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保冷剤・ドライアイスの過充填で航空危険物扱いになる境界線の理解

目次
はじめに:製造・物流現場を悩ませる「冷却資材」の取扱い
保冷剤やドライアイスは、冷蔵・冷凍品の物流や医薬・化学分野の輸送に欠かせない存在です。
しかし「冷やせばよい」「量が多い分安全」という単純な考え方だけでは済まされません。
近年、航空貨物によるグローバルサプライチェーンが当たり前になる一方で、これら冷却資材の過充填が航空危険物の法的規制に抵触し、想定外のトラブルや物流事故を引き起こすケースが増えています。
本記事では、保冷剤・ドライアイスが「危険物」とみなされるラインや、それにまつわる現場目線の課題を深掘りします。
バイヤー、サプライヤー双方の立場で知っておくべきポイントを、昭和的な現場常識から最新の業界動向まで交え、分かりやすく解説します。
冷却資材の基礎知識:保冷剤とドライアイスの違い
保冷剤とは
保冷剤は、主に水やゲルをポリエチレンフィルムで包んだものです。
冷凍させることで長時間冷却効果を得られるため、食品・医薬品の保冷輸送、アウトドアシーンまで幅広く使われています。
一般的に「食品添加物レベル」の成分が多く、直接的な危険物には該当しません。
ドライアイスとは
ドライアイスは二酸化炭素(CO2)を固体に圧縮したもので、昇華することで−78.5℃という圧倒的な冷却能力を持ちます。
ですが、昇華して発生するCO2ガスが密閉空間で増加すると、酸欠や爆発リスクが生じるため、その取扱いは厳密です。
国際的な物流(特に航空輸送)において「危険物扱い」となる理由の一つです。
なぜ「過充填」が問題となるのか
冷却力の欲張りと現場の経験則
製造業や物流現場では、「少し余分に入れておけば安全だ」「保冷時間が長い方がクレームも減る」という経験則が根深く残っています。
昭和的な“多め・多め”の現場文化は今なお健在で、保冷剤やドライアイスを過剰に投入する場面が目立ちます。
しかし、航空危険物の壁が立ちはだかる
ドライアイスや一部の保冷剤は、多すぎることで航空機輸送時に国際航空運送協会(IATA)や各国航空法の「危険物」規制に該当してしまうことがあります。
ルール違反は、貨物の搭載拒否・損害賠償・最悪の場合は事故にも繋がりかねません。
航空輸送におけるドライアイスの危険物規制
ドライアイスの航空危険物基準
IATA危険物規則(DGR)によると、ドライアイスを航空貨物として輸送する場合、明確な量的制限があります。
2024年現在、国際線での制限は一般に1貨物当たり2.5kg〜200kgまでですが、梱包ごとの詳細な規定・ラベリング・申告・換気条件など厳格な基準を満たす必要があります。
「充填量」=「冷却確保」ではないことへのシフト
一律に「多ければ安心」という現場感覚は通用しません。
必要な冷却効果と「最大許容量」とを常に天秤にかけ、根拠を持った充填量の設計が求められます。
規定を超えた過充填はリスクでしかありません。
保冷剤の規制と誤解されがちなポイント
一般的な保冷剤は「危険物でない」が…
通常のゲル状・水系保冷剤は危険物に分類されません。
しかし、一部で使われる有機溶剤系や特殊成分を含む保冷剤、超低温型などはMSDS(製品安全データシート)で成分をチェックし、航空貨物梱包指針を確認する必要があります。
「複数個まとめて一梱包」の落とし穴
総量規制を超えていることに気付かず、小分けしたつもりが危険物扱いになってしまうケースもよく見られます。
資材メーカーからの変更連絡や新商品の採用時は注意が必要です。
「境界線」を正しく理解するために必要なこと
1. 最新の規定・国際基準に常にアクセスする癖を持つ
現場ではどうしても「昨年までOKだった方法」「◯◯さんの習慣」が優先されがちです。
しかしIATA・ICAOなど航空法は毎年改定されます。
「ネットや社内資料」だけに頼らず、原典に立ち返る習慣がプロの現場運営には欠かせません。
2. サプライヤー・バイヤー間の情報非対称性をなくす
サプライヤーは、商品提供時にスペック・危険物分類・申告方法まできちんと伝える義務があります。
一方バイヤー・荷主側も、物流業者任せにせず自分で基準を把握し、過充填のリスクを管理できる体制を作ることが重要です。
相手と足並みを揃えるために「これならギリギリ大丈夫」という意識はNGです。
3. なぜ現場で「多め」になりがちか、根本要因を可視化する
「温度管理のチェック体制が曖昧」「属人的な判断に流れる」「輸送リードタイムのバラツキ」など、冷却資材の過充填は現場のもやもやしたリスク意識から生じることが多いのです。
リスクマネジメントの観点から、単なる量のコントロールではなく、現場フロー・責任体制ごと見直す必要があります。
昭和的現場慣行からの脱却と業界動向
「作業マニュアル化」「デジタル計測」の導入が鍵
従来の“現場勘”から、「システム化・数値基準管理」への移行が急務です。
具体的には、梱包設計時にAI冷却シミュレーションやIoT温度ロガーの導入、充填作業の可視化(写真記録やバーコード管理)など、多層的な管理が新たな業界標準になりつつあります。
気象・機体・経路による設計の最適化へ
温度条件・貨物の内容物・航空会社ごとの機体仕様や換気状況によって、必要な保冷剤・ドライアイスの量や組み合わせも変わります。
「一律」の発想から脱却し、貨物ごとにリスクアセスメントを実施する柔軟性が求められます。
バイヤー・サプライヤーが押さえるべき現場の勘所
バイヤーが意識すべきポイント
– 発注時点で目的や輸送条件を細かく伝える。
– サプライヤー提供資料(MSDS、危険物判定書等)を都度アップデートする。
– 輸送時の温度ロガーなどデータ化の体制を持ち、経験則に頼りすぎない。
– 輸送中のトラブル(コンテナ内温度上昇など)が判明した場合、「保冷剤の量を増やす」ではなく“梱包・経路そのもの”を再設計する。
サプライヤーが取り組むべき視点
– 商品仕様説明だけでなく、「輸送現場での使い方指導」まで進める。
– 安易に「保冷剤多めで」と頼まれた際も、危険物境界線や航空法順守を踏まえて反論・提案する責任を持つ。
– 顧客の情報(温度要件・貨物仕様)をヒアリングし「最適量」をデータで根拠提示する。
– トラブル情報や法改正動向をリアルタイムで顧客に還元し、互いのリスクを最小化する。
まとめ:冷却資材の過充填リスクをゼロに近づけるために
冷却資材は、単なる“現場の便利グッズ”ではありません。
過充填による航空危険物化は、重大な輸送トラブルと規制違反を招きます。
業界のアナログ慣行から一歩抜け出し、根拠ある量への設計、規定順守、サプライチェーン全体での情報連携が、これからの時代の品質・安全マネジメントです。
バイヤーとしては、「もっと冷やせば安心」ではなく、「なぜこの量なのか?」と問い直す姿勢を。
サプライヤーとしては、「現場の常識」に流されず科学的根拠と最新基準に即した最適提案を。
昭和の現場感覚と、現代のデータ主導マネジメントを融合させた、“次世代製造・物流のプロ”を目指しましょう。
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