投稿日:2025年11月12日

布地に白インクをのせる際の下地プリントと乾燥工程の最適化

布地に白インクをのせる際の下地プリントと乾燥工程の最適化

布地に白インクをプリントする工程は、衣料・雑貨のプリント工場にとって永遠の課題とも言える工程です。
なぜなら、白は他色に比べて生地との相性や下地の影響が大きく、発色や耐久性、作業効率にも直結するからです。

この記事では、特に「下地プリント」と「乾燥工程」に着目し、製造現場での実践例や、アナログから脱却した新たな工夫、今後のトレンドについて解説します。
製造業に従事されている現場の方のみならず、これからバイヤーを目指す方、またはサプライヤーの視点でバイヤーの思考を理解したい方にも役立つ内容となっています。

白インクプリントの基礎知識と課題

なぜ白インクは難しいのか?

一般的に布へのプリントはシルクスクリーン、インクジェットプリント、転写などの方法があります。
中でも白インクのプリントは、これらいずれの方法でも難易度が高いです。
その理由は、白インクは顔料成分が多く不透明度が高いため、粘度調整やインク供給、目詰まり対策が不可欠だからです。

さらに、例えばカラーTシャツや濃色布地へのプリントでは、白インクの鮮やかな発色が要求されるため、直打ちではくすみや下地影響が出やすくなります。
この問題を解消するのが下地プリントの工程です。

現場でよくあるトラブル例

・白インクが生地に沈み込んでしまい、本来の白が出ない
・インクがにじんで柄がぼやける
・乾燥が不十分でべたつき、次工程や製品に悪影響が出る
・生産効率と品質が両立できない

このような課題は、設備の自動化・デジタル化が進んだ現代工場でも完全には解消できていません。
だからこそ、多くの現場で人の経験値やアナログ的な工夫が生きているのです。

下地プリントの考え方と最適化のポイント

下地プリントとは何か

下地プリントとは、本プリントの前に生地表面に白もしくは透明なインク層を設ける作業を指します。
この下地層は、インクが生地に沈み込んだり、色布の影響を受けて発色が悪くなるのを防ぎます。
特に濃色のコットンやポリエステル生地では下地プリントが必須になります。

下地プリントの最適化方法

最適な下地プリントには以下のポイントがあります。

・下地インクの選定
 生地との密着性や吸収性、耐洗濯性に合ったインクを使う必要があります。
特に昇華防止や黄変防止を意識する場合は専用の下地材を利用します。

・塗布量とインク層厚の最適化
 厚くしすぎては表面が硬くなりクラック(割れ)の原因になり、薄いと白が生きません。
現場では生地ごとにテストを重ね、最適なメッシュやスキージープレッシャーを設定します。

・一度塗り・二度塗りの使い分け
 発色重視のプリントでは下地を二度または三度塗る工程も珍しくありません。
一方で、大量生産現場では一度塗りで済ませ、時間短縮とコスト低減を図るケースもあります。

・温度・湿度管理
 特に夏場や梅雨時には、下地インクが乾きにくく、生地が湿気を含んでいると不良につながりやすいため、生産現場の環境管理も大切です。

現場実践例:アナログの知恵とDXの融合

DX(デジタル・トランスフォーメーション)時代の今でも、現場で培われてきた「職人勘」が威力を発揮しています。

たとえば、「今日の布は少し毛羽立っているから下地インクをやや多めに」など、データ化しきれない変動要素を見抜くベテランの目。
近年ではカメラやセンサーを使った判定装置と、エキスパートの経験知識をAIが学習し、さらなる最適化に挑んでいる工場も増えています。

乾燥工程の最適化と自動化の最新動向

乾燥が果たす重要な役割

下地や白インクのプリントは、「乾燥」が品質・効率の要です。
十分な乾燥がされていないと、上に重ねるインクと化学反応が起き色ブレや剥がれの原因となります。
また不十分な乾燥は、製品のべたつき、移染(色移り)、品質劣化につながります。

各種乾燥方式の比較

工場でよく用いられる乾燥方式は以下です。

・熱風乾燥(ホットエアーオーブン)
 大量生産現場向け。布をベルトコンベアで流しながら短時間に乾燥させます。

・近赤外線(NIR)・遠赤外線ヒーター
 生地厚やインク量が多い場合、深部までしっかり乾燥でき即応性に優れます。

・UV硬化
 UVインクの場合は必須。即硬化するが、熱ダメージや黄変が課題となることも。

・自然乾燥(エアドライ)
 小型ロットや特殊生地対応用。ただし生産効率は大幅に落ちます。

乾燥トラブルを防ぐための現場改善

以下のような点が重要です。

・温度ムラ、風量ムラを排除する
 古い乾燥装置は換気・温度調整部分が不安定な場合があります。
部分的な温度不足は乾燥ムラを招くため、定期的なメンテナンスや改良が欠かせません。

・乾燥条件の「標準化」
 天候や生地、インクの組み合わせごとに毎回調整していては歩留まりもスピードも落ちてしまいます。
標準作業手順書(SOP)の作成やIoT連携装置導入で、ミスの少ないライン作りが進んでいます。

・DX活用例
 温湿度、インク残留率、ベルト速度などをセンサーで自動モニタリングし、トレーサビリティや異常検知、AIによる自動補正機能を付加する例が先進工場では広がっています。

バイヤー・サプライヤー目線で求められる生産管理・品質保証

バイヤー視点で大事なポイント
 ・安定した仕上がりと納期遵守
 ・発色、肌ざわりなど仕上がり品質の可視化
 ・ロットごとの品質差異や異常発生時のトレーサビリティ

サプライヤーとして意識すること
 ・原料ロット、生地ロット、工程条件などデータ蓄積と管理
 ・工程標準化とクレーム未然防止のための自主点検
 ・工程改善・イノベーションのアピール(コスト・納期短縮事例等)

製造業がアナログ体質からDX時代への過渡期にあるからこそ、人とデジタル技術両面から“伝わる品質保証”が強力な武器になります。

今後の展望と現場が目指す未来像

布地のプリントは長年アナログとされてきた分野ですが、昨今の労務費高騰、ロット多様化、脱炭素化など業界の大変革期に突入しています。

ポイントは「現場の経験知をデジタル技術に融合させること」です。
例えば品質異常の発見には、センサーや画像解析装置だけでなく、「作業者の気付き」も結びつけていく必要があります。

高品質な白インクプリントのための下地工程や乾燥工程最適化は、現場の地道な改善と新技術の導入が車の両輪です。
ぜひ工場内で小さな工夫を積み上げ、現場からのノウハウ発信や情報共有にも目を向けてみてください。
バイヤーやサプライヤーが相互にエンジニアリング知識を理解し合うことで、より質の高い製品づくりが可能となります。

製造業の未来は、現場の新たな地平線の上に築かれています。
この領域で皆さまと知見を深め、生産性革命を実現していきましょう。

You cannot copy content of this page