投稿日:2025年11月11日

革財布印刷で露光後の硬化ムラを防ぐためのUV照度計の校正方法

はじめに:なぜUV照度計の校正が重要なのか

革財布の印刷工程では、美しい仕上がりと耐久性を両立させるために、UV(紫外線)硬化インクを用いるケースが一般的になりました。

UVインクを使用するこのプロセスで品質を左右するのが、露光後の「硬化ムラ」の発生です。

硬化ムラは表面仕上げの均一性だけでなく、財布そのものの耐久性にも悪影響を及ぼします。

この問題を根本から解決するには「UV照度計」による正確な照射管理と、その前提となる照度計の適切な校正が不可欠です。

しかし、実際の製造現場では校正の必要性は理解されていても、具体的な方法やポイント、昭和世代から続くアナログ流が障壁となりがちです。

この記事では現場目線から、UV照度計の校正方法を掘り下げ、革財布印刷における硬化ムラ防止のための実践的ノウハウを徹底解説します。

UV硬化印刷と「硬化ムラ」の本質

UVインク硬化のメカニズム

UV硬化印刷とは、紫外線(UV)を照射することで急速にインクが硬化し、高い生産性や発色性、美しい仕上がりを実現する技術です。

特に革財布のような高付加価値商品では、ムラのない鮮やかな印刷面が求められます。

UVインクには感光性樹脂が含まれ、紫外線を受けることでその場で硬化します。

このとき、「十分なエネルギー量のUV」を「適正時間」照射できていない場合、インク表層の硬化が不十分となり、ベタつきや色ムラ、剥離などの品質不良が発生します。

硬化ムラの原因と現場での見落としポイント

硬化ムラの直接原因は、「UV露光量のバラツキ」です。

光源の経年劣化、照度計の未校正、革素材の個体差による反射率の違い、また作業員の感覚頼みといったアナログな運用は、安定品質を阻む根本要因となります。

特に量産体制や多品種小ロット化が進む中、手作業による「目視チェック」だけでは、再現性の高い製品品質は維持できません。

だからこそ、正確な露光管理を実現するUV照度計と、その信頼性を担保する「校正」が重要となります。

UV照度計を用いた露光管理の新潮流

照度計の「正しい校正」で現場力をアップデート

旧来型の現場では、「長年の経験と勘」が判断基準になりがちです。

しかしUVインク硬化の工程は数値管理しなければ、短期的には何とかなっても長期的な品質維持は困難です。

校正されたUV照度計による「見える化」で、作業者ごとの技量差や環境変動、設備劣化を吸収し、デジタル品質管理へ進化させましょう。

革財布印刷メーカーのように高い品質とトレーサビリティが求められる分野こそ、
「UV照度計の定期校正」という“地味ながら最重要な基本”の徹底が、品質ブランドの礎となるのです。

現場導入時につまずきやすいポイントと対策

導入初期は、次のような問題でつまずくことが多いです。

– 校正の必要性を現場全体で理解できていない
– 校正頻度が「なんとなく年1回」などになっている
– 校正作業自体も一部の担当者の「自己流」で進めてしまっている
– 校正証明書の記録管理がおろそか
– 校正方法がマニュアル化されていない、または現場教育が不足

こうした状況は品質トラブルの温床です。

この章の後半では、誰でもすぐ実践できる具体的校正方法と、運用定着のコツをお伝えします。

実践!UV照度計の現場校正マニュアル

校正前の準備:なぜ、「基準光源」がカギなのか

校正の目的は「今使っている照度計がどれだけ正しい数字を示すか」を確認し、必要に応じて補正を行うことです。

そのためには標準的(トレーサブル)な「基準光源」が不可欠となります。

基準光源はJISなどの工業規格に則った値を有するものを選びましょう。

理想は外部の校正機関(メーカーや第三者試験所)のトレーサブル校正サービスを活用し、「基準のUVランプによる校正証明書」を発行してもらうことです。

自社で携わる場合は、必ず「国家標準にトレースされた基準ランプ」を用いるのがポイントです。

UV照度計校正の一般的な流れ

1. 校正環境の整備
 現場環境(温度・湿度)を安定させて、直射日光や余計な光が入らないように配慮します。記録に残すことで、校正条件の再現性も確保できます。

2. 基準光源の設置
 基準となるUVランプや校正光源を設置し、距離や角度、光源のウォームアップ時間を厳守します。これは「照光方向」「照光距離」「照光面積」にバラツキが出ないようにするためです。

3. 照度計の測定値確認
 校正する照度計で基準光源を測定し、表示値と基準値を比較します。数%の許容誤差(例えば±3%以内など)を基準にします。

4. 調整または補正
 許容誤差を超えた場合は、メーカーへ調整を依頼するか、もし補正出来ない場合は買い替えも視野に入れましょう。

5. 校正記録の管理
 校正結果、校正日、担当者、校正証明書(外部の場合)を必ず保存します。トレーサビリティ確保のためにも、現場内で共有できる体制が重要です。

校正頻度と現場運用のポイント

UV照度計は「1年に1回」は最低限の目安ですが、以下の場合にはより短いスパンで校正しましょう。

– 落下や衝撃を与えた場合
– 照度計の表示が不安定・異常値を示す場合
– 大きな品質トラブルが発生した直後

現場や作業者まかせにせず、「月に1度のセルフチェック」と「1年に1度のメーカー校正」など、2重3重のチェック体制を作るのが望ましいです。

昭和型現場だと「昔からそんなことやっていなかったから今さら…」となりがちですが、
逆にいえば今こそ「品質の見える化」「標準化」の絶好のチャンスと捉えましょう。

昭和からの脱却─なぜ現場に「真の標準化」が根付かないのか

「経験・勘・根性」から「科学的管理」への転換

多くの製造現場に根付いているのは、「現場主義」「阿吽の呼吸」「長年の暗黙知」です。

ところが革財布のような高付加価値商品ほど、ミスやムラがブランド価値直撃となり、時には取引停止や損害賠償へ直結します。

UV照度計の校正や露光管理は、最たる“数値管理の柱”です。

単なる「作業の一工程」や「計器のチェック作業」で終わらせず、「品質戦略の一部」として全社的に位置付けましょう。

標準化・マニュアル化のポイント

– 校正手順書(写真付きマニュアル)を作成する
– 校正記録を電子データ化し誰でもアクセスできる仕組みを作る
– 校正担当者の育成や社内教育もルーティンに組み込む
– 品質トラブルの一因が「校正不足」の事例であれば、必ず現場で共有しPDCAサイクルを回す

こうした一連の流れは、サプライヤー(協力工場や外注先)とも共有することで、「選ばれるパートナー」への道を拓きます。

購買・バイヤーから見た校正の真価

購買担当やバイヤーは「安定品質とコスト」「納期対応力」の両輪を重視します。

校正管理が徹底されたサプライヤーは、「工程管理力が高い」「隠れコストが少ない」「トレーサビリティが明確」と判断されやすく、取引継続・拡大へのプラス評価となります。

逆に、「感覚頼み」「一部の熟練者しかわからない管理」はリスク要因となり、価格交渉に不利になるだけでなく、リスクマネジメントの観点から見送りの根拠になることもあります。

バイヤーを目指す方や、サプライヤーでバイヤーに選ばれる立場を目指す方は、校正や工程標準化こそ「見えない強み」と捉え、
「なぜうちの会社は他社よりも安心か」を数値的に語れる仕組み作りが重要です。

まとめ:UV照度計校正が「現場ブランド力」を育てる

革財布印刷現場で起こる「露光後の硬化ムラ」は、正確なUV照度管理と、その根幹をなす「校正」がキーポイントです。

現場主体のアナログ気質を活かしつつ、「経験値」「勘」から「数値管理」「標準作業」への変革が、現代製造業の品質競争力を高めます。

今こそ、地道な校正作業をサボらず、工程全体の“見える化”を推進しましょう。

それが現場で働く仲間の誇りとなり、バイヤーからも信頼される強い現場・会社へと成長する一歩となります。

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