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鉄・銅・真鍮を素材としたD2Cブランドを構築するための素材特性理解と組み合わせ法

目次
はじめに:なぜ“鉄・銅・真鍮”なのか? D2C時代の素材ビジネス
D2C(Direct to Consumer)ブランドが世界的に広まり、消費者の「物語」や「素材」への関心が高まっています。
とくに日本のものづくり現場を知る者として実感するのは、昭和以来のアナログな技の蓄積が今ここにきて再評価されているということです。
鉄、銅、真鍮――この3つの素材は日本の製造業において伝統と革新が同居する基幹素材であり、D2Cブランドの「素材発信」を戦略的に進めるうえでも普遍的な魅力を持っています。
今回は製造現場のリアルな視点から、それぞれの素材特性、および組み合わせの妙、D2Cブランド立ち上げの勘所について、具体策とともに解説します。
鉄・銅・真鍮――素材ごとの本質的な特徴を理解する
鉄:剛性・加工性・経年変化の美しさ
鉄は「重い」「丈夫」「錆びる」といったイメージが持たれがちですが、それこそがブランド文脈の起点です。
鉄最大の長所は圧倒的な剛性と耐久性、そして時を経た変化の魅力にあります。
たとえばヘアライン仕上げや焼き付け塗装などで質感の違いをアピールでき、炭素量による合金鋼もバラエティ豊かに選択できます。
また、鉄の「重さ」は決して短所ではありません。
照明器具や家具の脚部など、安定感がブランドイメージに直結するアイテムにはむしろ価値となります。
D2Cブランドとして語りやすい「エイジング(経年変化)」――「時を刻む味わい」をストーリーとして訴求できる点も忘れてはいけません。
銅:抗菌性・導電性・温かみのある色彩
銅は高い抗菌特性と熱伝導性が最大の武器です。
冷却部品や調理器具、さらには水回りで重宝されてきましたが、近年は「手を触れる場所」でその特長が再発見されています。
コロナ禍以降、実際に銅製品の需要が見直されているのも興味深いところです。
また、経年による「緑青(ろくしょう)」変色――これは唯一無二のエイジングとしてブランド価値になります。
色・風合いが徐々に変化し自然の彫刻となる銅の特性は、手仕事への回帰を志向する現代消費者と相性抜群です。
真鍮:加工性・装飾性・独特の品格
真鍮は銅と亜鉛の合金であり、「銅よりも硬く、鉄よりも柔らかい」という中庸性に加え優れた加工性を持ちます。
光沢ある黄金色が醸し出すクラシカルな雰囲気、経年で徐々に落ち着いたアンティークな表情へ変化する性能は、誰もが惹かれるポイント。
また、薄板成形や細かな装飾が得意な素材なので、D2Cブランドで個性的な形状や緻密なデザインを打ち出せるのも長所となります。
真鍮はもともと楽器やハードウェアで愛されてきましたが、現代ではドアノブ、照明、カトラリーといった日用品で改めて評価されています。
素材の組み合わせがもたらす新たな価値とは?
異素材結合による「体験価値」の最大化
鉄・銅・真鍮を単体で使用するだけでなく、複数素材を組み合わせることで、独自性やストーリー性を一段と強めることが可能です。
例えば、鉄の支持体に銅のプレートを溶接してアクセントを加えたり、真鍮パーツを組み込んだ小物でデザインにリズムを生むなど、異素材の「化学反応」はブランドに新たな物語を付与します。
多くの人が見過ごしがちですが、異素材同士の結合方法(カシメ、接着、溶接、ねじ締結 個々に適した使い分け)も日本の製造現場が誇るノウハウです。
その技を消費者にもきちんと伝えることが、D2Cブランドの競争力強化に直結します。
機能の相乗効果――鉄の強さ+銅の衛生性+真鍮の美観
組み合わせ方によって、「それぞれの長所」を引き立てることもできます。
例えば、鉄製フレームの椅子に真鍮パーツをあしらい、座面補強部に銅板をインサートすれば、デザイン・耐久・衛生の三拍子が揃います。
こういった多機能性は、消費者に対して「なぜ高価格なのか」の理屈付けにもなり、価格競争の泥沼から抜け出すヒントにもなるのです。
D2Cブランド構築の現場的ポイント――素材特性をどう活かすか
マーケティング起点での素材選定が重要
いざD2Cブランドを作る際、現場感覚のある経営者や開発担当ほど、「どの素材を“語る”か」が真のブランディング戦略となります。
自分たちが得意な加工と得られる雰囲気、そこにターゲットユーザー像――「この製品を誰が、どう愛用し、どんなストーリーを積み重ねていくか」を起点に、鉄・銅・真鍮(またはその複合)から最善の組み合わせを導き出すべきです。
サプライチェーン管理――バイヤー・サプライヤーの目線も忘れずに
いくら素材やデザインが素晴らしくても、サプライヤーとの連携や調達コスト、品質安定性が杜撰ではブランドは持続しません。
現場マネジメント経験から重要だと実感するのは、なるべくローカル(地場)の優良加工業者を巻き込んだサプライチェーン作りです。
不安定な海外調達やバラつきの大きい外注先に頼りすぎると、品質ブレや納期リスクは一挙に高まります。
また、「この道数十年」のベテラン職人や老舗サプライヤーは、そのままブランドの「歴史」として語ることが可能。
D2Cブランドでは、下請けや外注先も“共創パートナー”として、ものづくりの物語をきちんと世界観として織り込みましょう。
品質・トレーサビリティ――厳格な風土を武器にする
品質管理とトレーサビリティ(流通履歴の見える化)は、アナログな昭和的日本製造業の“石橋を叩いても渡る”精神の結晶です。
工程ごとの履歴・検査記録をD2Cブランドでも組み込むことで、「安心できる物語」ができあがります。
最終製品だけでなく、素材そのものの出自や製造過程の“見せ方”まで工夫することで、従来の大量流通ブランドとの差別化に直結します。
鉄・銅・真鍮のこれから――日本製造業の新たな進化に向けて
20年・30年先を見据えた時、素材ビジネスは「新素材の開発」か「既存素材の再解釈」に二分されていくでしょう。
日本のものづくり力を活かすなら、後者――鉄・銅・真鍮の伝統素材に現代的な解釈と新用途を持ち込む、という方向性が有望です。
最先端のレーザー加工やIoTによる生産管理など、昭和的工場現場でも少しずつデジタル化が進み始めていますが、根幹をなすのは素材に対する深い敬意と、“物性理解を超えた物語性”です。
まとめ:素材を語る時代、現場知識がD2Cブランド構築の武器となる
鉄、銅、真鍮。
今やその一つ一つが「語れる」ブランド資産です。
どれをどう組み合わせ、何を物語るか。
製造現場に根ざしたノウハウと、工程ごとの工夫・熟練技を(昭和的に隠すのではなく)D2C時代の「見せる武器」として最大限活用しましょう。
バイヤーを目指す方、サプライヤーとしてD2Cに関与したい方、製造業でキャリアを積む方――素材特性の深い理解と、それを組み合わせる「物語発信力」が、これからの時代の差別化要素です。
ぜひ、現場目線の知識と経験値の積み重ねを、新しい地平線へつなげていきましょう。
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