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日本企業との打ち合わせで必要な“根回し”の理解

目次
はじめに:グローバル化と日本独自の“根回し”文化
日本の製造業において、海外とのビジネスが日常化した昨今でも、日本企業との打ち合わせ、特に大きな意思決定が絡む案件には“根回し”がつきものです。
“根回し”は時に非効率、時代遅れと揶揄される一方で、日本の組織文化に深く根付いた重要な慣習です。(サプライヤーやバイヤー、外資系企業での日本担当者にも影響大)
本記事では、長年製造現場や購買の最前線で培った知見とともに、なぜ“根回し”が重視されるのか、どのように実践すれば良いのか、最新の実例やアナログから抜け出せない事情を交え解説します。
また、これからバイヤーを目指す方や、サプライヤーとして日本企業と渡り合う方に向けて、知っておきたい“根回し”の本質を分かりやすくお伝えします。
“根回し”とは?単なる社内調整ではない奥深さ
表には出にくい“裏コミュニケーション”の重要性
“根回し”という言葉は、もともと木を移植する際に、木の根周辺の土を事前にほぐしたり栄養を与えたりして、移植をスムーズにする作業に由来しています。
ビジネスの現場では、関係者が意思決定を行う前段階で非公式に意見や情報を収集・調整し、正式な会議や稟議の場がスムーズに進むよう事前準備する一連のプロセスを指します。
この“裏コミュニケーション”が上手くいかないと、会議で急に異論が噴出したり、承認が下りなかったりと、最終的なスピードや成果に大きな影響が出ます。
なぜ“根回し”が重視されるのか?
表向きの議論や資料作成だけでは見えない「人間関係」「組織間の力学」「歴史的な経緯」など、日本企業ならではの背景事情が意思決定を大きく左右します。
- 合議制DNAの根強さ: トップダウンよりも、できるだけ多くの関係者納得・合意形成を優先
- 対面・情緒的な価値観: 形式だけでなく、感情的な信頼関係も重視
- 失敗回避の文化: 前例主義が根強いので、リスクを前もって取り除きたがる傾向
これらのため、“根回し”は単なる社内調整というより、日本企業特有の文化的・組織的リスクマネジメントとも言えます。
製造業の現場で見えてきた“根回し”実践のリアル
現場目線の“根回し”活動例
現役工場長時代、わたしが大きな設備やシステム導入を検討したとき、必ず意識したのは以下の2点です。
- 正式な打ち合わせ・稟議に先立つ「事前ヒアリング」
- 意思決定のカギを握る人物との「さりげない会話」
例えば、購買部門や経理部だけでなく、現場のベテラン作業員、製造設備の保守担当、さらには経営層の片腕とされる中堅マネージャーにも個別に現状認識や期待値を確認します。
その際、単なる情報共有ではなく、「この新設備で業務負荷が減るポイント」「品質にどう寄与するか」「部門横断のシナジー」など、相手目線の“価値”を語ることが肝心です。
これにより、いざ公式の場で議題に上った際の“応援団”や“無言の抵抗勢力”の存在を把握しやすくなります。
昭和のアナログ根性が今も色濃く残る実態
実際、今も製造業界では根回し=“お酌の席で一杯交わす”“タバコ部屋で腹を割って相談”など、アナログなやり方が根付いています。
改めて感じるのは、強い信頼関係を築ける“ゆるやかな時間”こそ、日本型製造現場の意思決定にとって非常に効果的だということです。
一方で、リモートワークやDX化の進展により、「雑談」「顔合わせ」の機会は減少傾向です。こうしたギャップをどう埋めるかが、今後の課題となっています。
サプライヤー視点で考える“根回し”の実践法
“根回し”を知らずに交渉すると何が起こるか
日本企業と商談するサプライヤーや外部協力会社の場合、打ち合わせ資料を用意し、価格や納期をしっかり詰めただけでは十分ではありません。
事前根回しを怠ると、会議当日に初めて反対意見が続出、不利な条件が提示される、提案自体が棚上げ……ということが頻発します。
これは、サプライヤーの担当者が「本当の決裁者が誰か」「現場のボトルネックがどこか」「既存ベンダーとの関係性」などを見落としていることが原因です。
サプライヤーとして取るべき“根回し”アクション
- 担当社内キーマンの“裏”ネットワーク把握:表の組織図だけでなく、実力者・インフルエンサーを個別にヒアリング
- 先回りした情報提供:会議前に、資料やシナリオ案を一部のキーマンに送り、フィードバックをもらう
- “顔を売る”努力:リモート・オンラインですら、雑談タイムや個別フォロー、定期的な進捗共有を欠かさない
- ネガティブ情報も“正直報告”:デメリットや値上げ要因も隠さず伝え、信頼構築を優先する
これらの行動で、“あの人は信頼できる”という印象を積み上げ、いざ正式な提案・商談の場で有利に話を進められる確率が格段に上がります。
バイヤーを目指す人が知っておくべき“根回し”のスキル
若手バイヤーが直面する「ジレンマ」とは
バイヤーという仕事は、基本的に社内外のあらゆる利害を調整する要です。しかし、若手がいきなり交渉主導権を握るのは難しく、「ハンコを集めるだけの人」になりがちです。
このとき、“根回し”力を磨くことで、単なる伝言ゲームではなく、「自ら情報収集し、相手の立場も踏まえた提案」を形作れるようになります。
ロジックと人物観察力を“両輪”でバランスさせる
根回しは感情論だけではなく、論理的な根拠と相手個々の“こだわり”の両方を調査・分析する必要があります。
- ヒアリング力:相手の本音(YESと言いながら実はNOなど)を引き出す
- 関係者マッピング:誰が表の意志決定者で、誰が水面下で動いているか見抜く
- 利害調整のシナリオ設計:複数案を用意し、相手に寄り添う姿勢を見せる
コミュニケーション能力も大事ですが、「観察力」「仮説思考」「忍耐力」といった総合力が問われます。
“根回し”の時代遅れと言われるが、時代は逆に循環する
なぜ“根回し”が未だに必要なのか、逆説的な現代の流れ
急速なDX化や業務効率化が叫ばれる今、形式的な会議や電子決裁で“根回し”の意義が薄れつつあるように見えます。
しかし、AIやRPA、海外調達のような複雑化するビジネスでは、ドライな数値や論理だけでは通じにくい場面が増加しています。
その中で、信頼ベースの“根回し”はむしろ再評価されているとも言えます。
- リスク分散・迅速化:事前合意で手戻りが減り、現場のスピードが速くなる
- 難題ほどアナログ:トラブルや“不都合な真実”は、建前フローだけでは対処できない
- パートナーシップ強化:「一緒に悩み、考え、乗り越えた」という物語が長期取引の礎になる
まとめ:根回しは「和を以て貴しとなす」日本発ビジネスアート
日本企業との打ち合わせにおける“根回し”は、単なる前時代の慣習ではありません。
関係者の思いをすり合わせ、摩擦や誤解を未然に防ぐ「事前合意のプロフェッショナル技術」とも言えます。
バイヤーを目指す方も、サプライヤーとして日本市場で戦う方も、“根回し”の本質を理解し、現場との信頼を築く努力が、あなたのキャリアを一歩次のステージへ導く武器となります。
昭和のアナログ精神と、今求められる迅速な意思決定――その両立を叶える“根回し”の感覚を磨き、ぜひこれからの製造業で活躍していただきたいと思います。
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