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海上保険の免責事項を理解して水濡れや盗難トラブルに備える契約の工夫

目次
はじめに:グローバル調達時代における海上保険の重要性
日本の製造業は長きにわたり、安定した品質と納期遵守を強みとして世界市場で存在感を発揮してきました。
しかし、サプライチェーンのグローバル化が進み、調達品の輸送距離が長大化した現代では、もはや“運送リスク”は無視できない時代となっています。
特に、海上輸送は大量輸送を低コストで実現できるメリットがある反面、天候や人的要因による「水濡れ」「盗難」「船舶事故」といったリスクも常に付きまといます。
そこで不可欠となるのが、適切な「海上保険」の加入と、その契約内容への深い理解です。
本記事では、製造業・バイヤー目線で実践的な海上保険対策の知見をシェアします。
昭和の慣習にいまだ影響されがちな業界現場だからこそ求められる、ひと工夫を余すところなく解説します。
免責事項の基礎知識:その“落とし穴”を見逃すな
免責事項とは何か?
保険全般において「免責事項」とは、保険契約者に損害が生じても、保険会社が保険金を支払わないケース(=例外)を規定したものです。
つまり、万全と思って保険に加入しても、免責事項に該当するトラブルはカバー外となるため、被害額は自己負担になるリスクが生まれます。
海上保険特有の代表的な免責事由
海上保険(貨物海上保険)の典型的な免責としては以下のような項目が挙げられます。
- 通常の浸水や湿気による水濡れ(構造的な要因、梱包不良など)
- 貨物の自然的消耗や腐敗、変質
- 戦争・ストライキ・テロ等による損害
- 保険契約者または被保険者による重過失、故意の行為
- 貨物固有の性質(自然発火や自己腐敗など)
- 海賊・盗難(一部プランを除く)
このように一見日常的なトラブルや、運送・梱包ミスに起因する事故の多くが、免責となる点に注意が必要です。
現場で意外に多い“水濡れ事故”と“盗難”の実態
水濡れの構造的リスク:ベテラン工場長の体験談
20年以上に渡る現場経験から言えば、最も頻発し、かつ泣きを見るのが「水濡れ事故」でしょう。
例えば、コンテナの床からの浸水や、換気孔からの雨水混入、貨物の積載積崩れによる水濡れなどは、たとえ多少の漏水でも精密機器・電子部品・紙製品などは致命傷となります。
しかし、多くの貨物海上保険では「通常の水濡れ」は免責扱いとなることが多く、その場合、業者間で責任のなすり合いが発生、損失を被ることになります。
盗難リスクの現場感覚:サプライヤーの苦い経験
また、近年増えてきた「盗難」トラブル、とくに東南アジア・アフリカ方面の輸送では要注意です。
私のかつての職場でも、コンテナ内から一部だけ貨物を“抜き取り”されるケースや、通関前の倉庫で積荷ごと消失したことがありました。
一般的な「オールリスク条件」であっても、特定地域での盗難や、陸上部分(港到着後のトラック輸送等)が免責扱いになる契約が少なくありません。
失敗しないための契約の工夫とチェックポイント
インコタームズと海上保険責任範囲の把握
まず大前提として、輸出入取引の国際規則(インコタームズ2020等)で、「保険加入責任」がどちら(売り手 or 買い手)になるのか整理しましょう。
FOBでは買い手、CIFでは売り手が基本的に保険手配を行うため、条件ごとの“抜け”を防ぐ確認が重要です。
オールリスク本当に大丈夫? 保障内容の見直し
多くの物流現場で「とりあえずオールリスクで」と言いがちですが、実際は免責条項の範囲が広く、想定外の損失が出ることも珍しくありません。
・契約条件の記載内容(何が免責か、明細を洗い出す)
・追加でカバー可能な特約(ex:水濡れ特約、盗難特約等)の有無や費用
・特定貨物やルート・仕向地ならではの追加リスク
これらを契約前にベンダー、保険代理店に徹底的に問い合わせ、詳細な料率や免責内容を必ず書面で残しておきましょう。
梱包・積載の工夫:アナログ現場力で事故を未然防止
現場では、いくら保険加入していても“事故=納期遅延・品質劣化”を意味するため、そもそもの事故防止が賢明です。
・水濡れしやすい貨物には防水ラッピングや、ダブルパレット積みによる床上げ
・盗難対策としてのシール・封印の二重化、GPS発信機の利用
・積載リストと写真による記録保全、搬出搬入時のダブルチェック体制
これら現場的なアナログ管理は、多層防御策として極めて有効であり、いまだに“ヒトの目”による確認が最終的な保険となります。
バイヤー・調達担当が押さえたい実践的ポイント
保険加入タイミングと通知義務の徹底
意外と見落としがちなのが「輸出入手配後、実際の船積み時」にすぐ保険手配・通知を行うことです。
この作業が遅れると、事故発生タイミングによっては保険適用外となります。
特に、見積取得段階でベンダー→バイヤー間の責任範囲や情報共有フローを明確化しておき、トラブル時には「報告→現場写真→保険会社通知」といった手続きを迅速に回す仕組みが重要です。
サプライヤーからの証明入手も忘れずに
本当に保険に加入しているか、証券番号や契約写しを提出してもらいましょう。
代理店レベルの口頭保証では、いざという時に“証明不足”とみなされ補償が受けられないケースも散見されます。
業界のトレンドと今後の動向:デジタル化で何が変わる?
デジタル証券・損害報告のスマート化
近年、海上保険でもデジタル証券発行や、現場からスマホで損害報告と写真送付ができる仕組みが浸透しつつあります。
紙ベースの煩雑な書面や郵送依存から離れたことで、事故発生時の「初期対応」スピードが格段に向上しました。
AI活用によるリスク要因分析
また、大手損害保険会社ではAIを活用したルート別リスク分析や、AIチャットボットでの即時相談対応など、“予防的保険”へと進化しています。
今後は、現場側でもこれらデジタルツールを積極的に活用し、アナログ的ノウハウとのハイブリッド運用が求められます。
まとめ:アナログ業界こそ“自ら守る”プロ意識が未来を拓く
製造業の現場では、「昔からこうだった」という慣習や、“保険=掛けていれば大丈夫”という思い込みが根深く残っています。
しかし、グローバルサプライチェーンを取り巻くトラブル事例は年々複雑化し、その度に免責条項の落とし穴が露呈するようになりました。
現場での水濡れや盗難といったリスクには、手前味噌ながら「アナログ+デジタル+契約見直し」の三位一体で挑む必要があります。
そして、保険契約そのものの中身理解と、現場目線の仕組み強化によって、泣き寝入りやトラブルを未然に防ぐリーダーシップが業界の未来を支えます。
これからの b>製造業バイヤーは、「守りの交渉力」と「徹底した現場主義」で、昭和的な慣習に埋没せず、一歩先を行くリスクマネジメントを実践していきましょう。
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