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お菓子トレーの変形を防ぐ真空成形圧と冷却風量の制御

目次
はじめに:お菓子トレー製造の現場で直面する課題
お菓子トレーは、製菓メーカーや食品メーカーにとって必要不可欠な存在です。
その形状の安定性や衛生性は、消費者の満足度やブランドイメージにも直結しています。
とくに、真空成形という成型技術を用いる場合、そのプロセス管理の巧拙が「変形」という品質問題の発生を大きく左右します。
本記事では、長年にわたる製造現場の知見をもとに、真空成形圧と冷却風量の制御という観点から、お菓子トレーの変形を防ぐための実践的な方法と業界動向を解説します。
お菓子トレーの真空成形とは
お菓子トレーの製造においてもっとも多く用いられているのが「真空成形」です。
これは、加熱して柔らかくしたプラスチックシートを型に密着させ、真空で形状を転写する方法です。
真空成形のプロセス概要
1. 材料となるプラスチックシートをセット
2. ヒーターで所定温度まで加熱
3. 型とシートを密着させて真空を引き、シートを型に転写
4. 冷却し、成形物を型から取り外す
5. トリミングや検査など、後工程へ
この工程のなかで「変形」が発生する要因の多くは、「真空成形圧」と「冷却風量」に深く関係しています。
変形の原因を現場目線で分析する
現場で発生しがちな変形には、以下のようなものがあります。
– トレーの底面が波打つ
– 側壁が倒れたり膨らんだりする
– リブや突起形状が潰れる
これらの変形が起きる原因を分析すると、「成形直後の熱残り」と「冷却ムラ」、「成形圧(真空度)の過不足」が主な要因であることが見えてきます。
真空成形圧の過不足が生む問題
真空圧が低すぎると、シートが型に密着せず、細部の形状転写が不十分になります。
逆に真空圧が高すぎると、柔らかくなったシートが一気に引き込まれ、過度な変形や伸びムラが発生しやすくなります。
冷却風量による温度管理と収縮制御
お菓子トレー用の薄肉成形品は、冷却が不十分だと型から離れたあとに熱収縮が起こりやすく、トレー全体や部分的な変形の主因となります。
また、冷却風の当たり方にムラがあると、一部だけ収縮が進み、底面の反りや壁面の倒れ、といったトラブルが多発します。
現場で実践できる制御のポイント
成形圧の適正コントロール
製品や材料スペックに応じて、理想の成形圧を追求しましょう。
– 使用する型やシートの厚みによって、必要な真空度(-kPa)をあらかじめテストで最適化する
– 急激な圧力変化を避け、段階的な真空引きを行う
– 型ごと、ロットごとに最良データを残し、変動幅を最小化する
昭和的な「勘と経験」も時には重要ですが、最近は真空圧センサーのログ記録や自動制御化が主流に移ってきています。
冷却風量の均一化がカギ
お菓子トレーの冷却では、成形品全体に均一かつ適度な風量を当てることが理想です。
– 型内部に風路を工夫し、各部位への冷却風量を均等に設定
– 風量バランスを崩さないようにダンパー調整やノズル位置を最適化
– 生産停止や型交換後の初期冷却も十分に行い、型温度ムラを防ぐ
(立ち上がりは特に変形が起きやすい)
安定生産のためには、冷却のデータ取りや改善サイクルも欠かせません。
冷却不良を感じた場合は、ノズルの詰まりや型側面の冷却穴の汚れも重点的にチェックしましょう。
成形製品の検査工程とフィードバック
現場では変形を直接目視検査で抽出しがちですが、それだけではなく、寸法測定や自動外観検査装置の導入が求められる時代です。
変形頻度や発生位置をデータで把握し、「いつ」「どこで」「なぜ」を追跡できるシステムを整えることで、よりきめ細かな工程管理と変革につながります。
デジタル化と昭和型現場の共存:新旧交錯のリアル
特に日本の製造現場は、「匠的な技能とアナログ的こだわり」を色濃く残す一方、DX(デジタルトランスフォーメーション)も進行中です。
昭和的現場力の利点と課題
– 経験に裏打ちされた“感覚的な仕上げ”で異常にいち早く気付ける
– 検証やOJT(現場教育)でノウハウが伝承されやすい
一方で属人的で、数値データによる再現や自動化との相性が悪いという面も残ります。
デジタル制御の波とその導入戦略
– 近年は、成形圧や冷却風量をPLC制御で細かくパターン化し、ボタン一つで最適条件を呼び出せるシステムが普及
– 工場IoT化により、リアルタイムで工程データと品質データを連携しやすくなった
まだ「設備費が高い」「現場の理解が追いつかない」という抵抗もありますが、設備投資による歩留まり向上、異常トレースの迅速化は、長期的な競争力向上に必ず役立ちます。
サプライヤーや協力会社との情報共有
真空成形品のトレーは、食品メーカーとの受託生産も多く、バイヤー視点からの品質要求が年々高くなっています。
サプライヤーは「変形ゼロ」を目指して工程清査データや異常発生履歴などをタイムリーに報告できる体制を整えることで、信頼関係を強化できます。
バイヤーを志す方は、真空成形工程の品質ロジックや現場管理の具体的なツボを理解することで、より的確な価格交渉や品質改善指導を行えるでしょう。
まとめ:新たな地平線を切り拓く現場力とテクノロジーの融合
お菓子トレーの変形問題へのアプローチは、単なる「装置いじり」や「作業指示」だけでは解決できません。
現場に根差した“手触り”を大事にしつつ、真空成形圧と冷却風量のデジタル管理、検査と改善のPDCA、そして工程横断データの活用こそが、安定品質とコスト競争力を同時に実現します。
アナログからデジタルへのシフトが進む今だからこそ、昭和的現場力と最新テクノロジーの融合、その“両輪”を活かした改革が求められています。
この記事が、お菓子トレーの真空成形に携わる方、またバイヤーやサプライヤーの方々が、新たな製造現場のスタンダードを考える一助となれば幸いです。
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