投稿日:2025年8月25日

海外仲介を経由した支払未回収トラブルとその回避策

はじめに:グローバル調達の現実と未回収リスク

製造業において海外サプライヤーとの取引は日常的なものとなっています。
コスト競争力の強化や、調達先の多様化を目的として、多くの日系メーカーや調達担当者が海外サプライヤーと直接、または海外仲介商社を通して取引を行っています。
しかし、このグローバル化の波に乗り遅れまいと、安易に仲介業者を利用した結果、支払や回収に関するトラブルに直面する企業は後を絶ちません。

昭和から続いたアナログな業界慣習や「なあなあの取引」では通用しない国際商取引の現場で、何が問題になりやすいのか、またどのような対策が有効なのかを、実践的・現場目線で解説します。

なぜ海外仲介を介した場合に支払未回収トラブルが多発するのか

商流が複雑化することで責任の所在が曖昧になる

海外のサプライヤーと日本企業の間に仲介業者(現地商社など)が入ると、取引の流れが一段階増えます。
例えば、A社(日本メーカー)→B社(海外商社)→C社(海外サプライヤー)という流れです。
この場合、A社はB社に発注・支払を行い、B社がC社に依頼・送金を行う形です。

一見、理路整然として見えますが、仲介を挟むことで「A社の支払がC社に届いていない」「C社からの納品に遅延が発生した際の責任はどこか」など、いざトラブルが生じたときに、当事者意識が薄れやすいという落とし穴があります。

現地事情や法制度の違いをカバーしきれない

海外、とりわけ新興国では商習慣や法制度が異なります。
現地の仲介に頼れば、語学や文化の壁は一時的にクリアできますが、仲介自体が小規模で信用力が低かったり、現地通貨リスク・海外送金リスクなど、日本国内の “当たり前” が通じない環境に放り出されます。
現場では「現地業者が突然夜逃げした」「運送手配が杜撰で貨物が見つからない」といった話も珍しくありません。

仲介業者が信用不十分だと未回収のリスク増

支払先が仲介業者の場合、結局のところ、その仲介業者の財務的信用力が十分でなければ、A社が正しく支払っても、最終的な仕入れ元に資金が届かない、あるいは納品が実現しないというリスクに見舞われます。
実際、「前金を払ったのに、仲介が倒産したために製品も金も失った」という痛ましいケースも数多く存在します。

具体的な事例から学ぶ:当事者が見落としやすい4つのポイント

1. 支払条件・インコタームズの誤解

LC(信用状取引)や前金払(ADVANCE PAYMENT)、代引(D/P)、人民元建取引など、支払方法・条件は多岐にわたります。
仲介が絡むと、その条件の解釈や運用が重要になります。
「いつ誰に支払うのか」「納品・検収の定義は何か」「輸送責任はいつ移るのか」…。
実はここでの誤解や曖昧さが、後の支払トラブルの根源になります。

2. 『請求書が2枚以上』という落とし穴

A社には仲介B社から、B社にはC社から、それぞれインボイス(納品書・請求書)が発行されます。
日本の慣習でいえば、「B社名義のインボイスに記載された条件でしか会計処理が認められない」ケースが多いのですが、現地サプライヤーC社との実態とズレが生じがちです。
このズレが、商品トラブルや品質異常時の「責任押し付け」に直結します。

3. サービス・アフターサポートの不在

納品時・納品後のサポートまでカバーしてくれるか否かは、実は非常に重要です。
仲介を通す場合、現地サプライヤーと日本企業が直接コミュニケーションを取りづらくなり、「初期不良や不具合が解決しない」「保証期間や対応範囲がうやむやになった」という事例が多発します。

4. 過剰な“安さ”や“即決”への誘惑

日本国内の価格感覚を基準に、海外で“異様に安い”提案が舞い込むことがあります。
しかし、この裏には品質低下・長納期リスク・税関での差し止めなどの“隠れコスト”が潜んでいることも。
仲介を経由した案件では特に、値段の安さにつられた痛手を被る事例があとを絶ちません。

現場に根差した支払未回収トラブル回避策7選

1. 信用調査は複数手段で定期的に行う

D&Bなどのグローバルな企業信用調査サービスはもちろん、できれば現地大使館の商務課や日本商工会議所ネットワーク、金融機関ルートなど、多面的な情報網を活用してください。
仲介業者に限定せず、その後ろにいるサプライヤーまで調査することが大切です。

2. 基本契約書・個別契約書を必ず交わす

契約不履行や責任回避は、曖昧な約束事から生じます。
可能であれば、日英の二ヶ国語で契約文書を作成。
支払・納品・責任移転の定義や、異常発生時の対応ルールを具体的に明記しておきましょう。
日本的な“口約束”や“FAX一枚”は海外では一切通用しません。

3. LC(信用状)やエスクロー、分割支払の活用

100%先払いは極力回避し、取引額やリスクに応じて信用状(L/C)やエスクローサービス、ミルストーン毎の分割支払など、回収リスクを軽減する支払手段を採用します。
小口取引であっても、初回はサンプル取引や現金引換え等、小さく始めることがお勧めです。

4. 数量・品質チェックは第三者検査も活用

納入物の現地検品や、第三者認証機関による出荷前検査を導入することで、「届いたときには全然違うモノだった」という悲劇を未然に防げます。
バイヤーの立場であれば、現地出張や外注検査サービスを積極的に活用しましょう。

5. 決済・送金プロセスの見える化

送金・決済の手順や資金フローを複数の担当者でチェックできる環境を整備してください。
特に経理・財務部門との密な連携、会計システムと国際取引管理システムでトレース可能な記録を残すことが、未回収時の対応力強化に直結します。

6. コミュニケーションロスを減らすためのIT活用

Eメールやチャットツールは当然ですが、ドキュメント共有や工程の見える化、リマインダーによる自動フォローなど、“SNSリテラシー”の推進とIT化推進は急務です。
定例のオンライン会議や記録の自動保存を習慣化することで、誤解の芽を事前に摘みます。

7. 最悪のリスクも想定した内部プロセス・保険の活用

どうしても未回収になった場合に、どこまで対応可能なのか。
社内では損害発生時のフローや、取引信用保険・PL保険の導入も検討すると、まさかの際のダメージを軽減できます。

サプライヤーも知っておきたい「バイヤーの心理」とは

サプライヤー側の担当者からすると、日本のバイヤーは「厳格で事務的」と映ることも多いですが、それは過去の痛い経験や=未回収トラブルを防ぎたい心理から来るものです。
契約内容の明確化や第三者検査への協力要請などに対し、「信用されてない?」と感じるよりも、「相互の信頼構築」「恒久的な商流確保の基盤」と前向きに考えていただくのが良いでしょう。

また、為替リスクや物流遅延、現地事情によるコスト増加など、バイヤーから繰り返し説明や証憑の提示を求められることもあると思います。
これらはすべて、経営的なガバナンスとコスト・リスク管理のために必要な手続きです。
サプライヤーの立場としては、納得性のある資料や迅速なコミュニケーションを積み重ねることで、次回以降の取引拡大や安定化につながります。

まとめ:アナログからデジタルへの“進化”がリスク削減への鍵

日本の製造業は、その職人気質や丁寧なものづくりの文化が欧米・アジアのバイヤーから高く評価されています。
反面、契約や情報管理、支払のプロセスだけは“昭和のアナログ”から脱皮できずにいた事例が多いのが実態です。

海外仲介を経由した商流が広がる中、支払未回収トラブルを回避するためには、“現場感覚”と“デジタル管理”の両面から攻めることが急務です。
簡単に言えば、「目で見える」「記録が残る」「第三者がチェックできる」ことが、あらゆるモノやカネの流れで担保されている取引ほど、未回収リスクが減ります。

今後もグローバルに広がる製造業の現場が一つでも多く、正しい情報と合理的な仕組みで、健全な取引に進化していくことを願っています。

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