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加工油選定を誤ると起きる予期せぬ問題

目次
はじめに:加工油選定はものづくりの生命線
製造業の現場で20年以上勤務してきた経験から断言します。
「加工油選定」は、ものづくりの土台を支える最重要ポイントの一つです。
実際に多くの現場で、「なんとなく昔から使っている」や「見積りの安さで決めた」など、加工油選定を軽視した判断が予期せぬトラブルを招いている現状に直面してきました。
特に昭和から続くアナログな手法が残る現場では、油の見直しそのものが「見えないコスト」として蔑ろにされがちです。
この記事では、加工油の選定ミスがどのような問題を引き起こすのかを、現場目線で具体的に解説します。
さらに、バイヤーを目指す方やサプライヤーの立場の方にも役立つ「加工油選定のリアルなポイント」も深掘りします。
加工油とは何か?そしてなぜ重要か?
加工油は金属や樹脂の切削、研削、プレス、圧延などの加工工程において不可欠な潤滑油です。
摩擦軽減、発熱防止、切りくずの排出補助、工具寿命延長、表面仕上げの向上など多岐にわたる役割を担っています。
また、加工油にはミネラル系、合成系、水溶性、半水溶性など様々なタイプが存在し、現場ごとの用途や課題に応じた最適な選択が求められます。
この最適化を怠ることが、数々の予期せぬトラブルの起点となります。
目に見えない「油の経年変化」
加工油は使用するうちに劣化が進み、性能が大きく変化します。
油切れや酸化、スラッジ(沈殿物)の発生、バクテリアの繁殖による腐敗など、使用当初の状態とは別物になります。
廉価な油を「とりあえず」で使い続けることで、当初は問題なくても数カ月~数年単位で重大トラブルが現れます。
加工油選定を誤ると起きる現場のリアルな問題
設備故障や製品不良の発生
私が工場長を務めた時に経験した事例をご紹介します。
加工油の質を誤ってコスト重視で選んだ結果、切削チップの寿命が半減。
加工温度が上昇し、ワーク(被加工物)の焼き付きが多発。
最終的に高額な設備部品の交換と、ロット不良で約一週間のライン停止を余儀なくされました。
同じ工程を担う他社も、類似トラブルを経験しています。
安い油はその場の調達コストだけ見ると得をした気になりますが、目には見えない「不良品コスト」「設備メンテナンスコスト」「納期遅延リスク」は計り知れません。
作業環境の悪化による現場効率低下
加工油が適切でない場合、ミスト(油煙)が多発し、作業環境が悪化します。
現場作業者から「油で目が痛い」「臭くてたまらない」との声が上がり、結果として作業ミスや人員離職にまで発展するケースもあります。
健康被害や作業意欲の低下は、目に見えにくいが確実に生産性を蝕む重大要素です。
持続可能性・環境規制への対応遅れ
近年は、RoHS、REACH規制を始めとする環境規制がグローバルに厳格化しています。
鉱物油ベースの加工油には、PRTR法(特定化学物質取扱規制)に抵触する物質が含まれる場合も多く、適切な選定をしていなければ、グローバル市場への部品納入自体ができなくなるリスクもあります。
ここを軽視し、「昔通りの油」に固執し続けるのは危険です。
バイヤーから見た加工油選定のチェックポイント
調達購買の立場から「良い加工油選定」とは、単に安さでは評価できません。
総合的な視点で判断しましょう。
ライフサイクルコストを見極める
購入時価格だけでなく、油交換サイクル、油材寿命、廃油処理料金、機械の部品交換周期など、ライフサイクル全体でのコスト計算が重要です。
トータルコストでメリットがある油材こそが、真にバイヤーが選ぶべき製品です。
現場ヒアリングは必須
現場の作業者や生産技術、品質保証部門へのヒアリングを怠らず、「今どんな油を」「どこに不満があるか」「切り替えでどんな影響がありそうか」を必ず確認しましょう。
目の前の見積り数字だけでは、現場での“本当のリスク”は絶対に見抜けません。
サプライヤーへ要件定義の明確な提示
油材サプライヤーには「何を求めているのか」を、工程図や加工温度範囲、工具材質、排出油量、環境対応基準などを具体的に提示することで、より適合する油材の提案が受けられます。
また、サプライヤーにはサンプル品での評価テストや、現場立会評価の実施を依頼しましょう。
サプライヤーこそ“バイヤーの悩み”を知ることが信頼獲得のカギ
サプライヤーの立場でも、バイヤーの懸念や現場の苦労を深く理解できているかが長期取引において決定的な差となります。
単なる「カタログ性能」だけの売り込みは逆効果
性能や物性データはもちろん大切ですが、「なぜ従来品から変えられないか」「置き換えで何が不安か」など踏み込んだ課題把握ができて初めて、本当に価値ある提案が可能となります。
抜本的な現場改善提案で信頼アップ
例えば、油切れ・高温対策、廃油のローコスト回収方法、加工不良削減など“経営課題”への具体策を用意しましょう。
ライン設計から関わることができれば、サプライヤーとしての価値は格段に向上します。
アフターサービスでの差別化
納入後の定期サンプリング・油の劣化診断、ミスト量測定、環境報告書作成サポートなど、アフターサービスの充実は競争力強化に直結します。
現場に寄り添い「一緒にラインの健康を支える」姿勢が信頼を勝ち取ります。
昭和的アナログ思考からの脱却が生き残りの鍵
多くの製造業現場では、古くからの油材を「なんとなく」「先代が決めたから」使い続けているケースが多く見受けられます。
しかし、AIやIoT、スマートファクトリー構想の進展など、ものづくりは今、抜本的な変革期です。
現場でも事務部門でも、複数のサプライヤーから提案を受け「常識を疑い、改善を重ねる」ラテラルシンキングが求められます。
加工油も“見えないインフラ”として、刷新することで飛躍的な競争力強化につながるのです。
加工油選定で発生する「予期せぬ問題」まとめ
誤った加工油選定は、以下のような予想外の損失をもたらします。
- 工具寿命、設備寿命の大幅低下による保守コスト増
- 製品品質の低下やロット不良の増加
- 作業環境悪化による現場力ダウン
- 環境規制違反やグローバル取引停止リスク
- 現場離職や経営管理部門とのトラブルなど間接損害
これらはほとんど全てが事前に適切な油材選定・試験評価・関係者間のコミュニケーションによって防げることです。
まとめ:現場と調達の知恵で最強のものづくりを
加工油は単なる「消耗品」ではありません。
ライン全体の信頼性・加工品質・生産性・環境適合力など、工場経営の基盤に直結します。
バイヤーの皆さんは、調達価格だけでなく、現場目線や経営リスクを総合的に評価しましょう。
サプライヤーの方は、単なる「売り込み」ではなく、バイヤーの悩みに寄り添った価値提案と現場支援を徹底してください。
製造業に携わるすべての方へ。
加工油選定をぜひ、次の経営イノベーションの起爆剤と位置付けてください。
それが日本のものづくりを次世代にバトンタッチさせるための第一歩となるはずです。
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