- お役立ち記事
- 不合理な評価システムで取引停止のリスクが高まる課題
不合理な評価システムで取引停止のリスクが高まる課題

目次
はじめに:不合理な評価システムが生み出すサプライチェーンリスク
製造業において、調達・購買部門の果たす役割はますます重要になっています。
企業の収益性や競争力の源泉ともいえる部材・部品調達は、まさに事業そのものの命綱です。
近年はサプライヤー評価システム(取引先の定量的・定性的な査定)が高度化していますが、その一方で「不合理な評価システム」が原因となり、サプライヤーとの取引停止やサプライチェーン全体にリスクを招く事例が増えています。
この問題は、工場長やバイヤーだけでなく、現場のエンジニア、サプライヤー企業の担当者にも直接関わる大きな課題です。
ここでは、現場目線、実務経験に根差した観点から「不合理な評価システム」によって生じる取引停止リスクと、その背景、対策について深く掘り下げていきます。
サプライヤー評価システムの現状と課題
定量評価に偏ったシステムの実態
多くの企業では、サプライヤーの評価指標は「納期遵守率」「品質不良率」「コストダウン実績」などの定量データに大きく依存しています。
数字は客観的な判断材料として重要ですが、現場目線で見ると「なぜこの単純な数値で全体の評価が決まってしまうのか?」と疑問が生じる場面が少なくありません。
例えば、不良率が一時的に上昇した背景には、歩留り改善のトライや新規設備導入、急な設計変更など、「チャレンジ」に起因する成果につながる試行錯誤がある場合もあります。
しかし、評価システム側がそうした定性的な努力や仕組みの変革をくみ取らず、単純に数値だけで「ランクダウン」や「イエローカード」を出してしまうのが現状です。
評価項目の形骸化と昭和的アナログ文化の残滓
昭和の高度成長期から使われてきた評価項目が今も残り、「これまで通り」でアップデートされていない企業も多いのが実態です。
評価シートは毎年のルーチン業務と化し、「前年同様」という運用が続けば、もはやサプライヤーもバイヤーも本音では形だけのやり取りに感じています。
この風土が、「変えよう・良くしよう」という現場の機運を削ぎ、惰性的な関係が続いてしまう背景ともなっています。
不合理な評価がなぜ「取引停止リスク」に直結するのか
評価結果が全社的な「取引継続/停止」判断に直結
昨今はコンプライアンスの高まりや社内規程の厳格化により、一度「評価基準未達」や「取引先ランク低下」となると、各部門・各工場をまたいで「このサプライヤーとは取引を見合わせる」という動きが全社的(場合によってはグループ企業全体)に広がりやすい傾向があります。
現場で本当に信頼と実績があるサプライヤーであっても、本社調達部門が「評価シート上の点数」をもって一律に排除してしまう。
つまり、融通無碍が利かない硬直的な運用が、思わぬサプライチェーン寸断(メーカー側・サプライヤー側双方の事業ダメージ)につながっています。
「バイヤーの本音」と現実のギャップ
実際には、バイヤーも「現場から本当に信頼されているサプライヤーは巻き込みたくない」というのが本音です。
それでも、「定量評価重視」「コンプライアンス重視」の波、また経営層からの“評価結果にもとづく見える化と厳格運用”のプレッシャーには逆らえません。
この板挟みが、現場とバイヤー・サプライヤーの信頼関係の根本を揺るがす大きな課題となっています。
現場視点の「不合理な評価システム」の実例
実例1:単一事象の切り取り評価が経営判断を誤らせる
ある電子部品メーカーでは、一定期間に不良品流出(顧客クレーム)が発生したサプライヤーを即座に「イエローランク」に格下げし、半年後の全社購買会議で「ブラックリスト」への登録が決定されました。
実はこの不良の背景には新素材の導入というチャレンジがあり、工程改善の取り組みも進行中でした。
しかし、「一度クレームが発生したら即ランクダウン」という評価システムの運用により、取引停止となってしまいました。
結果、メーカー側は既存製品の供給網を一時断絶し、サプライヤーも主力取引先を失いました。
実例2:定性的評価の無視によるパートナーシップ崩壊
ベテランバイヤーが現場での長期的な信頼・協力関係を強く評価していた部品メーカーがありました。
特急品対応や急な仕様変更にも柔軟に応じてきた実績があったにもかかわらず、「コストダウン未達」という一項目のみで総合点が及第点に届かず、経営判断で取引を縮小。
その結果、他社との交渉力を弱め、結果、納期遅延や品質トラブルが発生しました。
解決の糸口:「現場と本社」「数字と本質」のハイブリッド型評価
バイヤー・サプライヤーの双方向コミュニケーションの強化
不合理な評価システムを解消するためには、評価の「物差し」自体に現場の声、サプライヤーの工夫・努力を反映させる必要があります。
例えば、「定量データ」プラス「定性的な現場レポート」とし、実際の改善活動やQCD(品質・コスト・納期)のバランス改善への取り組み状況を評価に加える仕組みが有効です。
特に、現場の工程担当者・工場長とバイヤー担当者が「サプライヤーミーティング」や「現地視察」を通じて、互いの課題認識・改善策を“見える化”する場づくりが重要です。
このようなハイブリッドアプローチこそが、「単なる数字評価だけ」を排除し不合理な運用リスクを減らします。
評価基準の「再設計」と「定期的アップデート」
サプライヤー評価基準は、「業界動向」「競合他社の取り組み」「現場での課題」を踏まえ、少なくとも毎年アップデートしていく必要があります。
たとえば、脱炭素やDX推進、工程自動化など、現代の製造業を取り巻く潮流を反映した評価項目を新設し、現場が直面している具体的なチャレンジも評価の対象とすることが重要です。
また、「評価基準見直し会議」など、現場の工程担当者やサプライヤー側のキーパーソンも交えたダイアログの場を設定することが、実効性向上への鍵となります。
サプライヤー・バイヤー双方が知っておくべき心構え
サプライヤー視点:
– 定量評価だけでなく、自らの取り組みや現場改善プロセスを積極的にアピールしましょう。
– バイヤー担当者に「現場を見てもらう機会」をつくり、実情を肌で感じてもらうことが信頼関係構築の一助になります。
– 評価指標が不合理・時代遅れと感じた場合は、改善提案や意見表明をためらわず行いましょう。
バイヤー視点:
– 現場からの情報収集を重視し、「評価基準の背景」「数字の裏側」に着目しましょう。
– サプライヤーの努力や現場事情も汲み取れる柔軟な評価運用(例外審査枠の設置等)を模索しましょう。
– 本社方針・全社ルールが絶対でないという現場視点を忘れずに、“現場代表”としての矜持を持ちましょう。
おわりに:評価システムが産業進化の足枷とならないために
「数字」や「ルール」だけに頼った評価システムの不合理性は、取引停止リスクのみならず、産業全体の活力低下や現場改革意欲の喪失ももたらしかねません。
時代の変化、現場の課題、サプライヤーの努力。
これらを正しく評価できてこそ、真のパートナーシップと強固なサプライチェーンは築かれます。
製造業全体の未来のためにも、今こそ評価システムの抜本的な見直しと現場主導の改革が必要です。
現場の悩みを熟知し、かつ多面的にものごとを見るバイヤー・サプライヤーが増えれば、日本のものづくりはまた新たな進化を遂げていくでしょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)