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振動試験進め方シミュレーション複合環境試験実施留意点

目次
はじめに〜製造業現場が求める振動試験の意義
製造業の分野では、製品が過酷な現場環境に耐えうることが求められています。
とりわけ自動車、家電、FA機器、航空宇宙といった業界では、「振動」や「衝撃」への強度確認は設計品質保証の根幹です。
これらの確認のために実施される振動試験やシミュレーション、複合環境試験は、設計開発、調達購買部門、さらにサプライヤー・バイヤー双方にとって避けては通れない業務となっています。
本記事では、現場の視点を織り交ぜつつ、振動試験の進め方、シミュレーションとの連携、そして複合環境試験の実施における留意点について、最新の業界事情も踏まえながら徹底的に解説します。
昭和のアナログ文化が強く残る工場現場にも根付く、実践的なノウハウ満載でお届けします。
振動試験とは何か〜目的・対象・基本の流れ
そもそも振動試験とは、製品や部品が運用中に受けるさまざまな振動(例えば車であれば道路凹凸による、製造装置であれば動作中の揺れなど)に耐えられるかを評価するための試験です。
何のために行うのか
・出荷前の品質保証(保証値設定)
・市場クレーム防止、未然防止
・設計、開発段階での弱点発掘
・法規適合(自動車部品では世界標準が指定されます)
・調達時のサプライヤー管理、一貫した品質レベル維持
現場では「形だけの試験」「コスト削減で手抜き」の声も聞こえてきますが、本質は市場での商品価値保証にあります。
何をどう試験するのか
製品・部品単体で行う「単体試験」と、実装状態赴きにくい「実装状態試験」等があります。
・3軸方向(X/Y/Z)で想定される振動波形(正弦波・ランダム波・衝撃波)を適用する
・温度、湿度、塩水噴霧などと組み合わせる複合環境での耐久性チェック
・自動車部品ならエンジンルーム、サスペンション周辺など用途部位ごとの指定条件
現場的には、試験条件の妥当性、コストと納期のバランス調整などが悩ましいポイントになります。
振動試験の大まかな進め方
1. 目的・要求(規格)整理
2. 対象品・試験姿勢・取り付け方法の決定
3. 試験機・治具設計/製作
4. シミュレーション事前評価(CAE/実データ反映)
5. 本試験実施(温湿度等と組み合わせる場合も)
6. 結果評価・フィードバック
7. 報告書・証跡管理
バイヤーなら工程管理(WBS化)、サプライヤーなら治具準備など、社内外の役割明確化が勝負の分かれ目です。
シミュレーションの位置付け〜現場と解析の融合へ
近年の技術革新で、CAE(Computer Aided Engineering)による振動シミュレーションの精度が格段に向上しました。
しかし、「試験不要か」と問われればノーです。
現場の実感と実験データの裏付けが、ものづくりには不可欠だからです。
シミュレーションのメリット・活用法
・試作前倒し設計、初期段階での弱点摘出
・コスト削減(試作回数低減、治具流用促進)
・複雑な波形や実装状態も計算で早期評価
・設計変更時(材料変更や寸法違いなど)にも迅速対応
一方、「現場で起きる本物の固有振動」「長期疲労」「組立誤差」などアナログ的現象は、完全に再現しきれません。
現場との連携〜昭和的試行錯誤とデータドリブンの融合
現場経験者は、長年の“カン・コツ”で「ここが弱そう」「ビビりやすい」部分に気付きます。
シミュレーションと照合し、新たな設計条件を導入したり、わざとオーバーテストし市場リスクを避ける「羊頭狗肉試験」も置き換え段階にあります。
「シミュレーション結果→現場実測→再フィードバック」というPDCAサイクルを高速回転することが成功のカギです。
複合環境試験の進め方〜“現場のリアル”を再現する
最近では、単なる振動だけでなく、「温度」「湿度」「塩水」「電気的ノイズ」など、複数ストレスを同時に与える複合環境試験が標準化しつつあります。
これは、実際の現場(例えば真夏の屋外や寒冷地の車載)で起こる“想定外の障害”に備えるためです。
複合環境試験の基本的な手順
1. 要求仕様の明確化(国際規格や社内標準)
2. 試験パターン決定(例えば「温-振」「湿-振」「熱サイクル-振動」など)
3. 試験装置の準備(チャンバー/振動台等の組合せ)
4. 信頼性確保のための事前点検(装置校正、温度分布・振幅校正)
5. 試験体セットアップ
6. 本試験の進行とモニタリング(異常検出システム連動)
7. 結果分析と評価(分解/観察/機能試験)
8. 改善&再試験
ハードウェアの準備や人員確保のための調整力が、実務ではとても重要です。
留意点:現場目線で陥りがちな落とし穴
・模擬ストレスが現実離れしていないか(過大・過小負荷になっていないか)
・サンプルの取り扱い(出し入れ時の衝撃が評価を狂わすことも)
・装置トラブルや人為ミス(温度ムラ、台の制御バグ等)
・納期が厳しい時の“条件緩和”、現場とバイヤーの板挟み
・写真や波形データの記録漏れ
・報告書フォーマットのばらつき(ISO発行の証憑に直結)
これらを防ぐには、「やり方(標準化)」と「見えないノウハウ継承」の両輪が不可欠です。
調達・購買部門&バイヤー視点の振動試験
調達・購買部門の立場で、「サプライヤーが本当に有効な振動試験をしているか」「見積もりの妥当性は?」などの疑問が湧いてきます。
サプライヤーとのやり取りでは、型通りの要求では十分な品質が担保できません。
バイヤーとしての交渉ポイント
・要求仕様と規格(JIS/ISO/自社標準)を適切に伝達
・サプライヤーの設備能力・技術者スキルの確認(ときに現地訪問で現物確認も重要)
・“御用聞き型”の試験報告書ではなく、現象の「根拠ある考察」を提出させる
・疑問点やヒヤリポイントは現場責任者・技術者と直接ディスカッション
・納期短縮時の試験省略や条件緩和リクエストには、断固たる姿勢が重要
「うちの業界はアナログで…」と逃げる業者より、現場課題をシミュレーション・現物試験で自発的に改善するサプライヤーは、長期的なパートナーとして信頼できます。
サプライヤーこそ知るべき「バイヤーの頭の中」
サプライヤーの皆さんには、「どうせバイヤーは値段しか見ていない」と感じてしまいがちです。
ですが、真のバイヤーは“品質”と“供給安定”、“証跡力”も見極めています。
あなたの提出する振動試験報告書一つで、商談の成否、数百万・数千万円の売上が左右されることも珍しくありません。
顧客目線で振動試験をどう提案するか
・「現場再現力」「複合ストレス対応」など、他社より一歩進んだ試験の売り込み
・「短納期化」「データ管理の信頼性」「試験設備の多様化」アピール
・課題があった場合の改善提案力(やり直し・代替案提示)
・故障メカニズムの解析力・根拠記述
バイヤーは、値引きだけでなく「技術や証跡の深み」で選ぶ傾向が強まっています。
昭和的アナログ現場から抜け出すヒント
今も「手書き帳票」「現場での口伝」「非効率な段取り」が残る工場が山ほどあります。
しかしその一方、「量産品の稼働が止まる」「クレームが後を絶たない」といった“危ない橋”も、アナログの限界ゆえに増加しています。
現場にもイノベーションが必要です。
アナログ業界でもできる改善策とは
・各種標準操作手順(SOP)、帳票テンプレートの徹底
・データロガー・IoT装置による自動記録化、現場からの“リアルな異常値”も見逃さない
・ベテランの「暗黙知」をデータベースにまとめ、次世代に継ぐ活動
・振動試験・複合環境試験の映像保存
・AI/IoTによる試験進捗・異常検出の自動化
これにより、「報告書が現場に合っていない」「試験再現性が低い」などの問題も減らせます。
小さな一歩から始めることが、未知の市場ニーズへの対応力にもつながります。
まとめ〜製造業の未来へ、現場力と標準化の融合
振動試験シミュレーション・複合環境試験は、今や設計・調達・サプライチェーンの各現場で無くてはならない技術となっています。
現場の知見やアナログ経験を大切にしつつ、標準化・デジタル管理・新しい技術導入の幅を広げることが、製造業の未来を切り開く原動力となります。
「昭和のやり方」から一歩踏み出し、現場と技術、バイヤーとサプライヤー、それぞれの信頼に基づく“強いチームものづくり”を目指していきましょう。
この連携と進化により、日本の製造業は世界の舞台でより力強い競争力を持ち続けることができます。
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