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ロケーション管理が形骸化して倉庫が迷宮化する理由

ロケーション管理が形骸化して倉庫が迷宮化する理由
はじめに ― ロケーション管理の重要性とは
製造業の現場において、ロケーション管理は、材料や部品、製品を「どこに、どのように」管理するかを定め、スムーズな入出庫・在庫把握・生産計画といったあらゆる工程の基盤となっています。
しかし、20年以上現場を見てきた実感として、現実にはロケーション管理が「形だけ」の存在と化し、倉庫内が迷路のように混沌とする場面に多く遭遇してきました。
なぜロケーション管理は形骸化し、混乱の原因となってしまうのでしょうか。
この記事では、長年の現場経験から「なぜ倉庫が迷宮化するのか」という本質に迫ります。
また、調達購買・バイヤー・サプライヤーの目線も踏まえ、実践的な改善策も提案していきます。
昭和から抜け出せぬアナログ業界の現状
まずは現場の実情に目を向けてみましょう。
――紙の在庫帳、記憶に頼るベテラン、社員・パート・派遣の属人的オペレーション。
いまだに製造業の現場には、IT化が進まないまま時代の流れに取り残された倉庫が数多く存在します。
自動倉庫やWMS(倉庫管理システム)が普及しつつあるとはいえ、導入コストや現場の反発から、現場で足踏みを続けている企業も少なくありません。
それが「ロケーション管理=形骸化」に拍車をかけている最大の背景です。
ロケーション管理 本来の目的とは
本来、ロケーション管理とは、資材・部品・製品など、多種多様なアイテムを「いかに早く正確に」探し出せるか、ムダな動きを削減できるかが目的です。
それを支えるためのシリアル番号、ロット管理、マスロケーション(大まかな区画管理)からビンロケーション(棚番・ピンポイント管理)まで体系化することで、現場は最適な運用を目指すべきです。
しかし現場でこの目的が形だけになり、ルール設計と実際の運用がかい離することで、「ロケーション名はあるが誰も守っていない」といった事態が生じます。
なぜ形骸化するのか ― 主要な要因
1. 「運用ルール」の属人化
たとえばベテランが自分の経験だけで「こっちに置いた方が早い」など現場独自の運用を生み出します。
本来であれば全員で「ロケーション表どおりに配置」すべきですが、現場にありがちな「俺流」が横行すると、ロケーション台帳と現物配置がどんどんズレてきます。
この属人的運用が、入出庫のたびに積み重なり、やがて混迷を極めていきます。
2. イレギュラー作業の多発
「今日は急いでいるから仮置き」
「あとで戻そう」……戻さない。
製造業の場合、量産品・多品種少量生産・客先仕様変更など、イレギュラーな注文の嵐に巻き込まれます。
都度運用を変更しても記録が伴わず、「とりあえず突っ込む」ことで、在庫台帳上のロケーションとは全く違うところに品物が実在する状態が頻発します。
3. 棚割りの設計ミス・運用の形骸化
ロケーションの棚割りやラベル設計の初期設定が、現実的な運用とマッチしていない場合、誰もルールを守らなくなります。
特に新設倉庫やリニューアルの際、「Excelで棚番だけ決めて実際の運用は現場任せ」となると、設計担当と作業者の意識に齟齬が生じます。
結果、「空いてる場所に置けばOK」「このロケーション番号の意味が分からない」という声が上がります。
4. システムと現場運用の乖離
WMSなどのデジタル管理を導入しても、現場が使いこなせず、「システム上は正しいが現物が違う」状態が日常化します。
操作性の悪いシステム、現場教育不足、現場を見ずに設計されたロケーション、すべてが現場実態とのギャップを生み、逆にユーザー離れを加速させます。
迷宮化した倉庫がもたらす実害
ロケーション管理が迷宮化すると、現場にはさまざまな弊害が生まれます。
・ピッキングミス・出荷遅延の多発
物が見つからなければ出荷に間に合いません。
バイヤーやクライアントへの信頼失墜、納入期限遅延によるペナルティ、コスト上昇にも直結します。
・在庫の不明在庫・欠品・過剰在庫
「あるはずのものがない」「同じものがいくつも発注されている」「本当に今これが必要か?」という混乱による在庫不足・過剰。
購買・調達部門の判断ミスは生産計画の遅延まで発展します。
・5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の形骸化
5S活動のベースとなる「置き場が明確であること」が崩れることで、全体の秩序が維持できなくなります。
衛生や安全管理など品質に直結する問題すら引き起こします。
新進バイヤー/サプライヤー視点で見た「ロケーション迷宮」問題
バイヤーが調達先を視察した際、倉庫の混迷ぶりは一発で分かります。
適切なロケーション管理がされていないと、下記リスクを感じることでしょう。
・必要な部品や材料が適時納品できない
・トレーサビリティ、ロット追跡が困難
・余剰在庫やロス発生による価格競争力低下
逆にサプライヤー側も、「バイヤーがなぜ在庫管理状況を重視するのか」=信頼性やレスポンス向上の根拠だから、という点を意識すべきです。
現場に根付かせる“実践的ロケーション管理”とは
形骸化からの脱却には、理論だけでなく現場で実際に「使われる」「意味がある」運用設計が必要です。
20年以上の現場経験から、実践的なポイントをご紹介します。
1. 現場主導のルール設計
現場の声を必ず巻き込み、“現場で続けられる”ルールを一緒に作ることが必須です。
指示命令・トップダウンのみではなく、作業者の意見を反映し、運用後も軌道修正を繰り返しましょう。
2. イレギュラー時のルール明文化
仮置きや急な変更など「特例」の運用をはじめから想定して、その記録・伝達・修正方法まで明文化しましょう。
電子日報や仮置き用の専用ロケーションを設けることも有効です。
3. 標準化・見える化と“教育”の徹底
棚番・ロケーション名・現物配置のラベルは日本語・英数字ともに明確に、誰でも判断できる運用を。
定期的な教育・棚卸し活動を繰り返すことで、全員が同意識を維持できるようにしましょう。
4. DX(デジタル化)を現場起点で設計
システム導入は「誰の、何のため」に使うかを明確にし、現場が“便利・簡単・早い”と自分ごと化できるUI設計・ハード選定をしましょう。
例えばハンディターミナルやQRコード、RFIDなど、現場の負担にならない仕組みが肝要です。
バイヤー・サプライヤー視点で考える付加価値提案
購買担当、サプライヤーともに、単なる価格交渉にとどまらない付加価値を提供できるかが今後生き残る鍵です。
サプライヤー側は「納入後の現場運用」までイメージし、ロケーション運用がしやすい包装単位・ラベル表記などへの配慮も競争力につながります。
またバイヤーは、仕入先の現場改善提案・倉庫運用状況を評価軸にし、Win-Win関係を築くことが求められます。
まとめ ― 新たな地平線へ(ラテラルシンキング)
ロケーション管理の形骸化は一見「仕方ない現場のあるある」のように見えますが、実は現場の生産性・サプライチェーン全体の信頼性・競争力につながる極めてクリティカルなテーマです。
現場⇔管理部門⇔バイヤー⇔サプライヤー、すべての視点を持つことが、ひとつ上のレベルの仕組みづくりの出発点になります。
属人的運用を脱却し、「現場で動かせる=現場で考える」ロケーション設計をみんなで作り直しましょう。
そしてアナログな現場でも、小さな見える化と繰り返しのPDCAが、“迷宮”を“地図のある倉庫”に生まれ変わらせる第一歩となります。
現場の進化が、会社全体、そして日本の製造業の底力を押し上げていくのです。
地道に、愚直に、現場から新しい景色を切り開いていきましょう。