投稿日:2025年11月1日

アパレル業界で使われる生地の“目付”と“番手”を理解する

アパレル業界における「目付」と「番手」の重要性

アパレル業界でよく耳にする「目付」と「番手」は、生地の品質や特徴を理解する上で欠かせない専門用語です。

これらの知識は、バイヤー、サプライヤー、生産管理、そして現場オペレーターにとっても、円滑な業務遂行に直結します。

特に、昭和期から日本のものづくりを支えてきたアナログ的な現場においても、「目付」と「番手」は今なお変わらず使われる、いわば業界の共通言語です。

本記事では、現場目線で分かりやすく解説しつつ、最新の動向や国際標準化の波もふまえて、製造業に従事するすべての方に“使える知識”として浸透させていきます。

目付とは何か?現場で求められる意味と重要性

目付の定義・単位・計測方法

「目付」とは、生地の単位面積あたりの重量のことを指します。

典型的には、g/m²(グラム毎平方メートル)で表記します。

古くからアナログ的に「打ち込み本数(経糸・緯糸)」と「糸の太さ」で語られることが多かったため、現場ではミリ単位や尺貫法(例えばオンス表記)で呼ばれることも残存しています。

目付は、生地の厚みや風合い、耐久性、強度と密接に関わるため、製品企画の初期段階から最終検品まで随所で管理されます。

実際の工場現場でどう計測されるか

実際の現場では、カットサンプル(通常10cm角ないし30cm角)をデジタル計量器で測定します。

新しい機械化ラインでは自動計測も進んでいますが、手作業でのサンプル計測をルール化している工場も多いです。

特に受託生産においては、目付のばらつきを抑えることが品質トラブル防止の重要なポイントです。

雑な扱いをすれば糸のほつれや傷による重量変動も起こりやすく、プロの工場では「使い切り計量サンプル」の標準運用を必ず徹底しているのです。

目付の違いで生まれるアパレル商品の特徴

目付が軽ければシャツやブラウスに、重ければアウターやバッグ用など、用途が大きく異なります。

同じ見た目でも、微妙な目付の違いが透け感やシワになりやすさ、さらには着用中の快適さや機能居に直結します。

「3ozデニム」と「14ozデニム」ではまったく別物と考えて良いでしょう。

バイヤー目線でも、このわずかな違いが不良クレームや返品率の差として跳ね返ってきます。

つまり、生地選定の時点で目付をしっかり把握し、最適な用途に落とし込むことこそ、アパレルバイヤー・生産管理者の最大の腕の見せどころなのです。

番手の基礎知識と業界での実践的な使い方

番手とは?意味と糸の太さの関係

番手とは、糸の太さや繊度を現す指標です。

日本では「綿番手」(Ne)、「毛番手」(Nm)、デニール(D)・デシテックス(dtex)など素材ごとに使い分けます。

たとえば「40番手」といえば、「1ポンド(453.6g)の糸の長さが840ヤード(約768m)」で基準値が決まっています。

数字が大きいほど細い糸となるため、同じ生地を織るにも番手選びでまったく印象が変わります。

番手と目付の組み合わせで狙いどおりの生地設計が実現

たとえば、薄手で高密度に織ることで軽くてしなやかなシャツ地ができます。

一方で、粗めの組織で太番手を使えば、しっかりしたキャンバス地やデニム生地になります。

「どの太さの糸を何本使うか」=「番手×打ち込み本数」が目付と密接にリンクし、究極的な生地スペックとなるのです。

さらに、ポリエステル・ナイロンなど合成繊維の場合は国際単位系への移行が進み、番手換算の混乱も多発しています。

このため、バイヤー・サプライヤー双方が「現場で扱う番手表記」と「国際標準値」とを互いにすり合わせを行う必要が増しています。

現場目線で語る、「目付」と「番手」ミスによるトラブル事例

1枚の生地サンプルに油断しがちなバイヤーの盲点

実際のトラブル事例として、商談時のサンプルが絶妙な風合いだったのに、量産品になると「重たい」「厚すぎる」「透ける!」などの不満が噴出するケースは頻出です。

これは、発注側が生地サンプルの目付・番手を正確に把握せず、表面上の感触だけで判断してしまったために起こります。

昭和の時代は、この失敗が「職人の勘」や現場力でなんとかリカバーできたものの、サプライチェーンが国際化した今では容易にリカバリーできなくなっています。

番手の計測ミスによる納期遅延・コスト増の実態

サプライヤー側で「指定番手」を間違えて手配し、数量が揃わず追加手配になったり、生地の織り直しが発生したりと工場現場では多額のロスにつながることもあります。

また、輸出向け商品の場合は、国際表記の違いから「目付」「番手」変換の漏れが起こる危険性も増しています。

グローバル調達では、現地サプライヤーと密接な連携をとり、ISOなどの標準仕様書を作り込むなどのリスクヘッジが不可欠です。

アナログ現場でも必須スキル。バイヤーとサプライヤーの理想的な連携法

「仕様書」の標準化と第三者検査で安心を担保

アナログ現場主導の日本のものづくりにおいても、生地スペックの誤差を防ぐためには「仕様書」の標準化がカギです。

重量サンプルや番手サンプルを調達時点で資料添付し、さらに第三者検査など客観的な品質監査体制が確立されていれば、事故やクレームの大半は未然に防げます。

現場では、「きめ細やかな受渡しチェック」と「現実的な許容誤差」を共有する“すり合わせ力”が不可欠です。

打ち込み本数×番手×目付データベースの重要性

中堅以上の現場では、打ち込み本数や過去実績による「生地スペックDB(データベース)」が活用されています。

こうしたデータベースを活用することで、「再現性ある生地開発」「迅速なトラブルシュート」が実現します。

手作業中心のアナログ現場でも、エクセルベースでのデータ管理やタブレット入力の導入が進み、情報共有の質が日々向上しています。

グローバル時代の目付・番手のトレンド:自動化とデジタル化の行方

AI画像測定や自動計量システムの現状

最新の工場自動化(FA)では、目付の自動連続測定システムや、AI画像解析による打ち込み本数のカウントも現実味を帯びてきました。

これにより、人為的ミスや時間ロスが劇的に減少し、結果としてサプライチェーン全体の品質レベル向上やコストダウンにつながっています。

一方、現場担当者のスキルと判断力こそが「最後の砦」であることも変わりません。

どんなにデジタル化が進もうとも、バイヤーとサプライヤーがお互いに「目付」「番手」を理解し合い、現実的な視点で仕様を詰めるプロセスは今後も不可欠です。

まとめ:目付と番手を理解することは、“強いものづくり”への第一歩

製造業のアパレルバイヤー、サプライヤー、現場オペレーターにとって、「目付」と「番手」は業界共通の“言語”であり、お互いを信頼しあうための“約束事”です。

これを正しく把握し、適切に仕様を詰めることで、無駄なトラブルを防ぎ、高品質化や納期遵守、そしてサステナビリティなものづくりにも寄与します。

昭和の現場力と新しいデジタル技術、その両輪でさらなる製造業進化をめざすためにも、「目付」と「番手」への理解を今一度深めていきましょう。

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