- お役立ち記事
- 塗装流れ跡の発生を抑えるための粘度・吐出圧力管理手法
塗装流れ跡の発生を抑えるための粘度・吐出圧力管理手法

目次
はじめに:塗装現場における“流れ跡”問題のリアル
製造業の現場、とくに塗装プロセスにおいて「流れ跡」の発生は大きな悩みの種です。
流れ跡とは、塗装面に筋や濃淡のムラが生じてしまい、製品の美観や品質を大きく損なう現象です。
塗装現場の第一線では「この流れ跡、何とかならないか」「高級塗料を使っても直らない」「吐出圧だけ上げても解決しない」などの声が絶えません。
特に昭和から続くアナログ志向の業界では、経験と勘に頼るやり方も根強く残っています。
本記事では、塗装流れ跡問題の本質を見つめ、粘度と吐出圧力という重要パラメータを徹底管理する実践的手法をご紹介します。
調達・購買、生産管理だけでなく、サプライヤーやこれからバイヤーを目指す方まで、現場と未来をつなぐ内容を深く掘り下げていきます。
塗装の流れ跡、そのメカニズムとは?
現場で何が起きているのか
流れ跡は主に「塗料が塗装面に均一に広がらず、一部が重力や表面張力の影響で筋状に溜まる・流れる」ことで発生します。
この現象にはいくつもの要因が絡み合っていますが、大別すると以下のようになります。
- 塗料の粘度が高すぎる/低すぎる
- 吐出圧力が不足・過剰
- ガンの吹き付け速度・距離の不均一
- 下地処理や基材表面の影響
- 温湿度など環境条件
他にも多様な要素がありますが、今回は「粘度」「吐出圧力」に焦点を絞って究明します。
アナログ現場の“思い込み”が流れ跡を呼ぶ
昭和から令和に至るまで、製造業の現場では「いつもの配合、いつもの方法」で仕事を続ける文化が根強くならんでいます。
現場のベテランほど「これで大丈夫」と思い込みが強く、その判断が流れ跡を助長することも珍しくありません。
まずは、この“慣れ”による盲点を認識することが重要です。
粘度管理:塗装品質の根幹を握るパラメータ
なぜ粘度管理が要なのか
塗料の粘度とは、液体の流動のしやすさ—すなわち「トロみ」「サラサラ感」を数値化したものです。
粘度が高すぎれば、塗料は広がらず厚くなり、流れてしまい流れ跡が発生します。
逆に低すぎると垂れやすく、これも流れ跡やムラの原因となります。
現場でできる粘度管理のコツ
1. 塗料メーカーレシピの遵守
ほとんどの塗料にはメーカーレシピが添付されています。
推奨希釈率や指定シンナー、温度帯まで記されているので、まずはこれを厳密に守ることが第一歩です。
2. 温度補正を意識する
現場温度が10℃違えば、粘度も大きく変化します。
温度換算チャートや、温度測定付きの粘度計(カップ)を活用し、一定の条件を維持しましょう。
3. 粘度カップの標準化
作業者が複数いる工場では、粘度カップ(例えばフォードカップ4など)を標準化し、毎日の塗料準備で使います。
だれが測っても同じ結果が出るよう、環境と手順もセットで統一します。
4. 粘度測定とトレース管理
日々の粘度結果をロギング・管理することで、「昨日と今日、なぜ仕上がり感が違うのか」といった因果関係の可視化も進みます。
デジタル管理できなくても、記録を残して分析習慣をつけることが大切です。
吐出圧力管理:塗装設備の“呼吸”を整える
吐出圧力がなぜ重要なのか
塗装ガン(エアスプレー、エアレスなど)で塗料を安定的に吐出させるには、適切な圧力コントロールが必須です。
圧力が高すぎると塗料の飛散が増し、輸送中に乾燥しかねません。
一方、低すぎると粒子が粗くなって流れ跡の大きなリスクを孕みます。
現場でできる吐出圧力の管理方法
1. メーカー推奨値を必ず確認
塗装システムごとに適正な圧力範囲があります。
装置のマニュアルや塗料のTDS(技術資料)を事前に確認し、推奨値にセットしましょう。
2. 初期値から徐々に微調整
実際の部品や製品の塗装テストで、仕上がりを見ながら0.05MPa単位など細かく圧力を調整します。
現場で「ちょっとずつ変えてみる」ことで、最適点を導き出します。
3. ガンのノズルや吐出量もセットで評価
圧力だけでなく、ノズル径・塗料吐出量が一体で仕上がりに影響します。
塗装ガンの状態(摩耗や詰まり具合)も都度チェックし、トータルで管理しましょう。
4. 吐出圧力計の定期校正
古い圧力計ではズレが発生し、現場の勘違い原因となります。
一定期間ごとに校正・交換することで再発防止につながります。
アナログ現場でもできる、自動化・デジタル化の小さな一歩
現場の“デジタル化”には抵抗感がつきものですが、今や粘度や圧力のデジタル記録は意外に簡単です。
既存設備に外付けできる記録計や、スマートフォン連動のメモリも活用できます。
1日1フォーマット、エクセルや紙で「見える化」するだけでも、管理品質・トレーサビリティは大きく向上します。
まずはアナログ管理の「標準化」→「記録のデジタル化」へと進めると良いでしょう。
サプライヤー・バイヤーが知るべき現場の“本音”と課題
なぜ現場改善は難しいのか?
調達側・バイヤーが「流れ跡をゼロにしてほしい」と要望しても、現場の作業者には「どう直せばいいのか、具体的な基準が分からない」「指示と現実がかみ合わない」といったストレスがあります。
また、サプライヤー側も「バイヤーの品質要求が高すぎる」「現場環境の違いを理解してもらえない」と悩みを抱えています。
現場とバイヤーの“温度差”を埋めるには
まずは「粘度」「吐出圧力」など数値で共通言語化すること、記録と現場写真をセットでやりとりすることが推奨されます。
バイヤーも現場見学や改善活動への同行を積極的に行うことで、サプライヤーとの信頼関係が強化されます。
お互いに「状況と要件」をリアルタイムに共有する工夫が、ものづくり現場の品質向上への近道です。
まとめ:現場主導で“塗装流れ跡ゼロ”を目指す
塗装流れ跡の抑制は、単なる「勘と経験」から「理論と管理」への転換が鍵になります。
粘度と吐出圧力の管理を徹底することで、これまで曖昧だった不良原因が見える化され、現場改善のサイクルが回るようになります。
昭和のやり方を大切にしつつも、そこに数値管理やデジタル記録といった新技術を融合させて“現場力”を最大化しましょう。
調達・購買担当者、これからキャリアを積みたい方、現場で悩む全ての方に、この記事が実践のヒントとなれば幸いです。
今こそ「現場の知」と「数値管理」を組み合わせ、塗装不良ゼロという新たな地平線をともに目指しましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)