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OEMの品質管理を安定化させる“測定基準の統一”

目次
OEMの品質管理を安定化させる“測定基準の統一”
はじめに:品質管理の根幹は“測定基準”にあり
製造業で真っ先に課題として挙がるのが、「品質」の安定化です。
特にOEM(Original Equipment Manufacturer)の現場では、自社とサプライヤーという立場の異なる複数企業が絡み合い、品質の維持が難しくなりがちです。
その中で、「測定基準の統一」は、品質管理を安定させるための最重要ポイントといえるでしょう。
この記事では、実際の現場で起きている課題や、測定基準を統一する意義、そしてそのための実践ポイントについて、20年以上の現場経験と最新動向の双方から深掘りします。
OEMにおける品質トラブル ― 根本原因を見極めよ
なぜ測定基準がバラバラだと不良が減らないのか
OEMでは「A社の検査ではOKなのに、B社でNG」あるいは「現地の判定と本社判定で結果が違う」という事象が後を絶ちません。
この問題の多くは、「測定基準の食い違い」に起因します。
各社が独自の測定条件や判定基準を持ち込み、結果として双方の合意形成があいまいなままモノづくりが進行するからです。
具体的には…
– 使用する測定器が仕様も精度も異なる
– 測定手順や温湿度管理が統一されていない
– 判定基準(合否の境界値、判定の丸めなど)が人によって変わる
たとえば、ねじ部品の長さ公差0.05mmのわずかな違いも、デジタルノギス・ダイヤルゲージ・プロジェクターなど測定機器のタイプごとに結果が微妙にズレます。
また、測る人が異なると“心のクセ”による測り方のブレが生じ、不良数カウントも大きく変動します。
製造現場が悩む「測定のグレーゾーン」
昭和から続く“見て覚えろ”方式の職人気質が長年根付く業界では、製品の良否判定がベテランの感覚頼りになりがちです。
そのため、「ベテランAさんならOKだけど若手B君はNG」など、阿吽の呼吸で切り抜けていたことが多々あります。
海外拠点やサプライヤーが増えると、この“暗黙知”ではさすがに通用しません。
曖昧な測定基準のまま大量生産に突入すれば、必ず致命的なクレームや生産ライン停止といった重大事故につながります。
グローバル化・自動化時代の“測定基準統一”とは
国や工場が変わっても「同じ品質」を保証する難しさ
日本の高い品質管理が世界で評価される一方、「日本本社とアジア生産拠点で合格基準が違う」「仕様書は同じなのに結果がバラバラ」という現象が多発しています。
背景には、“現場リーダーの解釈の違い”“測定器の規格差異”“測定環境(温度、湿度など)の揺らぎ”などが複雑に絡んでいます。
また、デジタル化・自動化によりIoT計測やAIによる画像検査が進むと、正確な測定基準の定義づけとデータガバナンスが一層重要になります。
測定基準統一のメリット ― 一歩進んだ管理へ
– クレーム・品質トラブルの“根絶”に直結
– 測定データの信頼性アップで現場の生産性向上
– サプライヤー・バイヤー間の無駄な論争や再測定削減
– 働き手の質・経験によるバラツキ排除と技術伝承の仕組み化
品質で世界と戦う製造業にとって、測定基準統一は競争力そのものです。
現場主義で進める「測定基準統一」の実践ポイント
① 測定基準の“見える化”と徹底的な標準化
最初に取り組むべきは、全ての測定対象について「誰が見ても迷わない・ブレない」ような測定基準書を整備することです。
単に数値化するだけでなく、「測定治具の種類・測定姿勢・手順・温度・圧力条件」など詳細な手順を標準化します。
あいまいな表現――たとえば「おおむね」「だいたい」「目視確認」などは極力排除し、誰でも“同じ結果”が出せる状態まで定義を作りこみます。
② サプライヤー・バイヤー間での基準合意とトライアル
サプライヤー任せ・バイヤー任せの丸投げ体制は、必ず将来のトラブルに直結します。
調達・購買担当は、取引先サプライヤーと現地現物の立会測定を徹底しましょう。
双方の測定器・判定ロジック・測定者に“差異”がないかを工程チェックし、小さな違いなら絶対に見逃さない姿勢が肝心です。
例えば、“課題部品10個を双方で同時測定し、合否結果とデータを突き合わせる”といった生産現場レベルのトライアルが効果的です。
③ 測定器のトレーサビリティ確保と環境条件の厳密管理
自動車・電機・精密部品の現場では、「JIS規格」「ISO規格」などに準拠したトレーサビリティ管理が不可欠です。
調達元・生産元だけでなく、3次元測定機やゲージ本体の校正証明取得を徹底しましょう。
また、季節や海外工場の気温・湿度変動で部材寸法が微妙に変化することも無視できません。
管理項目ごとに必要な管理点(23℃±2℃の測定室/一定照度/防振など)を一覧化し、徹底的な現場管理と教育が重要です。
④ 自動化・デジタル化による測定精度アップとデータ化推進
紙の検査票から卒業し、IoTセンサーや画像処理AI、クラウド型品質データベースの活用でリアルタイムに測定値を一元管理する取り組みも進んでいます。
これにより、「人のクセ」に左右されない均質な判断と、測定値の履歴管理(トレーサビリティ)の自動化が実現できます。
昭和流の“ハンコでゴーサイン”から脱却し、いつでもどこでも再現性の担保されたデータ活用が、これからの標準です。
⑤ 教育とコミュニケーションの仕組み作り
現場レベルでは、「なぜこの基準にするのか」「測る意義・根拠は何か」を納得感を持って浸透させる必要があります。
新人からベテランまで、“全員が同じ目線”で測定に取り組めるよう、ビジュアル資料や動画マニュアル、VRによる模擬測定訓練などの教育ツールも効果的です。
また、現地OEMサプライヤーとの定期的な測定検討会や苦情の早期共有など、コミュニケーション体制の高度化も測定基準統一の大きな武器です。
まとめ:測定基準の統一は、バイヤーとサプライヤー双方の成長戦略
OEM取引における品質トラブルの多くは、ルールや定義の“不在”や“あいまいさ”に起因します。
品管・調達・現場リーダーは、「測定基準」の統一が最大の武器であることを認識し、旧態依然の現場意識から一歩踏み出しましょう。
測定を“仕組み”で標準化し、誰がやっても・どの国でもムラなく正確にモノが作られる。
それは単なるクレーム防止策ではなく、生産性・ブランド価値・従業員の誇りを高める企業力強化の芯でもあります。
世界と伍するものづくり現場を実現するために、今こそ“測定基準の統一”に本気で取り組むべき時です。
一人ひとりの意識改革と、現場全体での標準化――それが日本製造業の未来につながる一歩となるはずです。
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