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ラベル発行を一台に集約し書式乱立を止めるプリンタ運用

目次
はじめに:ラベル発行と現場の混乱
生産現場において、ラベルの発行と管理は、意外と見過ごされがちな課題です。
多品種少量生産が進む現在、工程内で使う部品ラベル、製品表示ラベル、出荷用ラベル、品質管理のためのラベル、といった具合に求められるラベルの種類は年々多様化しています。
一方で、発行元や書式、プリンタ台数がバラバラになることで発生する混乱やロスも現実的な問題です。
私が現場や工場長として携わった経験から、この「ラベル発行の乱立」が如何に無駄を生み、生産効率や品質にマイナス影響を及ぼすかを痛感しています。
本記事では、「ラベル発行の一元化」と「書式乱立の防止」について、なぜ必要なのか、そしてどのように進めればよいのかを、製造現場目線でお伝えいたします。
調達部門やバイヤー、サプライヤーとして関係する皆様にも役立つ内容を目指しています。
ラベル発行の現状とその問題点
現場に蔓延るラベル書式のカオス
昭和から続く多くの工場では、工程ごと、部門ごとに「独自仕様のラベル書式」が当然のように共存しています。
古くから使っている用紙サイズ、変則的なバーコードの配置、別々に買い足した複数台のラベルプリンタ。
それらが混在することで、
– 生産ラインの現場にラベルレイアウトのルールが浸透しない
– システム上でもフォーマットを作る担当が固定化・属人化される
– サプライヤーやバイヤーにも記入フォーマットを細かく求めることで取引コストを増やす
– シートやインクリボンなどの消耗品管理が煩雑になる
…といった問題が生じます。
また、同じ「品名」と「製品番号」が工程によって表記方法やフォントすら異なり、現場作業者がラベルを誤認するミスも珍しくありません。
製造業のDXやIoTが進みながらも、こうした「昭和からのアナログ遺産」が足を引っ張る例は多いのではないでしょうか。
ITシステム導入だけが対策ではない
多くの現場改善活動やDXセミナーでは、新しいラベル発行システムやRFID、デジタル帳票の導入が推奨されます。
しかし実際には、これらのシステム投資を受け入れる「現場の混沌」を是正しなければ、効果が出ません。
根本的に必要なのは、
– ラベル発行業務の集約化
– 書式ポリシーの統一
– 運用における「見える化」と「標準化」
なのです。
ラベル発行集約のメリット
在庫管理やトレーサビリティの強化
ラベルの発行場所と書式を一元化できれば、バーコードやQRコードによる在庫照合、ロットトレースが格段に容易になります。
現場作業者が「この工程ではこの書式、このバーコード」と細かく覚える必要がなくなり、貼り間違いリスクや工数も削減できます。
また、ラベル情報の履歴管理もシステム化しやすくなり、後工程や、万が一のリコール時にも素早く追跡できるようになります。
用紙・機器・人員の無駄削減
ラベル発行業務が集約されることにより
– 専用ラベル用紙やリボン消耗品の発注量が減少
– 故障・保守のプリンタ管理台数を削減
– ラベルレイアウト変更時の教育コストや周知を一発で通達できる
といったメリットが表れます。
また、PCや発行端末も集約できることで、IT管理部門の工数圧縮につながり、ムダ作業や属人化したスキル問題も解消できます。
集約の進め方:現場目線の具体策
1. ラベル書式の棚卸しと整理
まずは現在使われている全種類のラベルフォームを洗い出します。
部品ラベル、品名ラベル、工程票、出荷票など業務ごとにまとめ、項目やフォント、記載必要情報、バーコード種類をリストアップしましょう。
経年で微妙に違う仕様が混在している場合は「なぜ今カタチが違うのか?」と現場や担当者にヒアリングすることも重要です。
この工程で「本来一つに纏められるはずのもの」がいくつも見つかるはずです。
2. 発行システムとプリンタの集約設計
現場や事務所に点在しているラベルプリンタの一覧を作り、どこに何台、何の用途で置いているかを可視化します。
システムを統合するには、台帳管理・棚卸機能を持ったソフト/サーバで一元発行する体制を設計し、必要なプリンタ数や場所、ネットワーク化(Wi-Fi、有線LANなど)を検討します。
この段階では「生産現場で即対応できるか」「配車や梱包の動線に沿って無理ない場所に設置できるか」など作業効率・現場動線も必ず考慮することがポイントです。
3. ポリシー制定による書式ルール化
発行されるラベルのレイアウトや表記内容についてポリシー(ガイドライン)を作りましょう。
例えば、
– 品名漢字2段表記をやめ、数字コード+短縮名で統一
– バーコード種と桁数を全社統一
– 日付や数量記載ルールを明確化
– 品目により色分けや大きさ統一
など、細かいですがルール化しておくことで将来の混乱を防げます。
IT部門任せでなく、現場リーダーや調達担当者、品質管理者・生産管理者など複数目線で検討体制をつくることがベストです。
4. サプライヤー・バイヤー連携強化の視点
バイヤー、購買担当、サプライヤーに共通したラベル形式や情報記入ルールを事前に合意・シェアしておくと、資材・部品の受け入れ時や納品時のトラブルが大きく減ります。
ラベル内容や書式が変わった場合でも、新フォーマットをオンラインで提供し、移行期間を定めて運用できる体制が重要です。
これは受入検査や品質トレース、棚卸業務の効率化にも繋がります。
デジタル×アナログ混在現場での現実的な配慮
急な完全デジタル化は現場崩壊のリスクあり
どこもかしこもタブレット化…は非現実的です。
特に高齢化が進む現場では、手書きや紙ラベルを完全排除することで却って作業の遅延や混乱を生じさせがちです。
ラベル書式・発行だけを集約化し、紙ラベルそのものは「現場ニーズに応じて一部残す」「徐々にデジタル連携する」など段階的な改革が最も定着しやすいのが私の実感です。
現場ファーストで「使いやすさ」を追う
新たな書式や統合システムを導入する際は、現場作業者や間接部門の声を細やかに拾い、運用マニュアルやFAQを用意しましょう。
要望や不満が生まれた時も素早くフィードバックし、定期的なレビューミーティングを設けて「一緒に運用を作っていく」姿勢が成果につながります。
業界全体の流れと今後の展望
最近ではグローバル調達・海外サプライヤーとの連携、SCM全体最適を目指した「ラベル自動発行」「電子ラベル」「IoTタグ」の議論も盛んです。
しかし「複数現場で異なる書式や発行タイミング」が基本整理されていなければ、システムは有名無実化します。
製造業におけるラベル発行運用の統一は、DXやスマートファクトリー化の第一歩なのです。
今後は、工程間トレーサビリティを一層高めるためにも「誰がどこで何をラベルとしたか」を共通ID管理する仕組み、バイヤー・サプライヤー間で共通の書式やAPIで自動連携する仕組みが必須になってきます。
まとめ:ラベル運用改革は“現場起点の小さなDX”
ラベル発行と書式集約の改善は、地味ながら製造業全体の効率化・品質向上の鍵を握ります。
現場視点での実践と、サプライチェーン全体の視線を共存させることで、アナログ伝統と最新テクノロジーの「現実的な融合」が可能です。
読者の皆様の現場や業務でも、ぜひ「一元化」「標準化」という小さな一歩を踏み出し、“昭和の遺産”から抜け出す未来志向のラベル運用を実現してください。
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