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投稿日:2026年1月30日

EN 10204のミルシート区分を正しく理解する

はじめに:製造業現場におけるミルシートの重要性

製造業において「ミルシート」という言葉ほど、購買・品質管理・生産管理の現場で頻繁に聞くものはありません。

とりわけ、鉄鋼や非鉄金属など素材メーカーとの取引では、このミルシートが部品や製品の「身分証明書」として扱われることが多いです。

特に近年は、グローバルなサプライチェーンが高度化・複雑化し、コンプライアンス意識も高まる中で、仕様や材質、製造履歴が明確にトレースできるかどうかが、取引の前提条件となっています。

その中でも、ヨーロッパや国際ビジネスで基準となっている、EN 10204 のミルシート(鋼材検査証明書)の区分を正確に理解することは、バイヤーやサプライヤーのみならず、現場全体の品質管理・信頼性確保のためにも必要不可欠です。

この記事では、長年現場で培った知見と今もなお「昭和」が色濃く残る職人気質の産業現場目線を交えて、EN 10204のミルシート区分を深掘りし、購買現場の最新動向・実践活用法から本質的な価値までを徹底解説します。

EN 10204とは何か? ― 現場目線で捉える国際標準

EN 10204とは、ヨーロッパ規格(EN)の一つで、「金属製品の検査証明書」に関する規格です。

主に材料証明書(いわゆるミルシート)の型式や内容、発行方法の信頼性について国際的な統一基準を規定しています。

製造業、とりわけ金属を扱う現場では、アメリカのASTMや日本のJISと並んで、知っておくべき“世界標準”の一つです。

過去、日本では「メーカー発行のミルシートが必須」という慣習がありました。

しかし、グローバル調達・アウトソーシングの流れが加速する中、「証明のガバナンスがどこまで担保されているのか?」が、かつて以上に重要になっています。

現場では誤った予備知識や思い込みで、ミルシートの区分を混同してトラブルになることが少なくありません。

EN 10204を「何となく見たことがある用語」で済ませず、国際取引時やサプライヤー監査・監査対応時など、実務に役立つ形で理解することが今の時代には求められています。

EN10204ミルシートの4区分―現場が知っておくべき「違い」

EN 10204は主に以下の4つの区分に分かれています。

それぞれ内容と発行プロセスの信頼性が異なるため、必ず正しく選択しなければなりません。

2.1形式:出荷証明書(Declaration of Compliance)

最も基本的な区分が「2.1形式」です。

これはメーカーが「納入品が注文仕様に適合している」ことを一方的に宣言(自己宣言)するスタイルで、基本的には実測や試験結果のデータ記載はありません。

たとえるなら、「私はこの商品が注文通りだと信じています」といった誓約書のようなものです。

管理コストが低く、一部の部品や用途では容認されます。

しかし、重要保安部品やトレーサビリティが重視される領域では不十分です。

2.2形式:試験結果を含む出荷証明書(Test Report)

2.1に加え、製造履歴や材料試験の代表値など、何らかのデータ(一般値または代表値)を記載した証明書です。

ただし、データはそのロットの代表値や類似品から取られる場合が多く、注文単位ごとの実測値でない場合があります。

現場では「カタログスペックの裏付け」程度に使われることが多いですが、「ロットごとの個別管理」が必要な用途には適していません。

日本でも“参考値”としてのミルシートに近いイメージですが、本当に欲しいのはこの上のクラスです。

3.1形式:製造者発行による検査証明書(Inspection Certificate 3.1)

ここからが「本格的な」ミルシートの世界です。

注文されたロットごとに、メーカー(製造者)が試験・検査を実施し、その実測値・合格を個別に記録して証明書として発行します。

発行タイミングも発注に基づき管理され、その都度、責任者(製造者側)が署名・押印します。

日本で言う正式な「材質証明書」「性能証明書」「ロット別ミルシート」に該当します。

法的責任やトレーサビリティ、事故発生時の原因追及のためには、もっとも求められる区分です。

グローバル調達や自動車・エネルギー・インフラなどの「命に関わる」部品ではこの3.1形式以上が必須条件になります。

3.2形式:第三者検査機関等による検査証明書(Inspection Certificate 3.2)

最高レベルの信頼性を担保する証明書です。

特徴は、製造者だけでなく、顧客指定の第三者(独立した検査機関や顧客代表者)が立会い・検証した試験結果・評定が添付される点です。

時には「官庁(国)立会い」や「第三者機関(たとえばSGSやLloyd’s Register)」が現地に乗り込むこともあります。

つまり「誰がみてもインチキできない、最大限の検証が必要な用途」であり、コストも手間も段違いにかかります。

原発・航空宇宙・軍需、国家基盤インフラなどで要求されるケースが主です。

アナログ現場が陥る「ミルシート誤解」あるある

昭和から脈々と続く日本の製造現場は、アナログな良き伝統と共に、“資料主義”という負の遺産も根強く残っています。

そのため、ミルシートにまつわる「思い込み」「勘違い」「形式主義」がしばしばトラブルの温床になるのです。

例えば……

  • 「とりあえずミルシートくれ」→区分の指定、試験の範囲が曖昧で要件未満の証明書が来た
  • 「どこのフォーマットでも同じ」→JISやASTM、EN 10204の違いを把握せず海外で通用せず
  • 「ペーパーレス化したのに画像のみ保存」→電子証明アクセプタンスルールを理解せず法的不備に
  • 「伝統のはんこが重要」→国際基準では意味のない押印に拘り過ぎて不正温床化

こうした「習慣と最新ルールのズレ」が現場のリスクを高めています。

現代の調達・品質保証では、「何をどの根拠で証明するのか」を明確化した上で、最も適切な区分の証明書を要求・保存しなければなりません。

ミルシート発行を巡る業界動向―今後の実務の「当たり前」

なぜ「本物」を見極める必要が高まるのか?

近年、グローバルな流通事情、材料供給網の複雑化、IT化の進展により、「書類による不正・改ざん」が世界的に問題視されるようになりました。

特に、中国や新興国を中心に「ニセ証明書問題」や「ダミーデータ流用」のリスクが顕在化しています。

これを防ぐためには、証明書の原本(紙・PDF・電子署名付ファイル含む)の信ぴょう性チェック、発行管理プロセスの厳格な運用が必須です。

欧州では2020年代以降、デジタル証明書(Blockchainへの記録等)の導入も進みつつあります。

日本国内の現場においても、「紙一枚」「押印があればよし」では通用しなくなる世界がすぐそこまで来ています。

サプライヤー、バイヤー双方で変わる意識―技能よりもファクトベース重視へ

従来は現場経験や「信頼関係」に頼った調達・購買システムこそが日本的な強みでした。

しかし、経営ガバナンス強化や製品事故の社会的責任問題を背景に「仕組みで守る」「ファクトで残す」にシフトしています。

バイヤー側も「仕入先から正しい区分で証明書が提出できるか」をサプライヤー選定のファクターにしています。

一方で、サプライヤー側は「どの区分まで発行可能か」「試験コスト・対応体制」も含めて事前に整理し、誤った対応での納入トラブルを防ぐ仕組みづくりが急務となっています。

まとめ:EN 10204ミルシート区分の「正しい運用」が製造業を変える

EN 10204のミルシート区分は、単なる“書類の違い”ではありません。

それは現場で求められる品質・トレーサビリティ・コンプライアンスの水準を「見える化」し、サプライヤーとバイヤー、さらには最終顧客との信頼構築の基盤そのものなのです。

現場でよくある「証明書依存主義」「区分の思い込み」に陥ることなく、時代の流れに適応した「適正な区分選定」と「正確な証明書の管理・運用」を、今一度肝に銘じておく必要があります。

製造業が新たな地平を切り拓くために、今こそ、形式よりも本質に光を当て、現場・マネジメント双方が共通言語で語り合い、リスクゼロ・品質最大化への一歩を踏み出しましょう。

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