが業界全体の“ブラックボックス化”を助長し、時には組織ぐるみのコストインフレを引き起こすこともあります。
責任の所在が曖昧化する問題
不良発生時のトレーサビリティ悪化
製品や部品に不具合が生じた時、製造現場の最大の懸念は「どこで、誰が、何を原因として不良が発生したか」を迅速に突き止めることです。
複数仲介を挟むことで、責任のたらい回し発生に拍車がかかります。
現場の声も、「仲介Aは“Bが悪い”、Bは“Cのせい”、Cは“工場側の指示不足”と言い出す」など、原因究明が難航しがちです。
保証・アフターサポートの曖昧さ
一度納入された製品に瑕疵があった場合、仲介者同士の調整に時間を取られ、本来スピーディにあるべき現場対応が二次被害を招くことさえあります。
とりわけ海外調達では言語・商習慣の壁も追加され、最終的にユーザーやエンドカスタマーへの対応が遅延、製造業としての信頼を損なうリスクが顕著なのです。
アナログ業界ゆえの根強い商流構造
付き合い文化と系列主義
「昔からの取引先だから」「お得意先には逆らえない」。
製造業界では、今なお契約や発注の“空気”が根強く残っています。
これが構造的な商流複雑化を招き、新規参入や商流見直しのブレーキとなっています。
書類文化とデジタル化の遅れ
見積・発注・請求書が紙ベースやFAX、電話伝票というのは今も多い現場風景です。
これが商流の可視化を阻み、余分な仲介コストや責任ぼかしの温床となっているのです。
“見える化”しようにも、データが統一されていなければ問題点特定も容易ではありません。
現場目線の打開策
サプライヤーとの直接対話強化
購買・調達担当は、現場の技術部門とタッグを組み、仲介を介さずサプライヤーと直接コミュニケーションを取る体制を作る事が重要です。
現地監査や共同開発によって相互理解が深まり、責任分界もシンプルになります。
BtoBマッチングやオンライン調達システムも活用しましょう。
サプライチェーン全体の可視化推進
EDI(電子データ交換)やERP(統合基幹業務システム)の導入で、部品や材料の流れを一元管理し、どこでコスト・責任が発生しているかを“見える化”する。
これによって、余分な仲介者の存在意義を定量的に評価でき、合理的な商流見直しが進めやすくなります。
契約・品質保証条件の明文化徹底
価格・納期・品質に加え、責任分界点を契約書で明確に示すことが現場トラブルを未然に防ぎます。
「誰がどこの工程を担い、どこまで保証責任を持つか」を明文化し、後日トラブル時のたらい回しを抑制しましょう。
バイヤー・サプライヤー双方の視点から
バイヤーは、コスト競争力強化だけでなく、調達リスク最小化、トラブル時のクレーム処理簡素化にも目を配る必要があります。
一方、サプライヤーも不要な仲介を挟むことで情報が歪曲され、本来の技術力や信頼性が十分に伝わらないという損失が発生します。
双方が「お互いの顔が見える商流づくり」を意識する事が、今後の製造業競争力を左右するカギです。
まとめ
商流に複数仲介が入ることで生じる価格と責任の不透明化は、コスト競争力低下やトラブル長期化、ひいては製造業全体の信頼性損失を招きます。
業界の伝統や慣習を理解したうえで、サプライチェーンの可視化・デジタル化・契約条件の明確化を推し進めることが、持続的成長への第一歩です。
現場感覚を活かし、「なぜ、この仲介が必要なのか?」を常に問い続けていく姿勢が、アナログ業界に新たな地平線をもたらします。
買い手も売り手も“見える化”をリーダーシップで推進し、誰もが納得できる商流構造の再構築を目指しましょう。
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