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JIS B 0401の公差規格を正しく理解する|設計と加工のズレを防ぐ方法

目次
はじめに|JIS B 0401とは何か?
JIS B 0401(じす・びー・ぜろよんぜろいち)は、日本工業規格(現・日本産業規格)における、寸法公差に関する重要な規格です。
多くの機械部品や現場で使われている部材の設計・加工に深く関わる基礎の規格ですが、意外とその本質や正しい活用方法を理解できていない現場担当者も少なくありません。
とくに製造現場では「図面通り作りました」「でも組み立ててみたら、上手く嵌らない…」というミスが昭和の時代から現代まで繰り返されています。
JIS B 0401の知識があやふやなまま、“なんとなく経験値”でやり過ごそうとすると、個人の勘や属人化に頼る品質保証体系から抜け出せなくなります。
この記事では20年以上にわたり現場・管理職で積み上げた実務ノウハウと共に、JIS B 0401の公差規格を基礎から応用まで、実践的に解説します。
公差規格の基礎と必要性|なぜ公差を理解するべきか
公差(こうさ)とは、部品の寸法や形状、位置などに許される誤差の範囲のことです。
製造現場では100%期待通りの寸法で製造することはほぼ不可能です。
むしろ、必ず誤差が発生することを前提に、どこまでの誤差なら許容できるか?とあらかじめ“許容幅”を決める、それが公差設定の本質です。
設計者にとっても加工現場にとっても、公差を正しく設定・理解しなければ、以下のような問題が頻発します。
- 部品がうまく組み合わない(嵌合不良)
- 無駄に厳しい公差でコスト増加
- 検査・品質トラブルの温床
- 組立工程での手直しやリワーク増加
つまり、公差管理は「品質」「コスト」「納期」――すべてのQCDに直結する極めて重要なスキルです。
JIS B 0401の特徴|どんな規格、どこがポイント?
JIS B 0401は「許容差及びはめあい−基本」と題され、主に金属加工部品の穴・軸のはめあいや寸法許容差などを体系的に定めています。
ポイントは次の3点です。
1. はめあいと公差等級(IT:International Tolerance)
製品同士の嵌合(例えば、シャフトと穴)をする際の隙間(クリアランス)やきつさ(インターフェアランス)を、IT等級(IT7、IT8など)という形で段階的に管理します。
2. 寸法と許容差の表記方法(ホールベーシス or シャフトベーシス)
同じ直径20mmの穴でも、公差域が違えば“実際の大きさ”は異なります。
JIS B 0401では穴基準(H7)と軸基準(h6)という呼び方で、製図や指示方法が細かく決められています。
3. 全体的な互換性の確保
部品同士が「図面通り」にできていれば、“どのメーカーが作ってもきちんと嵌まる”国際互換性を担保できるのがJIS B 0401の存在価値です。
JIS B 0401の読み解き方|実務で役立つ使い方
図面に記載される「φ20 H7」や「φ35 g6」。
この表記の意味は意外と理解が曖昧なエンジニアも多いです。
穴と軸の記号の覚え方・考え方
- “H”は穴基準。上限寸法が母寸法、下限寸法がそれより小さい値。
- “h”は軸基準。下限寸法が母寸法、上限寸法がそれより大きい値。
- “7”“6”はIT等級。数字が小さいほど許容幅(バラつき)が狭くなる。
例えば「φ20 H7」なら、直径20mmの穴の寸法は、上限が 20.000mm、下限が19.962mm(IT7の場合)。
この範囲ならOK、これが合格範囲=公差です。
実戦で役立つ公差表の見方
JIS規格には公差表が掲載されています。
20mmぐらいの部品ならIT6~IT10の等級でどの程度の許容値なのか?
毎回“公差表”に照らし合わせて確認するクセが非常に大事です。
経験豊かな現場担当者ほど、公差表はよく使いますし、Excel化した公差表を手元に持っていたりします。
目安を単純暗記せず、“なぜこの公差幅なのか?”“設計意図は?”を必ず振り返るクセをつけましょう。
よくある現場トラブル|昭和流アナログ現場で何が起きているか
昭和時代からの“なんとなく経験”や“代々受け継ぐ手作業ノウハウだけ”で公差管理に接している現場では、実際には以下のような課題があります。
設計-製造のコミュニケーションロス
設計担当が「昔からこうなのでH7で」。
製造現場が「この材料じゃ、この公差幅は加工ムリ」。
このままでは、図面通りつくっても不良品やコスト増につながります。
公差の“過剰品質”によるコスト増
「公差を厳しくすると品質は上がる」と誤解されがちです。
現実には、過度な公差管理は工数・工賃・材料費・検査費…あらゆるコスト激増の要因です。
材料や工具、加工設備の限界、公差によるコストインパクトまで深く理解して“使いこなす視点”が求められます。
属人的なばらつき増大、ペーパーレス化の壁
紙の図面、手入力の検査記録、口頭伝承のローカルルール…。
この“昭和アナログ”のままだと品質不良の温床になりやすく、標準化やDX化が進みません。
設計と加工のズレを防ぐ方法|OJTで伝えたい実践ポイント
では、JIS B 0401を現場実務に落とし込む際、どんな工夫やマインドチェンジが必要でしょうか。
設計編:なぜその公差か「設計意図」を伝える
設計が図面に「H7」や「g6」と書くとき、必ず
- なぜこの嵌合が必要なのか?
- この許容値を超えた時にどうなるか?
という「設計意図」まで、現場と共有する場を持つことが大事です。
形だけ“マニュアル準拠”ではなく、勘所と狙いを現場に伝えることで、加工現場は「ここは絶対外せない」という“肝”を感覚的にも理解しやすくなります。
製造編:デジタルツール × 現場力でムダ低減
近年は測定器などがIoT化・デジタル連携する時代です。
現場では
- 測定結果の自動記録・トレーサビリティ化
- 社内での見える化・リアルタイム共有
- “ヒューマンエラー”検知や自動通知機能
など、ITツールとの連携が業務効率化のカギになります。
しかし、最終的に「この値はほんとうに現場で実現可能か」「現物のばらつきはどうか」は、熟練者の現場力が不可欠です。
バイヤー・サプライヤー編:公差を使った合理的な価格交渉
バイヤー側は「この部品、なぜこんな高いの?」と感じるケースが多々あります。
その多くは「設計で無意味に公差を厳しくしている」「設備能力を無視して発注している」ことが背景です。
サプライヤーからバイヤーへ、公差根拠や加工難度を明示しながら
- もっと緩い公差・標準規格で代用できませんか?
- 価格と品質のバランス提案
といった“理由ある交渉”を仕掛けることで、WinWinのバリューチェーンが構築できます。
最新業界動向と今後の公差管理|デジタル化・グローバル対応
世界の製造拠点がアジア、欧米各国と拡大する今、国内JISだけでなく国際標準(ISO)との互換性も強く求められています。
海外の工場と部品調達ネットワークが普及した現代では
- JIS/ISO公差の相互変換
- デジタル図面(DX/CAD/CAM)での公差自動判別
- リモート管理・IoT活用による品質トラブル予防
など、公差情報とデジタルデータの“ひも付け管理”が業界標準化しつつあります。
“昭和的な紙図面・属人知識”から、AIやIoTを使った「脱属人化・標準化」へCAE(シミュレーション)やクラウド型品質管理(QMS)への進化も注目されています。
まとめ|JIS B 0401の理解は、現場力・調達力・品質力の三位一体
JIS B 0401の公差規格を正しく理解し、現場・設計・調達それぞれの立場で合理的に活用すること。
これは品質だけでなくコスト競争力・調達リスク・現場の安心作業すべてに直結します。
下請け・協力会社だから、設計部門だから、バイヤーだから――と自分の立ち位置だけでなく「公差とはQCDを制するための共通言語だ」という意識が重要です。
最後に、現場リーダー・調達バイヤーを目指す方へ。
今日から「なぜこの公差か?」を問い続け、設計・現場・サプライヤーの壁を超えて“ものづくり力”をともに高めていきましょう。
この知識と実践ノウハウこそが、日本の製造業を次の時代へ牽引する礎となります。