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振動制御に活かす振動基礎Excel解析シミュレーション低減手法実習

目次
はじめに:なぜ製造業に「振動制御」が欠かせないのか
現代製造業の現場において、「振動」はしばしば厄介者として扱われます。
音、装置の故障、生産品質の低下など、その影響は多岐に渡ります。
特に自動化ラインや高精度加工現場では、わずかな振動もトラブルの引き金になりがちです。
一方で、現場に根強く残る昭和時代からのアナログな勘や経験に頼る振動対応が、DX化やスマートファクトリー化の妨げとなっている現実もあります。
この記事では、20年以上に渡り製造現場で実践してきた管理職・バイヤー双方の視点から、「振動の基礎」や「Excel解析」「現実的な低減手法」について体系的かつ現場目線で解説します。
振動の基本知識:現場でよくある「振動」とは何か
振動現象の本質と実際
振動は専門外の方には難解に思われがちですが、基本は「物体が行ったり来たりを繰り返す運動」です。
代表例はモーターの回転やエンジンの動作時、機械のフレームや設置した床の微妙なゆれなど、工場のあらゆる場所で観測されます。
特に現場で意識すべきは
・周期性(一定時間ごとに繰り返す動きか)
・減衰(揺れがだんだん小さくなるか)
・共振(外部の刺激で揺れが異常に大きくなる現象)
です。
現場で目にする振動トラブルの具体例
・NC旋盤導入直後に、ビビリ振動で寸法精度が悪化
・搬送ラインの高速化で、架台が共振し製品が落下
・プレス機のバランサー摩耗後、床鳴りや異常音増加
・ファンやポンプの定期点検時、ベアリング部から異音
これらは、どこの製造会社・サプライヤー現場でも一度は経験することです。
根本的な解決には、勘や経験だけでなくデータベースの解析や構造的判断が求められます。
なぜExcel解析が「現場力」を上げるのか
現場の「アナログ力」だけでは超えられない壁
製造業でDX化がなかなか進まない理由――それは「アナログな匠の力」が強すぎるためです。
図面や紙記録をもとに、熟練作業者が「音の違い」「手触り」「経験則」で異変を察知し、不良低減や歩留まり改善を行ってきました。
一方で、サプライヤー間の競争激化やESG対応、BCPの一環での多拠点化など、品質や納期対応で客観的な数値評価が強く求められるようになっています。
経験則だけでは説明不可能なケースも増えました。
Excelなら現場の誰もが「振動解析」できる
高額な振動計測器とデータ処理システムは理想ですが、多くの現場では投資予算やIT人材不足の壁があります。
こうした状況で最も現実的なツールが「Excel」です。
・市販の簡易振動計やスマホアプリで記録したデータをそのまま取り込み
・振幅、周波数、減衰などの基礎的な特徴量を数式で自動算出
・グラフ化で変化・異常を“見える化”
・対策後の効果検証と定量的な改善提案
を“現場の担当者自ら”迅速に実施することができます。
Excelを用いた振動解析の基本実例
実際のデータ取得からはじめる
1. 計測機器でデータを記録
市販の三軸加速度センサや振動計測アプリで、時間ごとの振動値(例えば1秒ごと、10秒ごと)をCSVファイル等に出力します。
2. Excelへのデータ入力
取得したデータを、A列(時間)、B列(振動値)として貼り付けます。
基本統計量の算出(平均、最大、最小、標準偏差)
これで現場の「普段の状態」からどれだけ外れているかの指標が得られます。
=AVERAGE(B2:B1001) で平均値
=MAX(B2:B1001) で最大値
=MIN(B2:B1001) で最小値
=STDEV.P(B2:B1001) で標準偏差
グラフ化で可視化
折れ線グラフや散布図を用いて、動作中にどのタイミングで異常値が出ているか”一目で分かる”ようにします。
異常なピークや繰り返しパターンがあれば、どの作業・時間帯・設備状態が要因かを工場全体で共有できます。
周波数解析(FFTの活用)
周波数での特徴(例えば50Hzのモーター固有振動、60Hzの電源ノイズなど)は、エクセルのアドイン(分析ツールパック)や関数を使っても「簡易的FFT解析」が可能です。
これにより
・どの周波数成分が強いか(固有振動の特定)
・どの外乱が効いているか(電源、回転数、衝撃、設備ごとのクセ)
を素早く特定でき、根本対策の方向性が明確になります。
現場発の「振動低減」実践ノウハウ
データから「原因」にアプローチする思考法
昭和的な現場では「応急的」な対策(ネジ増し締め、パッチ貼付け、追加溶接など)が多く、根本の「原因」が追究されないままトラブルが継続することが良くあります。
データをもとに
1. どの場所(工程・設備・部品)が共振しているか
2. どのタイミング(始動時、加速、減速、停止、定常運転)が危ないか
3. どれくらいの度合いで問題が発生するか
を把握し、そのプロセスを論理的に説明・共有することがまず重要です。
現実的にすぐできる振動対策のバリエーション
・ボルトや部品の締結部見直し(緩み対策/リコイル等の追加)
・架台や設置スペースの補強(サンドイッチ構造、リブ追加、ゴム緩衝材使用)
・ローターやファンのバランス調整(鉛ウェイト逆位置貼付)
・小型モーターやポンプは足元の”制振ゴム”パッド設置
・現場でできる最速査定「加速度計アプリ+Excelグラフ」活用
また、投資対効果が非常に高いのは「簡易的なデータ収集の継続」です。
一度だけの測定ではなく、現場の担当者が「日々同じExcelに値を追記・更新」し続けることが、問題発生時のトレンド解析・原因特定を格段にラクにしてくれます。
バイヤー・サプライヤー双方に求められる「データに基づく対話」
現場の振動問題は、単なる一社の努力だけでは根本解決しません。
重要なのは「メーカー⇔サプライヤー間での論理的なデータ共有・対話」です。
・Excelの数値データや解析グラフを根拠にした報告・交渉
・「現場で収集したデータ」に紐づく本質的な改善提案
・自社で対応可能な“現実的対策”と、上流側へのフィードバック
こうした積み重ねで、お互いに「攻めもできるし守りもできる」関係が構築され、本当の意味での競争力強化やコストダウンに繋がります。
これからの振動制御と現場力:未来を切り拓くために
現場での振動制御の発展は、まさに製造業のデジタルトランスフォーメーションの第一歩です。
Excel解析を組み込むことで“誰もができて・すぐに見える・説明できる”現場力が育ちます。
技術者や現場担当者はもちろん、若手バイヤーやサプライヤー管理者もデータの意味、解析手法、現場でできる低減策といった「振動の現場言語」を身に付けることが重要です。
昭和の“匠の技”と最新の“データ解析”を有機的に融合させながら、次世代の現場づくりに大きな一歩を踏み出しましょう。
まとめ
・振動は工場のいたる所で起き、現場でのトラブルの大きな要因。
・Excelは身近かつ強力な振動解析ツールとなり得る。
・現場でデータを収集・解析・対策するサイクルが、昭和的現場からの脱却とDX化推進の要。
・数値データやグラフを根拠としたバイヤー・サプライヤー間の対話が業界全体の競争力を底上げする。
振動制御のために、今すぐExcelを使った実践的解析に取り組み、現場力を飛躍的に高めてみてはいかがでしょうか。
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