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納期遵守が難しい案件ほど発注されやすい不条理

目次
はじめに:現場が感じる「不条理な発注」とは
製造業において、「納期遵守が難しい案件ほど、なぜか発注されやすい」――この現象に心当たりのある方は少なくないでしょう。
バイヤーとしてもサプライヤーとしても、この不思議な選択が繰り返される理由が腑に落ちないケースが多発しています。
昭和の時代から根強く残るアナログな業界体質と、デジタル化・自動化の波が押し寄せている現代の交差点で、現場が直面する「不条理」の実態とその背景、そして賢い付き合い方について詳しく解説します。
なぜ「納期が厳しい案件」ばかりが選ばれるのか
バイヤーの本音:「できるところにしか頼まない」心理
バイヤーがあえて難しい案件を一部のサプライヤーに発注する理由は、「結局ここしか間に合わせてもらえない」という信頼と依存の裏返しです。
日本の製造業の多くは、付き合いの長い信頼できる会社に難しい案件を振る傾向があります。
この選択の裏には「他で断られても、ここならなんとかしてくれる」「無理を聞いてくれた過去がある」など、情緒的な評価も強く影響しています。
サプライヤーの苦悩:「断れない」日本型取引構造
受ける側、つまりサプライヤーも「長年の取引、次も継続したい」という心理や、受注を断ることで今後の仕事が減るのでは……という不安から、難しい案件でもつい受けてしまいがちです。
「おたくしか無理なんだ!」「なんとか間に合わせてくれ!」という一言に情の深い現場は応え、時には自社の現場を無理やり動かしてでも納期遵守に奔走します。
根強い “阿吽の呼吸” と昭和の体質
これらには「一度始めた関係は断ち切れない」「取引を維持するのが最優先」など、昭和の高度経済成長期に根付いた“阿吽の呼吸”が未だに息づいています。
IT化が進んだ今でも、顧客からの電話一本で現場が動き、緊急の受注・特急納品が発生するのは、多くの現場で見られる光景です。
納期遵守が難しい案件を発注する構造的な背景
「納期=最大優先」の日本独自の価値観
品質・コスト・納期(QCD)が製造業の三大指標と言われますが、日本ではとりわけ「納期遵守」が重視されてきました。
「モノづくり大国・日本」の信用を裏打ちするものとして、バイヤーもサプライヤーも「納期に遅れない」ことに異常なまでの執着を持つ傾向があります。
「計画よりも現実優先」が生むカオス
本来であれば、着実な生産計画と確実な供給計画に基づいて発注が行われるべきですが、需要の変動や上位得意先からの急な注文が頻発すると、理想の計画通りにはいきません。
その結果、「現場のリーダー一存」「ライン長の采配」で、何とかやりくりする場面が増えます。
「融通が利く会社」=「信頼できる会社」?
日本のバイヤーは、「どんな無理でもなんとかしてくれる」「社内調整が柔軟」な会社を高く評価しやすいところがあります。
これは必ずしも合理的とは言えませんが、長年の商慣習として、“困った時の頼れるパートナー”が重用されているのが実情です。
現場目線で考える「難しい納期遵守案件」とは何か
急な追加・変更、短納期の悪循環
最初は普通の納期で指示があるものの、途中で設計変更、仕様追加、急な数量変更が発生する――現場の負担は想像以上に大きくなります。
一度短納期を許すと、「またあの会社ならやってくれる」と思われてしまい、悪循環に。
柔軟対応は「常態化」すると危険
最初に「一度だけのお付き合い」として受けた無茶な依頼が、何度も冗長に繰り返されると、現場の作業効率は確実に低下します。
時間外労働の常態化や、計画生産が困難になるなど、負のスパイラルに入りがちです。
デジタル化が進んでも、変わらぬ発注パターンのなぜ
生産管理システムとベテラン現場力の“ねじれ現象”
多くのメーカーで生産管理システム(ERP、SCMなど)が導入されています。
しかし、「リアルタイム情報の共有・連携」「現場の実情に即した帳票・指示」など、システムと現場力の乖離は依然として大きいのが現状。
IT化が進んでも、最終的には「ベテラン担当者の勘と経験」や「電話一本の現場調整」に頼る場面がいまだに多いのです。
自動化・省力化投資が「納期難案件」を呼び込む皮肉
「自動で生産できるラインがあるから、突発案件も対応できますよね?」と、逆に無理な案件が増える現象。
ある程度自動化が進むと、「何とかなるでしょ?」という過大な期待が寄せられがちです。
この“便利さの裏返し”で、難しい納期の受注が増えてしまうのも現場ではありがちなジレンマです。
納期が難しい案件を上手に受ける・断るコツ
1:できないことは明確に断る勇気
「この納期では間に合いません」「品質を守るには、あと○日必要です」と、できないことは早めにはっきり伝える勇気が大切です。
それでも取引が切れることはまずありません。むしろ「正直な会社」として評価されることも多いです。
2:「イエス・バット」話法で交渉する
「納期重視なのは承知しておりますが、生産工程上、ここまでは短縮できます。しかし……」と、事情を詳しく説明し、双方納得できる“妥協点”を探るのも有効です。
3:緊急時用の「遊び」ライン、協力会社の外注先確保
日頃から緊急受注対応用の生産体制(いわゆる遊びライン)、協力会社や外注先など、いざという時に連携できる体制づくりは重要です。
加えて、納期短縮のコストやリスクについても、率直に説明し、追加費用の交渉を行いましょう。
バイヤー、サプライヤー双方に求められる“新しい関係”とは?
「共に利益を作る」協働体制への転換
「とにかく納期最優先でお願い」「おたくしかできないんだよ」という情緒的な依頼から、「どこまで対応でき、どこからコストがかかるか」を可視化して協力する関係へ変わる必要があります。
お互いが無理を強い合うのではなく、リスクとメリットを共有し、利益を共につくる協働関係構築が、今後のサプライチェーン強靭化にも不可欠です。
透明な情報共有、データ連携の重要性
受発注情報、進捗状況、リードタイム短縮の課題など、現場の「見える化」(ビジュアルマネジメント)を推進し、お互いが納期の内外要因を理解できる仕組み作りは急務です。
小さな業務改善からでも一歩踏み出すことが、結果として納期遵守率向上と信頼関係強化につながります。
最後に:不条理をしなやかに乗り越えるために
「納期遵守が難しい案件ほど発注されやすい」という一見不条理な現象の裏側には、日本のモノづくりならではの歴史や慣習、そして現場の人情や知恵が詰まっています。
しかし、過度な“情”だけでは、これからの時代、現場・企業ともに疲弊し、持続的発展は困難になります。
バイヤー・サプライヤー問わず、時には「ノー」と伝える勇気、情報をオープンにし、課題を共に解決する姿勢が業界全体の健全な成長に不可欠です。
新しい世代のバイヤー、サプライヤーには、これまでの付き合い方の“良い部分”と“不合理な伝統”を見極め、しなやかで合理的な関係構築の担い手になってほしいと思います。
従来の“昭和的情熱”に、これからの“合理と共創”を融合させることで、製造業の現場は一層強く進化できるはずです。
この視点が、皆さんの日々の業務に役立ち、より良い工場運営、そして日本のモノづくり全体の発展につながることを願っています。
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