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OEM供給で求められる“サプライチェーン安定性”の理解

目次
はじめに:なぜ今、“サプライチェーン安定性”が問われるのか
近年、製造業界が抱える最大の関心事のひとつが“サプライチェーン安定性”です。
グローバル化の波が押し寄せ、災害や地政学的リスク、さらにパンデミックなど予測不可能な出来事が多発しています。
そのたびに、部品や原材料の調達がストップし、ラインが止まる事態を多くの現場で目の当たりにしてきました。
とくにOEM供給においては、自社だけでなく、取引先メーカーや最終顧客にまで影響がおよびます。
本記事は、調達・購買、生産管理、品質管理、工場の自動化など、現場で20年以上培った管理職経験をもとに、OEMで求められる“サプライチェーン安定性”について、深掘りしていきます。
従来型の“昭和型ものづくり”から一歩先をいくために何が必要なのか。
これからのバイヤー、そしてサプライヤー双方に気づきを与える実践的なヒントをお伝えします。
サプライチェーン安定性の基本とは
そもそもサプライチェーン安定性とは何か
サプライチェーン安定性とは、原材料調達から生産、納品、そして最終顧客へと至る一連の流れが途絶えることなく円滑に進む状態を指します。
調達先のトラブルや需要変動、外部環境の変化にも柔軟に対応できることが条件です。
単に在庫をたっぷり抱えればいい、というものではありません。
コスト、リードタイム、品質、リスク管理など、バランスよく設計された連携網が求められます。
OEMビジネスにおけるサプライチェーンの特殊性
OEM(Original Equipment Manufacturer)とは、自社ブランドではなく、顧客ブランド向け製品を製造し供給するビジネスモデルです。
OEM供給では以下のような特徴があります。
– 顧客からの要求品質や納期が厳格
– 部品や原材料の調達先が多岐にわたる
– サプライヤーの生産能力や工程変更リスクも影響
– 顧客の需要変動に即対応しなければならない
結果として、“供給の途切れによる信頼失墜”が最大のリスクとなります。
ゆえに、OEMでは一般的な自社製品以上にサプライチェーンの安定性が強く問われるのです。
現場目線で見る!サプライチェーン安定性の本当の課題
「発注書一本」の危うさ
昭和時代から続く“発注書一本主義”。
言葉を換えれば、「契約書」「注文書さえ交わせばいい、あとは流れに任せる」発想とも言えます。
しかし、近年の複雑化したサプライチェーンでは、これが最大のリスクです。
一社でも調達先がストップすれば、全工程が止まります。
現場ではよく「急に今日“止まった”」という事態が起きました。
これは「見える化」「情報共有」「複線化」といったバックアップ体制が未構築な場合に起きます。
調達先に依存しすぎるリスク
部品や原材料の一括調達、コストダウンの名のもとにサプライヤーを“絞り込む”動きも長年見られます。
しかし特定サプライヤーへの過度な依存は、災害や海外事情の変動に対し、脆弱です。
視野を広げ、複数調達先の構築や、いざという時には差し替え可能なBCP(事業継続計画)が現場判断の鍵となります。
情報伝達の壁:アナログ文化からの脱却
FAX、紙の発注書、電話での納期調整…。
いまだ根強いアナログ文化が、トラブル発生時のスピーディーな判断・対応を妨げています。
DXが叫ばれる今こそ、デジタル管理ツールの積極導入が大きな差を生みます。
人間関係が重視される業界ならではの根回し文化も否定しません。
しかし、伝達の遅れが致命傷になる時代です。
その“間”を埋めるデジタル化が不可欠なのです。
サプライチェーン安定化の具体策
複線化(マルチソース)のすすめ
最も効果的なのは「複数サプライヤーによるバックアップ体制」の確保です。
これには以下の要点があります。
– サプライチェーンを一つの調達先に依存しない
– 主要部品・原材料ごとに“代替品調達ルート”を持つ
– 予めサンプル評価や小ロット調達テストを実施
この予防策が、いざという時に「止まらない」「納期遅延しない」力となります。
情報のリアルタイム共有と“可視化”
需要の変動や、サプライヤートラブル発生を速やかにキャッチするには、情報のリアルタイム共有が重要です。
– 部品入荷状況の見える化(在庫管理システム導入)
– サプライヤーとの納期進捗会議(定期ウェブ会議)
– “いつでも相談できる窓口”の設置(チャットや専用ポータルサイト)
これにより、「ラインが止まるまでわからなかった」状況を未然に防ぐことが可能です。
工程短縮と自動化による「ムダ」の削減
在庫の山、大量生産・大量在庫に依存してきた従来の昭和型モデル。
現代では、より合理的で変動に強い「必要な時に必要なだけ作る」考え方が求められます。
– 生産計画と需要予測の高度化(AI予測の導入など)
– 工場内自動化による小ロット生産、多品種短納期化
– 部品ロス・余剰在庫の徹底排除
これらは全体最適の実現に不可欠です。
サプライヤーとのパートナーシップ強化
価格競争だけでなく、長期的な“共存共栄”がサプライチェーン安定性の基礎となります。
– サプライヤー業績・生産状況の定期レビュー
– 能力向上のための技術連携、教育の実施
– 有事には双方協力して乗り越える“信頼関係”を築く
バイヤーとサプライヤーが一体となったチームこそ、予測不能な時代に強くなれるのです。
OEMビジネスにおけるサプライチェーン安定性の最新動向
グローバル環境の激変と新潮流
中国リスク、円安・円高など為替変動、新興国の台頭による調達コストや物流コストの変動。
ウクライナ危機、新型コロナなど、サプライチェーン全体を揺るがす出来事が連続しています。
OEM各社は今、サプライチェーンを「グローバル+ローカル」の両面から再構築する動きが加速しています。
リスク分散と最適地生産――これらを両立させるために、商流・物流・情報流の断絶ポイントを最小化する努力が必要です。
サステナビリティ(持続可能性)への対応
昨今“ESG経営”やグリーン調達といった社会的責任も重視されています。
– 環境負荷の低い素材の採用
– トレーサビリティ(履歴管理)の徹底
– 労働安全衛生・人権配慮への対応
これらを無視しては、もはや大手メーカーからのOEM受注は難しくなっています。
現場主導で進めるべき「真のDX」
単なるシステム導入ではなく、「現場に浸透した運用」が求められます。
リアルタイムな進捗把握だけでなく、個人の技術・ノウハウがデジタル化され、情報が組織全体で共有できる体制――
これが知的資産となり、不測の事態でも素早く現場ジャッジができるようになります。
デジタルと人の力のシナジーこそ、昭和型アナログからの質的転換の本丸です。
バイヤーとサプライヤー双方が持つべき新常識
バイヤー:価格と納期だけでなく、“安定供給力”を評価せよ
まだまだ多くのバイヤーが価格や納期でサプライヤーを選定しています。
しかし、今後は“供給の安定性”や“突発事態への復旧能力”、さらには“提案力”も重視すべきです。
– 定量的なリスク評価指標の導入
– サプライチェーン全体の“見える化”とリスク分布の把握
– 階層問わず現場マネジメント層との意見交換
これにより、単なる価格最優先から「強くしなやかな供給網」へとシフトできます。
サプライヤー:言われたことをこなす“受け身”から脱却を
サプライヤーは「バイヤーから言われた通り納期を守る」「品質基準に沿う」だけで満足していませんか?
今やサプライチェーン全体への“能動的なリスク提案”、短縮や改善のアイデア提供、情報発信が求められています。
– トレーサビリティやBCPの自社構築
– 生産・調達工程における改善活動の“見える化”
– 共同開発や工程設計の早期からの参画
主体的なアクションをとれるサプライヤーこそ、今後のOEMビジネスで存在感を高められるのです。
まとめ:不安定な時代こそ、現場発の知恵を活かす
サプライチェーン安定性の確保は、昭和型の慣習にとどまっていては実現できません。
グローバルな変化、社会的要請、顧客からの厳しい品質・納期要求。
これらに対応するためには、現場の泥臭い知恵と最新のツール、双方をフル活用することが欠かせません。
また、バイヤーもサプライヤーも、従来以上に“パートナー”として協力し合う姿勢が求められます。
安定供給は信用の証。
自社だけでなく、業界・顧客全体のサステナビリティを見据えた強いサプライチェーン構築を、今こそ目指していきましょう。
現場での葛藤も、成功も、経験も。
互いに惜しみなく共有し、製造業の未来を共に切り開いていきたいと思います。
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