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投稿日:2026年2月18日

人手不足対策として自動化を選んだ結果起きた想定外

はじめに:製造業の人手不足と自動化の現実

近年、製造業における人手不足が深刻化しています。
少子高齢化、若者の製造現場離れなどの社会的背景に加え、新型コロナウイルスの影響で一段と人材確保が難しくなってきました。
多くの現場が「人手が足りなければ自動化しかない」という判断を下し、産業用ロボットや自動搬送システムの導入を進めています。

しかし、実際に自動化を推し進めてみると、現場ではさまざまな「想定外」の問題が噴出しました。
本記事では、昭和から令和へと移り変わる中でも根強く残るアナログ体質に触れつつ、自動化導入の最前線で何が起きたのかを、現場目線で深掘りしていきます。

自動化推進の背景:なぜ製造業は自動化に踏み切ったのか

慢性的な人手不足とコスト上昇

製造現場は長年、採用難や従業員の高齢化に悩まされています。
新卒の応募者が少なく、若年層は「きつい・汚い・危険」のいわゆる3K労働を敬遠しがちです。

人手でまかなっていたライン作業やピッキング、搬送作業が、人材確保できないことで滞り、結果的に納期遅延や品質リスクが高まりました。
また、人材派遣や外注に頼ればコストは増え、収益悪化を招きます。

生産性向上と競争激化

グローバル化の波は、国内産業にも大きな競争圧力をもたらしました。
価格競争に勝つためには生産性向上が不可欠であり、「人がやるべき仕事」と「機械に任せるべき仕事」の線引きが急速に求められるようになりました。

そこで、多くの現場で自動化が「救世主」のように検討され、実際に導入が加速したのです。

自動化による現場の変化:目に見える成果と意外な副作用

生産性向上・標準化は実現できたのか?

自動化の導入により、単純作業や繰り返し作業は大幅に効率化しました。
人的ミスが減り、製品のばらつきが小さくなり、品質管理の面でも一定の成果が得られます。
また、省人化が進み、コアな技術者人材を重要工程に集中させられるなど、人的リソースの最適化も進みました。

想定外1:現場力の低下と属人性の罠

ところが、現実には想定外の事態も多く発生しました。
まず最大の課題は、現場の“現物・現場・現実”主義、いわゆる「三現主義」が薄れたことです。

従来ベテラン作業者が目視や手感で異常を察知していた部分が、機械任せになることで、現場での“小さな異変”に気づきにくくなりました。
「ロボットだから止まらない・間違えない」は幻想であり、トラブルが発生すると誰も対処法が分からず生産が止まってしまうのです。

また、ラインが完全自動化されたことで、保守・メンテナンスに習熟した専門人材が極端に不足しました。
ここに、従来の“ものづくり日本”を支えてきた属人的ノウハウが継承できないというジレンマが生まれます。

想定外2:突発的なライン停止リスクと復旧対応の難しさ

もう一つ大きな想定外が、ちょっとした不具合やセンサー誤検知による“ライン停止”です。
アナログ作業では、作業者が臨機応変に対応していたトラブルも、自動化環境下では「誰も即時に対応できない」事態が頻発しました。

「ラインが止まったら、ソフトのどこを見て、どの端子を確認し、どこまで現物を分解していいのか」。
こうしたスキルセットを持つ人材が、急速な自動化の波で減少し、現場復旧のスピードが逆に遅れることも起きています。

想定外3:人員再配置と現場のモチベーション問題

自動化が進むことで、単純作業に従事していた人の仕事は大きく変わります。
人員を異動や再配置する際、従来「手を動かす」ことに価値を感じていた社員が、「監視だけ」「PC端末操作だけ」という仕事になかなか適応できません。

また、現場リーダークラスが間に入って全体調整をしてくれていた“現場力”が失われ、細かな改善サイクルが回らなくなったという嘆きも多く聞かれます。
モチベーションの維持、業務デザインの再構築は非常に根深い課題です。

アナログ体質の壁:自動化導入を阻む“昭和マインド”

紙文化とエクセル職人の存在感

中小企業や老舗メーカーでは、現場の実態管理が今も“紙”や“エクセル”が中心というところも少なくありません。
IoT(モノのインターネット)やMES(製造実行システム)を導入したいと思っても、現状把握がアナログ形式のため、デジタルデータ化への移行が大きな障壁となります。

ベテラン現場担当者が「紙を見ないと落ち着かない」「エクセルを触らないと怖い」といった感覚にとらわれてしまい、自動化・デジタル化の阻害要因になっているのです。

現場の抵抗と“腹落ち感”の醸成不足

人間には変化への抵抗がつきものです。
昭和世代の現場担当者は特に、「俺たちが線を引いてここまでやった」という自負や、「現場のことは現場が一番分かっている」という意識が根強い傾向があります。

この“腹落ち感(納得感)”を醸成できないまま自動化だけを押しつけると、「今さら自動化なんて無理」「結局、現場が面倒を見るんだろ?」など、非協力的な雰囲気が生まれ、うまく軌道に乗らないケースが多発しました。

サプライヤー・バイヤーの視点から見る自動化の現実

サプライヤー側の課題:早すぎる自動化にどう向き合うか

バイヤーが自動化を推進することで、サプライヤーにも「ロボット化対応品」「IoT対応品」など新たな要件が強く求められるようになります。
これは新技術開発のチャンスである反面、投資や技術者育成、仕様変更への負担増大というリスクになるのです。

「現場の課題を実感できていないまま“自動化”のキーワードに踊らされるのではなく、本当に現場・工程に合ったシステムの開発が必要だ」という声も高まっています。

バイヤー(調達側)のジレンマ:コストダウン&イノベーション

調達担当としては、自動化によるコスト低減をサプライヤーに強く求める場面が増えました。
しかし、バイヤー自身が現場や工程を深く理解していなければ、単に「ロボット導入=安くなるはず」といった机上論に走りがちです。

結果、本質的な工程改革やQCD(品質・コスト・納期)最適化につながっていないケースも実際に多く見受けられます。
サプライヤーと現場を繋ぎ、現実に即したパートナーシップを築くことがこれからのバイヤーには欠かせません。

自動化に失敗しないための現場目線のヒント

“ABCD”で自動化を進めよう

自動化導入を現場と一体で進めるには、次の4つの視点が重要です。

A:As-Is(現状把握)
B:Benefit(効果・メリットの見極め)
C:Change(現場変革プロセスの設計)
D:Develop(人材とノウハウの地道な育成)

特に、“現場の温度感”や“小さな工夫”、“人的ノウハウ”の伝承は、工場長・現場出身者の視点が不可欠です。

“現場に愛される自動化”こそが成功のカギ

新しい機械を入れる前に、「現場の困り事」を丸ごとヒアリングすることが大切です。
「なぜ止まったのか」「どうすれば楽になるのか」「新人でも扱えるシンプルさか」。
こうした現場のリアルな声を、形だけでなく本気で吸い上げ、可能な限りシステム設計に落とし込んでいくことが、定着し続ける自動化の大前提だと断言します。

地道な教育・訓練の積み重ね

一朝一夕に現場は変わりません。
新システム導入時は、きめ細かな教育訓練を繰り返し、「戸惑っても当たり前」「困ったときは必ず誰かが助ける」風土を作ることです。
紙とエクセル文化の現場でも、基礎からコツコツと“やってみせる”ことが、腹落ちを促進します。

まとめ:自動化は万能薬ではない、現場力こそが競争力に直結する

人手不足時代の製造現場にとって、自動化は強力な対応策です。
しかし、その本質は「人に依存しなくてよい世界」ではなく、「人と機械が共存しあう柔軟な現場づくり」にほかなりません。

自動化を推進する際は、現場力の維持・再構築、アナログ文化の強みの継承、新しい人材像の創出、そしてサプライヤー・バイヤーの現場連携が不可欠です。
“現場主義の深化”こそが、これからの製造業の新たな競争力を生み出すと確信しています。

昭和・平成・令和と移りゆく中でも、「改善魂」と「現場の知恵」を絶やさないことが、製造業の発展につながるのです。
自動化の波に流されるのではなく、主体的に“使いこなす現場”を目指し、これからも共に進化していきましょう。

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